「聖火の力を信じて」  

                             司祭 テモテ宮嶋 眞

 


 今、全世界で注目を集める、オリンピックの聖火リレー。

 かって、エルサレムからフィレンツエまで、一人で聖火を運んだ男がいる。といってもお話の世界でのこと。ラーゲルレーブ著「キリスト伝説集」に登場するラニエロという男です。彼は、力はあるが粗野な男で、故郷ではあまり尊敬されていなかった。そこで十字軍に参加して手柄を立て、自分を馬鹿にする連中を見返そうと、エルサレムを目指した。彼は、自慢の力を発揮し、異教徒達を見事退け、エルサレム奪還の立役者となった。そして、その手柄を讃えられ、エルサレム聖墳墓教会の祭壇の聖火を授かった。しかし、戦友達からあ「その褒美は、故郷に持って帰れまい」といわれたラニエロは「絶対に聖火をフィレンツエに持って帰る」と誓ってしまった。彼は早速、馬にたくさんの予備のロウソクを積み、出発した。簡単そうに見えた旅は、スグに大変困難な事だと分かってきた。ちょっとした風でも火はあっというまに消えそうになる。彼は馬に反対にまたがり、自分の体を盾にし、そろそろと進むことしかできなかった。しばらくすると、強盗に襲われます。普段なら自慢の力であっというまにねじ伏せるところだが、火を消さないために戦うことができません。強盗にすべてを奪われても文句を言えず、少しのロウソクだけを残してもらうのがやっとだった。

 途中、予備のロウソクがなくなった。たまたま通りかかった老人を背負って、助けてあげた御礼にロウソクを分けてもらい、駆け戻り、燃え尽きる寸前に新しいロウソクに火を移す事ができました。また、疲れて眠り込んだ間に雨が降り始めました。しかし、二羽の小鳥が火の上で、羽ばたいて火を守ってくれるということもありました。そして、多くの労苦の末、故郷の町にたどり着きます。

 大聖堂の入り口までたどり着いたラニエロは、町の人にさえぎられます。「その火がエルサレムから運ばれてきたなんて信じられない、そんな怪しげな火を祭壇にともすことはできない」と。すると一羽の鳥が飛んできてラニエロの掲げていた火にぶつかり、それを消してしまいます「これまでだ。人間に消されるよりマシだった」とラニエロが思った瞬間、人々が叫びます。「鳥が燃えている!」その鳥は、祭壇の上まで飛んでゆき、見事に点火します。これには、町の人々も驚き「奇蹟だ!主が証明してくださった」と受け入れます。その後、彼は尊敬される幸せな生活を送ったといわれます。か弱い火を見つめることで、本当に優しくて、強い人間に変えられていったラニエロのように、現代の聖火リレーをする人々や国々が、火を見つめ続ける中で変えられ、最も弱いものを大切にする心を育てられるように願ってやみません。