| 1980年当時、名古屋学生青年センターでは、すでに周辺地域に住む子どもたちを連れて、長野県の池の平にあるキャンプ場で3泊4日の夏季キャンプを行なっていた。野外料理をしたり、オリエンテーリングをしたり、子どもたちは野外での活動を楽しんでいた。しかし、幾つかの課題も生じていた。
そのひとつは、泊まり掛けで、しかも遠距離を移動することになると、どうしても費用が膨らんでしまうことである。この池の平でのキャンプ自体は、宿舎も中部教区所有のキャンプ場であり、運営スタッフも教会の婦人や青年たちによるボランティアであったので、経費を最低限に押さえることはできたものの、それでも毎回のキャンプは赤字続きで、教会からの援助を必要とした。また3泊4日の全期間をボランタリーに参加できるスタッフを募ることも困難であった。
もうひとつの課題は、泊まり掛けのキャンプには、小学校の低学年の子どもたちが参加しにくいという点であった。低学年の子どもを持つ親にとっては、幼い子どもたちを、何泊も泊まり掛けでキャンプに出すことに不安があるという声も聞こえてきた。
そこで、かつて東京YMCAにてボランティア・リーダーとして経験したことのある日帰りキャンプ(デイ・キャンプ)を、学生青年センターでも連続して行なうことができないかと考えたのである。幸いにも、学生青年センターには、当時から立派なキッチンや多目的ホールもあり、また野外料理ができる庭もあり、更に近隣には名古屋大学やカトリック神言神学院のキャンパスなど遊ぶ場所もあったので、子どもたちが4?5日連続して通ってきても、毎日、異なるプログラムを提供することができるのではないかと考えた。
ともあれ、1981年の夏、「ロング・デイキャンプ」と名付けられたこのキャンプの第1回目が実施されたこの時は、全5日間の日程で、子どもたちは、毎朝、学生青年センターに通ってきては、毎日異なるプログラムを楽しみ、夕方に帰宅するという内容であった。そのプログラムの中に、1日は貸切バスで近隣の川原に行って、少し遠出のハイキングを盛り込んだ。また、このハイキングと野外料理の日を除いて、毎日、キッチンスタッフによる昼食を提供したことは、子どもを送り出す親たちにとってはなかなか好評であった。
プログラムの特徴のひとつとして挙げられるものは、いわゆる「トロプス(trops)」を導入した点ではないだろうか。当時の愛知県は、「管理教育」の先進県(?)としてすでに全国的に名を馳せていた。教育現場では、過剰な競争原理を導入し、生徒を縛り、管理することによって、生徒の自由や主体性を束縛していた。こうした「管理教育」に異義を唱える人々が中心となって、「敗者のないスポーツ(sport)」を提唱していた。トロプスとはsportを逆さに読んだ造語である。
学生青年センターのスタッフは、このトロプスの講習会で学んだ様々なゲームや遊びを、プログラムの随所に導入した。トロプスは、年令や能力の違いを乗り越えて、一緒に楽しめる内容のゲームであるが、こうした遊びを通して、一人一人の個性や自主性の大切さを学ぶことができればと考えたのである。
近年では、環境保護に対する関心が高まってきている中で、「ネイチャーゲーム(nature game)」と呼ばれるゲームなども取り入れ、子どもたちと自然環境の大切さを共有しようとしている。
こうした試みが、子どもたちにどのように伝わっているかわからない。キャンプは楽しいものでなければならない。しかし、私たちは、その楽しさの中に、様々なメッセージを込めながら、私たちの人生や社会にとって大切なことを、子どもたちと共有したいと願いながら、プログラムを作ってきたと言える。
忘れてはならないのは、絶えず安全に気を配りながら、子どもたちを楽しませ、プログラムを豊かなものにしてくれた多くのリーダーたち、栄養を考えながら食事を提供してくれたキッチン・スタッフの方々のことである。何年も続けて参加する子ともたちの中には、リーダーと会えることを楽しみにしている子たちも多い。こうした多くの人々の協力と様々な願いによって、このキャンプが17年間も無事に続いてきたのだと感じている。今年も、このキャンプを通して、様々な出会いが生まれることを願っている。
人が行き交う場をめざして・目次
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