[地の塩・世の光」 

                           司祭 テモテ宮嶋 眞

 


 フィリピン、ミンダナオ島(マニラのあるルソン島から飛行機で南へ約一時間。フィリピン南部で一番大きな島)に、2003年から「ミンダナオこども図書館」という活動をされている日本人がいます。彼の名前は「松居 友」有名な福音館書店の松居 直さんの子どもです。フィリピン・ミンダナオ島では、40年以上も内戦が続き、これまでの死者は17万人、避難民は二百万人以上といわれています。その原因は、イスラム自治区に眠る石油や天然資源の奪い合いだといわれています。この内戦はイスラム教徒と、キリスト教徒の間の戦いという側面もあり、フィリピン政府軍と、モロイスラム解放戦線の戦いでもあるのです。彼はこのミンダナオ島で「子ども図書館」を立ち上げ、イスラム教徒もキリスト教徒も、民族・部族も関係なく、戦闘で親を亡くした子供たちを受け入れる施設を作り、貧困のために進学できない子供たちのためには奨学金を集め、上級学校に進学させる他、たくさんの保育所を作っています。フィリピンの保育所は、3歳から4歳の子どもたちが、幼稚園に上がる前に学校でのお行儀を学ぶために通うそうで、ABCの書き方も、教えてもらいます。保育所で、ある程度の読み書きを習ってからでないと、小学校に受け入れてもらえないため、必ず保育所が必要なのです。現在までに80か所ほど作ったそうです。

    「また、日本からの支援物資(古着、かばん、靴、文具など)を配ったり、植林をしたり、キャンプをしたり、もちろん、遊んだり、お誕生日パーティーをしたり、そして本の読み聞かせもしています。子供たちと共に生活する中で、必要なあらゆることをするのが子ども図書館の役目でしょうか。こうした働きを10年以上も続けたため、松居さんは、現地の人々の信頼も厚く、或る部族の酋長にまで選ばれたそうです。最近では、イスラム教の男性と、キリスト教の女性の結婚式が、教会でイスラム教式に(とっても複雑ですが、とっても仲がよさそう)行われたそうです。

 松居さんは、恵まれすぎている日本の若者たちがミンダナオ島にやってきて、或る意味過酷な子供たちの状況の中に身を置くことを勧めています。貧しい環境に置かれながらも笑顔いっぱいの子供たちと共に生活すると、神様への感謝の祈りは、カトリック、プロテスタント、イスラムの枠を超えてささげられ、歌とダンスで喜びがあらわされます。

 マタイ福音書5章にある「あなた方は、地の塩、世の光」という御言葉をそのまま実現しているのがこのこども図書館の世界ではないかと思います。松居さんだけでなく、そこに集まる奨学生、子どもたち、一人一人が、この過酷な世にあっても、人知れず、また堂々と生き続けているのです。