大阪からHさんが突然訪ねてきました。私が以前牧師をしていた教会の信徒で、私たちが札幌に引っ越してからはこれで五回目の来訪です。しかし、今回はHさんは一人。前回まではいつも奥さんのMさんが一緒でした。Mさんは、昨年九月、長い闘病生活の末に天に召されたのです。最期までキリストを証し続け、教会のことに心を遣い、家族や友人を愛した六〇年の生涯でした。自分たちも背負い切れないほどの重荷を負いながらも、周りの人々を励まし、労り、慰め、自分の家に招き入れたHさん夫婦に、どれほど多くの人が救われたことでしょう。
二人でわが家に来た時には、夜が更けるまで教会のこと、家族のことなどを語り合ったものでした。すぐ涙があふれる妻を彼はいつも優しく見守っていました。時にはMさんを河内弁でどやしつけるHさんでしたが、二人が本当に愛し合っていることを誰が見てもすぐわかりました。
今回のHさんの来訪は、妻と共に歩いたところを辿る旅でした。わが家を訪ね、札幌や函館の街を歩き、二人で入った店を訪ねてその時に買ったものを再び買い、二人に縁のある人々を訪問する旅。その間中、HさんはMさんに語りかけているのでしょう。決して涙を見せるような人ではなかった彼が、わが家でMさんのことを話しながら涙を流していました。
Hさんを札幌駅まで送りました。彼の後ろ姿は一回り小さく見えましたが、一瞬、彼の横にはMさんが見えるような気がしました。