日本聖公会中部教区・名古屋学生青年センター
居住の権利の確立をめざして
- 国連ハビタット会議と日本の現状
初出:1996/11発行 『こえ』 No.32
ささしま・野宿労働者と共に
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「居住の権利をめざして」名古屋集会実行委員会


 今年6月、イスタンブールで第2回国連人間居住会議(ハビタット2)が開かれました。会議の最大の成果は、すべての人が「居住権」(適切な住生活を営む基本的人権)をもつということ、が国際的に認められたことでした。アメリカや日本の政府は、当初は「居住権」という語に反対していたのですが、会議中に他の多くの諸国やNGOとの長い議論の末ついに妥協し、結局参加国が合意して新しい概念が成立したのです。
 「すべての人」というのは必ずしも「国民すべて」ということと同じではありません。たとえ国籍が違うとしても地域に住む人は誰でも、という意味です。また性や年齢や資産の違いによって、また「現住所」のあるなしによって差別されない、ということです。
 「国際的に認められた」というのは、日本を含めここで賛成した各国政府はこの権利を誠実に守る義務を負った、ということです。
 そして「適切な住まい」とは、雨露をしのぐことができ、追い立てられる心配がなく、清潔な水が供給され、ゴミや汚水は収集され、必要なプライバシーと安全が保たれ、一定の教育・医療を享受しうる場所にあり、少なくとも通勤範囲内に職場があり、家族生活のための最小限のスペースを有している、といった<場>を意味します。それは単にモノとしての「住戸」だけではありません。
 「適切な住生活を営む基本的人権」というのは、これまで国際人権規約(日本では79年に批准)等で認められていた「衣食住への権利」を裏書するものです。その点では突如として新しく登場した権利ではないのですが、まさに既存の国際人権規約その他幾多の国際文書を基盤にしつつ、「居住権」が特記されたことが重要なのです。
 たとえば路上から追われ嫌がらせを受ける野宿労働者、公園からの撤去通告を受けた神戸の被災者、不動産屋の店頭で理由無く入居拒否されるアジア人労働者など、また不当な差別のゆえに劣悪な住環境におかれてきた地域の人々がいます。また海外にも、日本の援助プロジェクトによって強制立ち退きを受ける居住者や、日本向けの森林伐採によって住み慣れた土地を奪われる先住民がいます。かれらは今や「私には居住権がある」とはっきり言いうるのです。主張すべき人権に明確な表現を与えることが、新たな運動の出発点になりうるでしょう。「居住権」を守る第一歩は、いかなる人も自分の意志に反して不当に住む場・生きる場を奪われない、ということです。
 とはいえ「居住権」は未だに膨らみつつある概念で、世界各地の現場で少しずつ確かめ固めながら定まっていくプロセスにあるといえるでしょう。私たちにいま求められているのは、個々の現場で、「笹島にとっての居住権」や「神戸にとっての居住権」や「サラワクにとっての居住権」の意味を考え、つなぎ合わせていくことであると思います。さしあたっては、「居住権」とは「すべての人が」隣人との確かなつながりの中で自分たちの文化を守りながら生活すること、といえるかもしれません。世界のそれぞれの地域での個々の生活維持システムを守り育てることは、国際連帯の基礎でもあるはずです。
 私たち「居住の権利の確立をめざして」名古屋集会実行委員会は、この国連ハビタット会議で確認された「居住権」の意義を、私たちの地域の課題に照らしながら共有し、すべての人の「居住権」を守るような地域生活のあり方を、これからも考えて行きたいと思います。

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