月報「コイノニア」
2002年4月号 No.224


イスラームをめぐって(七)

司祭ヨハネ

神のために巡礼と参詣の務めを果たせ。しかし、もし妨害されたならば、手ごろな供え物を届けよ。そして、供え物がその場所に届くまで頭を剃ってはならない。しかし、おまえたちのうち病気の者または頭に疾患のある者があれば、贖いとして断食するか、喜捨するか、または供儀を行えばよい。お前たちがなんの故障もないのに、もし巡礼を果たすまで参詣で繋いでおこうとするならば、手ごろな供え物を届けよ。供え物を出せない者は、巡礼中に三日、帰ってから七日の断食である。すなわち満十日間である。これは、家族が聖なる礼拝堂のあたりにいあわせない者のための場合である。神を畏れ、神が懲罰にきびしいお方であることを知れ。
    (第2章「雄牛の章」196)

巡礼月第12月の9、10日は大巡礼のクライマックスです。この日に巡礼を果たしたムスリムは「ハッジ」の称号を与えられ、大きな誇りとされます。吉田光邦氏は次のように述べています。「民族、国籍を異にし風土、生活も異なる人びとがメッカに集まってアッラーのために生きる集団の生活を体験することは、イスラムという宗教協同体をたえず復活させ、たえず伝統へ回帰させるみごとな制度なのだ。人間すべて同胞、そしてひとしくアッラーのもとに集まり、その偉大さを確認することを、現実に体験させ実感させるメッカ巡礼。この壮大なプランが実行され、1300年もの間やむことなく続いている事実こそ、イスラムのあり方を明確に示すものなのだ。宗教が個人の救済にとどまらず、集団社会の形成に至るというイスラムの統一という特質は、このメッカ巡礼によって確証されてきたのであった。」(『啓示と実践・イスラム』淡交社)。
 ハッジを志す者はメッカを中心とする聖域の境界(ミーカート)でイフラーム(巡礼着)に着替えて以後、散髪・爪切り・髭剃り等が禁じられるイフラーム(禁忌)に入り、「神よ、私はあなたの前でお仕えします・・・」(タルビーア)の言葉を常に唱えます。カーバ神殿でのタワーフの行の後、預言者アブラハム(イブラーヒーム)の足跡と伝えられるくぼみのある石(アブラハムのお立ち所)のところで特別の礼拝を行います。
サアイの行にも次のようなアブラハム伝承があります。アブラハムはアッラーの命により妻ハガイ(ハージャル)と幼いイシュマエル(イスマーイール)と共に故郷を離れてメッカにたどり着いたが、二人をそこに残してさらに旅に出た。渇きを訴える幼子のために、ハガルはサファーの丘とマルワの丘の間を七回行き来して必死に水を探したが見つからなかった。落胆してイシュマエルのもとに戻ってみると、その足下から清水が湧き出てきた。二人はアッラーに感謝して渇きを癒した。これが今も絶えることなく湧き出ているザムザムの泉である。ハガルにならって二つの丘の間を七回往来(三往復半)するサアイの行を終えた巡礼者たちは、こぞってこの聖水を飲み、また故郷への土産として持ち帰ります。
8日の夜はメッカ東方のミナーの谷で一泊。翌九日早朝そこから東南方向のアラファートの野(メッカ東方約二五キロ)に移動し、正午頃から灼熱の太陽の下で直立して悔い改めのウクーフの行を行います。これが大巡礼のクライマックスとなります。日没とともにそこからメッカとの間にあるムズダリファに引き返して夜を過ごし、石投げ儀礼用の小石を拾います。翌十日早朝礼拝後ミナーに向かう途中、悪魔の石柱に石を投げつけます。その間「慈悲深く慈愛あまねき神の御名において」(バスマラ)と「神は至大なり」(タクビール)を唱え続けます。こうして徐々に禁忌から日常に戻ります。

写真は宿営地の天幕群(集英社『今のイスラーム』より)


