第520号(2002年11月)
10月下旬、日本と韓国の主教たちがソウルに集まって、合同主教会が開かれました。韓国でのめざましいキリスト教会の成長について講義を受け、ソウル教区が行っている社会への働き(特に社会的・経済的弱者のための各種の活動)の現場研修も大変有意義でした。
今回のソウルでの主教会で最も心に残ったのは、強制従軍慰安婦とされた方々が住んでおられる「ナヌムの家」とそこに併設されている「日本軍『慰安婦』歴史館」を訪ねたこと、またソウル市内の「西大門刑務所歴史館」を視察したことです。ナヌムの家の歴史館には、「慰安所」の部屋が復元されていました。「どうぞご自由に中に入ってみてください」と案内の女性が言いましたが、その四畳半程の部屋の前でわたしは立ちすくんでいました。「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)の証言も聞きました。その手足に受けた傷跡も見ました。自分の辛い過去を話すのは、今の人々に歴史の事実を正しく知って欲しいからという彼女は、自分に残された限りある命をこのために燃やし尽くしているようでした。
「刑務所歴史館」は、日本が朝鮮半島を支配していた時に、抗日運動の活動家、また一般民衆を拘束したところです。拷問による取り調べが毎日行われ、その様子もリアルに再現されています。ここで多くの愛国キリスト者が拷問や栄養失調、また死刑によって殉教していきました。わたしはここでもことばを失ってしまいました。目の前の事実をどのように自分の理性で理解したらいいのかわからなくなってしまったのです。今も自問を繰り返しています。
主教 ナタナエル 植松 誠