月報「コイノニア」
2000年3月号 No.199


理念先行型と実践先行型

牧師 司祭 イザヤ 浦地洪一

その日、風の吹くころ、主なる神が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる神の顔を避けて、園の木の間に隠れると、主なる神はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか。」     (創世記3章8、9節)

 ずいぶん前のことだったが、夜遅いテレビ番組で、中坊公平氏が対談しておられるのを見たことがある。
 中坊公平氏とは、かつて豊田商事の破産管財人に指名され、老後の蓄えなどだまし取られたお年寄りの救済のために奔走し、日本弁護士連合会の会長を務め、豊島産業廃棄物撤去問題の弁護団の指導、また、住宅金融債権者管理機構の社長として熱意にあふれた弁護士さんとしてよく知られている。
 その対談の中で、中坊さんは、次のようなことを語っておられた。
「世の中には、理念先行型の人と、実践先行型の人と二種類のタイプがある。豊田商事が倒産した後、豊田商事の社員一人一人と会って話したが、その全員が実践先行型だった。あの中に理念先行型の人が一人でもいれば、豊田商事事件のような悲惨なことは起こらなかっただろう」というような趣旨だったことを覚えている。
 理念先行型というのは、「いかにあるべきか」ということを考えてからでないと動かない人のことである。意義を考え、意味を見いだし、理屈に合わなければテコでも動かないというタイプの人である。これに対して、実践先行型の人というのは、「ようするにすぐにやることだ、ぐずぐず理屈を言ってても始まらん」という人たちのことである。豊田商事の社員たちには、「いかにあるべきか」などと、立ち止まって考える人は一人も居ず、ただ、ただ、進め、進めと叱咤激励されて、ひたすら走り続けたと言う人たちばかりだったというのである。そのような性向を持った人たちばかりが集められたのか、その集団に入ったためにそうなったのか定かではないが、要するに、全員が実践先行型だったと言うのである。
 私たちの周りにも、同じように感じられる場面がよくある。この両方のタイプがバランスよく共存し、相互に働いてチェックしあうことが理想なのだが、なかなかうまくいかない。理念ばかりを追求し、理屈をこねて議論ばかりをしていると前に進まないし、理論はともかく目に見える結果、数字で表せるような実績主義だけで、ただひたすら前に進むだけでは必ず足元が掬われる。
 私たちが、信仰を持って生きるということは、神との関係において、いつも軌道修正しながら、生かされていることを感じることである。
 食べてはならないと禁じられた木の実を取って食べたアダムとイヴは、神を恐れて身を隠した。神は、「おまえたちはどこにいるのか」と問い続ける。「それでよいのか」、「そんなことをしていていいのか」、「どんな生き方をしているのか」と、神は問い続ける。どこまで逃げても、どこに隠れても、私たちは問われ続ける。そして、私たちが「生きる」ことを通して、神に向かって「応答(response)」することが求められている。


新礼拝堂ガイドブック

新礼拝堂の特徴

新しい礼拝堂を建築するにあたって、設計者が誇るいくつかの特徴があります。
第一は、採光についてです。礼拝堂の立地条件が、東側に幼稚園、西側に会館という既設の建物があるために、側面に窓をとることができません。そこで、屋根に天窓(トップライト)をつけて、白い壁に反射させ、昼間は自然の柔らかい光が射し込むようになっています。南側の祭壇の壁の柱の両側に、牛乳を流したような特別のガラスを鉛格子で固定し、障子窓から光が射し込むような柔らかさを出しています。また、ところどころにはめ込まれたプリズムは、太陽の光がさすと虹を切り取って散らしたような模様を床や椅子に投げかけます。そして、北側の全面ガラスから差し込む光も、礼拝堂全体によくマッチしてとくに夜間は、礼拝堂の内部から美しい影を道行く人を振り返らせます。
礼拝堂内部の照明は、床を照らす光、天上を照らす光を別々に調光することができ、コントロール装置をどのように使いこなすか今後の課題です。
第二は、音響についてです。司式者や説教者の声、聖書朗読の声、さらにオルガンや聖歌の歌声が、どれほど美しく、荘厳にそして明瞭に聞こえるかは、礼拝堂の生命ともいうべきものです。残響を長くするか、短くするか、建築実行委員会ではずいぶん議論しこだわりました。予算を積んで壁や天上の材質を堅くし、残響が長い目になるようにしました。今後、放送設備との関係も思考錯誤しながら、礼拝堂に適した最も美しい聞きやすい音を見つけていくことになります。
第三は、構造についてです。将来、礼拝の出席者が三百人、四百人になった時のために、礼拝堂を拡張することがでくるようにフレキシブルな構造になっています。礼拝堂は大きな柱四本で支えられ、二十一メートルの鉄骨の梁を渡して屋根を支えています。将来、東の方と西の方へ拡張するとき、側壁には重量がかかっていませんので本体を壊さないで壁を取り除くことができます。


