第507号(2001年10月)
アメリカで起きた同時多発テロはわたしたちを震撼させました。九月十一日、カナダのトロントでわたしはこのニュースを聞き、空路が閉鎖されたため、十三日、陸路バスで国境を越え、十五時間かけてニューヨーク市に入りました。世界貿易センター跡からもうもうと立ちのぼる煙、ほこっりっぽい街、走り回る消防車など、異常事態であることを身をもって体験しました。ホテルの前の消防署には、大きなボードに十五名の消防士の写真が掲げられ、その前には大勢の市民が夜通しキャンドルを灯して祈り続けていました。また行方不明者になっている消防士の家族が仲間の消防士たちに抱きかかえられて泣いている姿にわたしも涙を禁じ得ませんでした。
しかし、空港の再開を待ちながら、街を歩き、またホテルでテレビを見ていて、報復を求める声がアメリカ中で高まっていく状況に何か寒いものを感じました。「アメリカ側につかない国はテロ支援国、すなわちアメリカの敵と見なす」とか、「アメリカは悪を罰して、正義をうち建てる」などという大統領の演説に星条旗をうち振り、「神よ、アメリカを祝したまえ」と涙ながらに歌っている人々を見ながら、今ことら教会がしっかりしなくてはと思いました。アメリカ聖公会のグリズワルド総裁主教、またローマ教皇ヨハネ・パウロ二世は直ちに声明を発し、「報復(武力行使)では解決にならない。暴力やテロの連鎖を断ち切ることが必要だ」と世界に訴えました。
冷静さと理性がアメリカ初め世界の指導者たちに与えられるように祈ることが、今求められています。
主教 ナタナエル 植松 誠