ローマカトリック教会と聖公会が長い研究協議を重ねた結果、この度、聖母マリアに関する共同声明がまとめられ、本になって出されました。その日本語版出版を記念して、日本聖公会と日本ローマカトリック教会合同の礼拝が二月一日、東京の聖マリア大聖堂(カトリック)で行われました。多くの参列者があり、素晴らしい礼拝でしたが、礼拝の最後、日本聖公会首座主教とカトリックの大司教が並んで退堂していく時、誰かが私の腕に触れて会釈しました。誰なのか見覚えのない人でしたが、ごった返す人ごみの中、その人は控え室の私の前に再度現れました。「覚えておられますか」と問う彼の顔を見て、その優しい目で思い出しました。大学時代の先輩。少人数の研究室で共に学び実習した彼は秀才でした。卒業後も大学に残り、将来は音響工学の第一人者になると誰もが信じていた彼がカトリックであることは知っていましたが、お互いに信仰の話しな
どはしたことはありませんでした。私が卒業し、留学してから、彼が大学を辞めて、東京の老人ホームでお年寄りの世話をしていることを風の便りに聞きました。何が彼をそのように決断させたのかは分かりません。
今回三〇数年ぶりに再会したとき彼の名刺には施設長とありました。「首座主教のあなたを植松君なんて呼んではいけないのかな」と言う彼と無言で見つめ合いながら、「ぼくたちの人生、いろいろあったけれど、幸せだった」という思いを共有していました。