納骨堂の考え方

教会において、納骨堂を設置するということは、どういう意味があるのかと、かつて募金委員会において、ずいぶん議論がありました。遺骨を安置して遺骨そのものを拝むのではない、日本人として、クリスチャンでありながら仏教徒のような感覚で納骨し法事を営むのはおかしいということになり、ちゃんとした意味づけを考えました。世に在る者も世を去った者も、主にあってこそ交わりをもつことができるを確信し、聖餐式の聖卓を共に囲む時、目に見える形でそのことを確認することができると話し合いました。新礼拝堂の納骨堂の配置は、共に聖卓を取り囲んでいるところに特徴があります。京都市から納骨堂経営の許可を申請するに際して、そのことを理解してもらうのにずいぶん時間がかかりました。

旧礼拝堂への思いと
       新礼拝堂

どんな礼拝堂を建てるかと、「話し合う会」を続けている中で、あの旧礼拝堂に対する思い入れが強いことがわかりました。とくに若い人たちから、レンガ造りにして欲しい、天上を高くして欲しい、祭壇やステンドグラスを残して欲しいという要望が多く出ました。その意見のすべてではありませんが、大部分の要望は入れられたのではないでしょうか。
因みに、外壁のレンガですが、委員会が要望する色を出すために、レンガタイルを製作する工場では4回焼き直しています。赤レンガの自然の肌合いを出すために特別の工程を取り、最後の窯で思うような色がなかなか出ないで苦労していました。工程が約一ヶ月遅れた原因となりました。しかし、苦労をして頂いたおかげで、本当のレンガの色になりました。祭壇、会衆用長椅子、洗礼盤、ステンドグラス、モザイク画等も設置され、新しい部分と古い部分が違和感なく収まっています。(旧礼拝堂の窓や、出入り口の上等にはまっていたステンドグラスを「ステンドグラス・シミズ」さんの工房に預かって頂いています。
個人のお家の窓に加工して入れることができるそうですから、ご希望の方は牧師までお申し出で下さい。)


誰にもやさしい礼拝堂

新礼拝堂には、「誰にもやさしい」礼拝堂であるために、いくつかの設備があります。
その一、耳の聞こえにくい方々のために「補聴器」の貸し出しができます。礼拝堂のマイクを通して語られる声を、無線で受けるレシーバーです。現在、五台ありますから、必要な方はアッシャーまで申し出で下さい。
その二、ちょっと体の不自由な方々のために、男性トイレの奥の扉の向こうに、車椅子用のトイレ(洋式)があります。立ったり座ったりするのにつかまりやすく、広いスペースをとっていますから楽な姿勢を保てます。女性も使えますからいつでもお使いください。
その三、階段を上がりにくい方々のために、遠慮なくエレベーターをお使いください。小さい子どもが遊びに使うと危険ですので日頃はカギをかけています。必要なときにはすぐに開けますので、牧師夫人に言ってください。
その四、礼拝に遅れてしまって入りにくいという方々のために、会館の方にまわり、物置の横の入り口から入ると、真ん中の通路を通らなくても目立たないで前の席に着くことができます。前の席がよく空いていますのでどうぞ。


報告
教区の青年達による「よせ集めの会」

ヴェロニカ 住吉 恵美

 2月11日(金・祝)12日(土)、奈良基督教会で、京都教区の青年達による「よせ集めの会」が行われました。三十名近くの青年が集まり、そのうち当マリア教会からは、浦地愛、斉藤仁、前田潤、松田朋子、そして私の五名が参加しました。
 一日目は四・五名ぐらいづつのグループに分かれて普段の教会生活の中で思っていることや、教会教区の青年達と、これからやってみたいと思っている事について話し合われました。その中での意見には「京都聖マリア教会はいつも元気があっていいナ」という声がちらほら…。青年が少ないために活発な活動ができない中、いつもたくさんの青年が集まるマリア教会は本当に恵まれているなアと、改めて思ってしまいました。話し合いの後、その夜はみんなで鍋をつついて親交を深めました。
 二日目は前日に話し合った事をグループ毎に発表し、これから教区の青年達でやってみたい事について意見を述べ合いました。たくさんある案の中から、音楽会やスポーツ大会など五、六案をピックアップして、それらの実現に向けて話し合われました。
 教区の青年達と出会う機会が少ない私にとって、とても貴重な時間を過ごせたと思います。これからもこういった機会に積極的に参加し、「今元気な青年会」の輪をもっともっと拡げていきたいと思います。


ニュースとお知らせ

=入院手術=
速水純子さんは、去る1月10日、礼拝後、帰路転倒され、脳内出血が見つかったため、武田病院に入院されました。2月10日、手術が行われました。術後の経過は良好で、無事退院され、自宅で静養なさっています。お祈り下さい。なお、2月11日、宝塚売布黙想の家において行われた日本聖公会GFS総会には、急遽代わって佐々木富美子さんが出席されました。

=礼拝音楽委員会=
去る1月6日行われた教会委員会において、礼拝音楽委員を委嘱することになり、次の方々にお願いすることになりました。委員長・続木創さん、末松玲子さん、林悦子さん、森田朋宏さん、吉村由理さん。