マリアの子どもたち

聖マリア教会には、日曜学校とジュニアチャーチ(中高生)があります。聖マリア幼稚園の卒園生を中心にたくさんの子どもが集まり、それぞれの礼拝を守っています。今号はその活動を紹介いたします。

日曜学校

 毎週日曜日、朝9時30分に子ども達が礼拝堂に集まります。10名の教師が菅原さと子校長先生を中心に、毎月一回教師会を開き、いかに子供たちを喜ばせられるかを話し合っています。礼拝の司式、奏楽、お話しを教師輪番で担当し、また、子供たちにも順番に司式や奉献の礼拝当番をしてもらうことにより、礼拝を守るという意義を体験してもらっています。礼拝の後は会館集会室で製作をしたり、お話しや紙芝居をしたりと聖餐式の始まる10時45分まで、楽しく過ごします。また、二ヶ月に一度お誕生会も催します。年間の行事は100名以上が参加する夏の北小松キャンプを中心に、遠足・ハイキングやお散歩、社会見学等様々な企画をしています。
 マリア幼稚園から公立の小学校に上がった子どもが大半で、日頃忘れがちなお祈りを大事にして、ジュニアチャーチ、そして大人になっても教会に繋がっていけるようレールを用意しています。

総勢100名を越える
夏の北小松キャンプ

ジュニアチャーチ

 ジュニアチャーチの礼拝は第1・第3日曜日10時から。礼拝堂で、子ども達の司式による朝の礼拝が行われます。そのあと、聖餐式に少しかぶり込むのですが、事務室をお借りして聖書研究をしています。教師は3名、メンバーも数名しか出席出来ないこともありますが、何とか月二回の礼拝を守っています。ジュニアチャーチでは教師の主導ではなく、すべて子ども達に企画・立案させ、自立していってもらうことを目標にしています。礼拝の司式はもちろんメンバーですし、お祈りもメンバーがするおかげで突然でもスマートなお祈りが出来るようになってきました。
 中高生になるとクラブ活動やアルバイトなどで足も遠ざかりがちですが、大好評の夏の芦生キャンプや、遠足、パーティーなどを企画し、楽しく教会に繋がっています。

4月21日に行われた
ボーリング大会にて

優勝してトロフィーをもらった
小林由布子ちゃん


新任主日勤務の先生・神学生の紹介

3月にウイリアムス神学館を修了されたダニエル大塚勝聖職候補生が、4月からウイリアムス神学館専任主事を務める傍ら当教会で主日勤務をされています。
また、ウイリアムス神学館二年生になるアタナシオ浦川慎二神学生(北海道教区聖職候補生)が当教会で一年間実習します。

ダニエル
大塚勝聖職候補生

 大塚聖職候補生は、京都生まれ京都育ち。鴨泝高校、同志社大学を経て平安女学院で教鞭をとっておられました。担当は歴史・日本史。その後校長先生を務められ、60才で退職。ウイリアムス神学館で三年間学ばれてこの3月に修了されました。現在はウイリアムス神学館主事。平日は神学館に勤務され、主日は聖職候補生として当教会に勤務されています。「34年ぶりにマリアに帰ってきました。どうぞよろしく!」とのこと。住所は教会へお問い合わせてください。

アタナシオ
浦川慎二神学生

 浦川神学生は、東京都調布市生まれ。府中の聖マルコ教会の信徒で、昨年4月に推薦され、北海道教区よりの聖職候補生としてウイリアムス神学館に入学されました。現在二年生。身長182センチのスレンダーボディー。初めての自己紹介では「高いところに手が届きます!大声が得意です!」といろいろな面でも大変期待できそう。趣味はと聞くとしばし長考の上「NHK朝の連続テレビ小説鑑賞!」のひとこと。勉強が忙しくってそれくらいしかテレビを見る時間がないそうです。
マリアでの活躍、ご覧あれ!


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