9月1日  聖霊降臨後第15主日(A年)

 

司祭 アンデレ 佐藤 徹

 イエスはペトロの「あなたはメシア、生ける神の子です」とのキリスト教の信仰の根幹ともなる心からの信仰告白をもって一つの区切りとして、弟子たちに教えるべき次の段階に入られた。弟子たちはイエスがメシアであるという事実を把握したが、この驚くべき事実が何を意味するかを、まだ理解していなかった。そこで『イエスは、御自分が必ずエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者達から多くの苦しみを受けて殺され、三日目に復活することになっている、と弟子たちに打ち明け始められた。』のである。これに対する弟子たちの反応は、ペトロの反応にはっきり現れている。イエス御自身をメシア、また神の子と主張されるイエスの本意を、弟子たちが全く理解していなかったことを示している。彼らは、メシアとは、そのときの世の現実として、そのときの支配者であるローマ人をパレスチナから追放して、イスラエルを強国にする征服者、武勇の王と考えられた。それゆえに、彼らはメシアとは何かを学ばなければならなかった。
 イエスが前記のように言われた時のペトロの態度に対して、『サタン、引き下がれ。あなたは私の邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている。』と叱られたのである。この時、イエスの心のなかに、荒れ野の中でのサタンの誘惑の時の思いがあったに違いない。神の思いと人の思いに別れる誘惑が絶えずイエスは受けられておられたのであろう。そして、ペトロに対して、『サタン、引き下がれ』とのお言葉になったのである。オリゲネスによれば、イエスはこの言葉は、「ペトロ、あなたの地位はわたしの後ろであって、前ではない。あなたは私の進む道に従って来るべきであっで、自分が行こうとする道にわたしを導くのではない」という意味に解釈される。サタンにも同じことを言われているが、原語によれば、サタンには、『サタン、引き下がれ。』と明らかに追放の言葉であり、ペトロに言われたのは、『サタン、わたしの後ろに引き下がれ』『もう一度わたしに従う者となれ』である。サタンはイエスのみもとから追放されたが、ペトロはイエスの従者に戻るべきであることを今一度教えられたのである。人がイエスに従おうと心掛けるならば、たとえ贖いてもなお、この世と次の世において、神の栄光を拝する希望が残されている。『わたしについてきたい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい』ということも、イエスがペトロに示された愛のゆえにわたしたちはできるようにされているのである。



 

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