=牧師転任=
来る4月1日付で、教区の人事異動が行われ、浦地司祭は、平安女学院に出向が命ぜられ、同日付で、現在、桑名エピファニー教会および四日市聖アンデレ教会牧師のヨハネ下田屋一朗司祭が派遣されます。同司祭は、北海道樺太出身。1935年3月20日生れ、65歳。1983年8月、聖職候補生認可。1985年三月、聖公会神学院卒業。1985年12月、執事叙任。1987年3月、司祭按手に叙任。四日市聖アンデレ教会牧師、平安女学院チャプレン等を歴任。現在に至る。ご家族は、奥さんのセシリア洋子さん。どうぞよろしく。

=大斎節=
今年は3月8日(水)から大斎節に入ります。主イエスが荒野において四十日四十夜断食し、悪魔の誘惑に打ち克たれたことを記念し、私たちも克己と祈りの時として、イースターの前四十日間を守ります。大斎克己献金の献金袋がとどいています。お持ち帰りください。

=堅信式=
来る3月26日、武藤教区主教をお迎えして、洗礼堅信式が行われます。洗礼および堅信式を受けることを希望される方は、準備の勉強をしますので牧師までお申し出で下さい。

=結婚式=
○フランシス中野浩さんと森優子さんは、来る3月4日(土)、午後1時から、京都聖マリア教会礼拝堂において、浦地司祭司式のもと、聖婚式を挙げられます。
○山崎信幸さんと赤津友紀さんは、3月5日、午後2時30分から、京都聖マリア教会礼拝堂において、浦地司祭司式のもと結婚式を挙げられます。

=西大和聖ペテロ教会礼拝堂聖別式=
西大和聖ペテロ教会(奈良県北葛城郡河合町星和台2―8―1)では、新しい礼拝堂が完成し、2月11日(金・建国記念日)午前11時から礼拝堂聖別式が行われました。

=青年「よせあつめの会」に参加=
去る2月11日〜12日、奈良キリスト教会において、教区宣教局教育部青年活動部門主催の青年の集い「よせあつめの会」が一泊二日で開催され、30名が参加しました。京都聖マリア教会からは斉藤仁さん、前田潤さん、住吉恵美さん、松田朋子さん、浦地愛さんの五名が参加しました。

=ザビエル来日450周年記念オペラ公演=
▽3月11日(土)午後1時30分
▽びわ湖ホール大ホール
▽オペラ「忘れられた少年―ザビエルが遺したもの―」
▽出演=東京オペラ協会公演▽指定席5000円、一般4000円
▽後援=京都キリスト教協議会
前売券は牧師まで。

=日曜学校教師研修会=
2月25日夕から26日(土)午後3時まで、滋賀県国民休暇村(近江八幡市)において、教区宣教局教育部主催の京都教区日曜学校教師研修会が行われますが、当教会から浦地愛さんが参加されました。

=聖職候補生認可=
岩城征文さんは、聖職になることを志願され、昨年夏、教会委員会の推薦を得て、教区主教に志願書を提出しておられましたが、来る4月13日付で、聖職候補生に認可されることになりました。当日付で、京都聖マリア教会信徒としての教籍が教区の聖職候補生簿に移されます。岩城さんは、四月からウイリアムス神学館に入学されます。お祈り下さい。

=教区人事異動=
京都教区では、4月1日付で人事異動が行われることになり、2月11日、教区主教から左記ように公示が出されました。
○司祭浦地洪一、京都聖マリア教会牧師および京都聖ステパノ教会管理牧師の任を解き、主教座聖堂付とし、平安女学院へ出向を命じる。
○司祭下田屋一朗、桑名エピファニー教会および四日市聖アンデレ教会牧師の任を解き、京都聖マリア教会牧師に任命する。
○司祭大江真道、京都聖ステパノ教会管理牧師に任命する。
○司祭佐藤徹、高田基督教会牧師および百済基督教会牧師の任を解き、桑名エピファニー教会および四日市聖アンデレ教会牧師に任命する。
○司祭松本正俊、和歌山聖救主教会牧師および貴志川基督教会管理牧師の任を解き、高田基督教会牧師および百済基督教会牧師に任命する。
○司祭大岡創、田辺聖公会の牧師のまま、和歌山聖救主教会牧師および貴志川基督教会管理牧師に任命する。
○聖職候補生上松興、大岡創司祭のもとで、田辺聖公会勤務を命じる。
○司祭井田泉、聖公会神学院出向を解き大津聖マリア教会において主日勤務を命じる。
○上松興、3月10日付をもって、聖職候補 生に認可する。
○岩城征文、4月13日付をもって聖職候補生に認可する。
○司祭古武矩生、12月31日付をもって、平安女学院出向を解く。

=牧師転宅=
浦地司祭は、3月14日に転宅します。後任の下田屋司祭は、三月十七日、桑名から牧師館に転宅して来られます。


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