|
毎年、この時期に、ひらひらと舞ってくるものを見ると必ず思い出す小品がこれです。ポール・ギャリコというアメリカ人の小説家の作品で(彼は「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者として有名です)1952年の作品です。日本語には1975年に翻訳され、かなり版を重ねたようですから、お読みになった方も多くあるかも知れません。 作品名の通り、「雪のひとひら」が誕生し、それが天空から降ってくるところから物語りは始まります。彼女は山の辺に降り積もり、小さな女の子がその上をそりで引いて通り過ぎるのです。それから、子どもたちの作る雪だるまの鼻の先になったり、そのうち重い雪の下に敷かれます。早春の雪解けと共に再び流れに身を任せ、小川へと注ぎます。そこからは流れに沿って進みます。もうお分かりのように「雪のひとひら」という一人の女性の物語として描かれているのです。 粉挽小屋の水車を廻し、進んでいくうちに「雨のしずく」という彼に出会います。そして、共に流れに沿って進んでゆくうち、二人は一体となり、湖にいたります。ゆったりとした湖で二人は幸せな日々を送ります。湖を出ると広々とした河を流れていきます。いつの間にか4人の子どもが二人の周りにいます。 幸せな日々が続く中で、突然家族は狭いトンネルへと導かれます。都会の水道の取水口に入ったようです。そして長細いトンネルへと導かれます。そしていつの間にか、消火栓の口へと導かれます。燃え盛る火事の現場です。そこで水の強敵、火の中に勢いよく飛び込んで行き、激しい戦いとなります。やっとの思いで、火をやっつけ鎮火させ幼子を救うのですが、夫の「雨のしずく」は重傷を負い、それが元でなくなってしまいます。4人の子どもたちは暫らくすると、あっという間にそれぞれが選んだ流れに身を投じて、ひとひらから離れていきます。 「雪のひとひら」は独りになってしまいます。そして、河口から大海原へと身を投じます。そして、いよいよ自分が召されるときがきたことを悟るのです。静かにひとひらは、天へと帰ってゆくのでした。「ごくろうさまだった。小さな雪のひとひら、さあ、ようこそお帰り」という声を聞きながら。 今の女性の生き方から見ると、物足らない面もありますが、一人の人間の生き方として見るならば、自分ができる精一杯を、与えられた人生の中で生き抜いて、その人生がどうであれ、何がしかのお役に立つところがあって、そして、最後に大いなる声によって「ごくろうさん」と認めていただいて、引き取っていただける。そんな人生であれば、本当にすばらしいものだと思います。 |
