3月31日  復活日(A年)



主教 バルナバ 武藤六治

主にある兄弟姉妹へ

 イエス様の地上での生涯の最後の場面に登場して重要な役割を荷ったのは、あの男の弟子たちではなく、ガリラヤから従ってきた婦人たちでした。男の弟子たちはイエス様が逮捕された時、恐ろしくなって姿を隠してしまったのです。ギリシャ正教会ではこの婦人たちのことを「携香女(けいこうじょ)」と呼びます。十字架の死から三日目に、香料を携えてイエス様の墓を訪ねられたところからこの名がつけられました(マルコ16:1)。正教会では復活祭後の二つ目の日曜日を「携香女の主日」として祝うそうです。
 墓を訪れる前々日、携香女たち―マグダラのマリア、ヤコブの母マリア、サロメその他の婦人たち―は十字架の下にたたずみ「見るべき面影はなく輝かしい風格も好ましい容姿もなく、人々に軽蔑され見捨てられて」死んでいくイエス様を見つめました(イザヤ53:2)。そしてイエス様のご遺体に、習慣どおり香油を塗り布で包んで、新しい墓に納めました。
 翌日の安息日を掟に従って休んだ携香女たちは、週の初めの日の明け方早くにイエス様の墓に駆けつけました。お体に塗る香料と香油を携えて。墓に伺う彼女たちは悲しみとあきらめに心を閉ざしています。人々の心を惹きつけた燃えるようなみ言葉も、人々を救った力強いみ業も消え去りました。懐かしいイエス様にせめて香油を―と急いだのです。
 墓はからでした。前々日、携香女たちは自ら確かに葬ったはずです。だがイエス様のお体がないのです。四つの福音書はそれぞれにこの時の様子を告げています。携香女たちの驚きと喜び。最初の復活の証人となった光栄。どうぞよく読んで下さい。
 墓の入口の大きな石は取りのけられ、中にはイエス様のお体はありません。途方にくれる携香女たち(ヨハネによる福音書ではマグダラのマリアのみ)に天使が語り掛けます。「イエス様は復活した」、「弟子たち―あの逃げた弟子たち―にこの事実を伝えなさい」と。
 「なぜ生きておられる方を死者の中に捜すのか」(ルカ24:5)との天使の言葉に携香女たちはイエス様の死が死でないことを知りました。父なる神が人類を限りなく愛し、闇に覆われた心に光を、望みの失われたところに希望を、悲しむ心に喜びを与えるためにイエス様を復活させ給うたことを悟りました。そして最初の復活の証人として不安に怯えているあの臆病な弟子たちのところに走るのです。「主はよみがえられた」と叫びながら。
 ルカによる福音書によると、携香女たちの話を聞いた弟子たちは「たわ言のように思われたので彼女たちを信じなかった」のですが(24:11)、そのあとで携香女の知らせが真実であることが分かり、彼らも復活の証人となるのです。
 携香女を通して"主に感謝"。



 

 

過去のメッセージ