11月17日  聖霊降臨後第26主日(A年)



司祭 ヨハネ 井田 泉

「タラントン」を預けられる主イエス【マタイによる福音書25:14‐29】

 「ある人が旅行に出かけるとき、僕たちを呼んで、自分の財産を預けた。」
 今、この「ある人」「主人」とは主イエスのことだと考えてみましょう。イエスが行ってしまわれて僕(弟子)たちだけが残される。最後の晩餐を思わせるような場面です。「僕たち」と新共同訳で訳されていますが、原文を見ると「自分の」という言葉がついています。これと同じ表現がヨハネ福音書13:2に出て来ます。「イエスは、この世から父のもとへ移る御自分の時が来たことを悟り、世にいる弟子たち(自分の者たち!)を愛して、この上なく愛し抜かれた」。財産を預けられる僕たちとは、イエスが極みまで愛しておられる「ご自分の者たち」なのです。
 イエスは弟子たちを呼ばれます。イエスが呼ばれるのは、特別な目的と願いがあるからです。その目的と願いとは、イエスの志を受け継ぎ、イエスの働きを継承することです。自分がそのためにいのちをささげてきた「神の国の宣教」の使命を引き継いでほしい。これがイエスの切なる願いでした。その目的のために、主(人)であるイエスは、僕たちそれぞれの力に応じて「タラントン」を預けられます。
 1タラントンとは6,000ドラクメ(デナリオン)。1デナリオンは1日分の賃金ですから仮に1万円とすると、6,000万円です。莫大な金額です。弟子たちは自分が自覚しているよりもはるかに多くの賜物を主から授かっているのです。このタラントンは宣教の働きのために主から託されたものです。活用してこそ意味があります。隠しておいてはなりません。
 ある人は5タラントン預けられてさらに5タラントンもうけました。タラントンは使って減るものではなく、使うほどに増えることを経験しました。2タラントンを預かった人も同じです。やがて主が帰って来られます。タラントンを活用した者に主は言われます。直訳しますと、「よくやった! 良い僕、忠実な者よ! あなたの主の喜びの中に入れ!」主は喜んでおられます。神の国のために働いた僕も、主とともに喜ぶのです。

 主イエスよ、あなたはわたしたちにもタラントンを預けてくださいました。どうかそれを神の国の宣教のために用いさせてください。そしてあなたとともに喜ばせてください。アーメン

 

 

 


 

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