「被造物の本来の姿を守り、地球の生命を維持・再生するために努力すること」 

                           執事 アンデレ 松山健作

 


 

  聖公会は、カンタベリー大主教を一致のシンボルとして、世界一六五以上の国と地域に四〇の教会共同体(管区)があり、約八五〇〇万人の信徒が信仰生活を営んでいます。日本聖公会は、その中の一つの管区として全国に十一の教区を形成し、信徒・主教・司祭・執事と共にその使命を担い、福音宣教のために働いています。

 「聖書・伝統・理性」を重んじ、あらゆる絶対主義を否定し、解釈し続ける共同体というアイデンティティーを持っています。全聖公会(アングリカン・コミュニオン)は、宣教の指標を以下の五つに定めています。

@神の国のよき知らせを宣言すること A新しい信徒を教え、洗礼を授け、養うこと B愛の奉仕によって人々の必要に応答すること C社会の不正な構造を改革し、あらゆる暴力に反対し、平和と和解を追求すること D被造物の本来の姿を守り、地球の生命を維持・再生するために努力すること

 これを読むと、どれも重要な指標であるということがわかるでしょう。  さて、来る五月二八日(月)から三一日(金)まで仙台において「原発のない世界を求める国際協議会」が開催されます。これは私たち日本聖公会が何よりも神さまの与えられた「いのち」の尊厳を最重要であると考え、あらゆる被造物のいのちの保全を訴え、国際的な連帯によって、原発のない世界を求める集まりを予定しています。私もこの実行委員として、一年ほど前に選出され、毎月実行委員会を行い、ついに当日を迎えようとしています。

 私たちの生活には、もちろん電気は必要です。しかし、去る二〇一一年三月十一日、東日本大震災によって発生した原発事故は、未だに私たちの生活を脅かし、特に子どもたちへの健康被害、また農業、漁業従事者の生活を一変させ、自然を破壊し続けています。それは今尚も収束することを知りません。

 「原子力安全神話」を信頼して来た私たちは、悔い改めなければなりません。宗教者として、どのように応答すべきかを真剣に検討しなければならないのです。解決することのできない大量の放射性廃棄物を目の前に、私たちは意識的か無意識的かを問わず、そのことから目を背けたくなるかもしれません。また原発に依存する経済から新たな再生可能エネルギーへの転換することへの困難さを感じるかもしれません。しかし、「C社会の不正な構造を改革し、あらゆる暴力に反対し、平和と和解を追求する」宣教的使命がここにあります。

 私たちは目の前で苦しみ、痛む人を忘却し、見逃すことはできないのではないでしょうか。ちょうど聖光幼稚園に属する園児たちと同じ子どもたちは、甲状腺の検査をしなければならない状況に置かれています。その恐れを私たちは、自分のものとして引き受けることはできるでしょうか。

 イエスさまは、子どもたちを愛し、「子供たちをわたしのところへ来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのような者たちの者である」(ルカによる福音書十八・十六)と招かれます。この子どもたちの尊いいのちを守る使命を帯びているのは、当然今を生きる大人たちなのです。

 そして、また子どもたちだけではなく、あらゆる被造物を保全すること、地球上の生命を守ることも私たちキリスト教が行うべき、宣教的働きであるのです。これからはじまろうとする「原発のない世界を求める国際協議会」の上にお祈りいただき、私たちが教会として、いかなる努力をすることができるのか、共に考えることができればと願っています。