日本聖公会中部教区・名古屋学生青年センター
急増する野宿労働者に対する政府・自治体の動きを考える
初出:2000/5 発行 『こえ』 No.39
ささしま・野宿労働者と共に
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藤井 克彦/笹島診療所

 失業者が増える中で、野宿を強いられる労働者はその後も急増し、政府の集計発表でも、99年10月では 20,451人と3月より26%も増えている。実際の人数はさらに多い。この深刻な状況に対して、政府は99年5月に「ホームレスの問題に対する当面の対応策について」をまとめた。政府レベルとしては、初めての施策である。

政府の「当面の対応策の問題点」
 この「対応策」では、(1)就労意欲はあるが仕事がなく失業状態にある者、(2)医療、福祉等の援助が必要な者、(3)社会生活を拒否する者の三つに分類し、(1)については就労による自立を支援、(2)については福祉等の援護による自立を支援、(3)社会的自立を支援しつつ、施設管理者による退去指導を、対策の方向としてあげている。
1. まず問題なのは、行政が一方的に3つに類型していること、特に(3)について「社会的束縛を嫌う者、諸般の事情から身元を明らかにしない者」を挙げているが、身元を明らかにして生活保護を申請してもそれを拒否しているのは行政であり、このように言うのは詭弁である。また、例えば12畳の部屋に6人もが集団生活をする更正施設では、長期にはおられないと感じるのは当然であり、アパート生活なら「社会生活」が可能である人が多い。既存の施策に従わないで野宿を続ける者は「社会生活を拒否するもの」であり、従って退去を迫るという構図になっており、極めて問題である。なすべきことは、野宿労働者に対して行政が人間としての尊厳を認め、生存権保護という立場から野宿をしなくてもよい状況をつくることに努力し、選択肢を多くすることである。野宿労働者自身がその施策を信頼して自主的に福祉事務所などに行って、複数の選択肢から選べるようにする必要がある。今後どうするのかはあくまでも本人の自由意志によるべきで、個々の状況を踏まえ、時には時間をかけて解決すべき問題なのである。警察官の同行は強制的退去を事実上意味するし、複数職員が何度か「指導」することも、退去を強要されることになる。「退去指導」はすべきでない。
2. 就労による自立を支援というが、一番重要な実効ある就労対策がない。すなわち一般労働市場に任せており、自立支援施設に入所して求職活動をしても、各種資格がなく、年齢も若くない野宿状況にあった人が、雇用される可能性は極めて低い。行政が就労の場をつくることが必要である。
3. 「福祉等の援護」についても、働けない人は生活保護など福祉援護、働ける人は自立支援施設へとうやり方は、失業して生活に困窮している人の生活保護を否定している。失業によって野宿を強いられている人が一番多いのであり、希望する人には生活保護で生活を保障して、求職活動をバックアップすべきである。
4. 最終的には自分の住宅が必要であるが、その住宅対策がない。

名古屋市当局の一時保護事業について
 名古屋市当局は2000年10月より、健康状態などにより一時保護を必要とする「住所不定者」を対象に、中村区内の民間宿泊施設を借り上げて利用定員60人の一時保護施設を設けることにした。
 一時保護事業に踏み切った要因はいくつか考えられるが、野宿労働者・支援者が生活保障を求めてたたかってきたこと、とりわけ1993年以降の故林勝義さんのたたかいや、失業の場合でも職安の求職受付表を持って保護申請をすることによって緊急宿泊(ドヤの数室を借り上げ)を認めさせ、満員であっても諦めずに要求したたたかいがある。このことにより、現行の緊急宿泊では対応できないことと、一時保護事業の必要性を、職員・行政に痛切に感じさせたであろう。
 民生局が一時宿泊所設置に踏み切ったことは評価するが、60人枠では一杯になるし、退院・退所者がアパートで暮らしていけるようにしないと結局また野宿となる。求職活動をする人は一週間では仕事が見つからないので、短かすぎる。政府の「当面の対応策」では、失業者に対して半年間を目途とした自立支援事業をあげているが、名古屋市当局が、早急に自立支援センターも開設することを望む。

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