月報「コイノニア」
2004年6月号 No.250


どうしてわたしを捜したのですか

司祭ヨハネ

三日の後、イエスが神殿の境内で学者たちの真ん中に座り、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。聞いている人は皆、イエスの賢い受け答えに驚いていた。両親はイエスを見て驚き、母が言った。「なぜこんなことをしてくれたのです。ご覧なさい。お父さんもわたしも心配して捜していたのです。」すると、イエスは言われた。「どうしてわたしを捜したのですか。わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなかったのですか。」しかし、両親にはイエスの言葉の意味が分からなかった。それから、イエスは一緒に下って行き、ナザレに帰り、両親に仕えてお暮らしになった。母はこれらのことをすべて心に納めていた。イエスは知恵が増し、背丈も伸び、神と人とに愛された。
          ルカによる福音書2・46―52

 パドヴァのスクロヴェーニ家礼拝堂のジオットに戻ります。ルカ福音書だけにある少年時代の物語です。
イスラエルの成人男子には三大祝祭の一つにエルサレム神殿に参拝する義務があり、イエスの両親は毎年過越祭に上京していました。満十三歳で成人とされたので、十二歳のイエスということに特別な意味があるかもしれません。「わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなかったのですか」という言葉には、幼な子サムエルがシロの神殿にささげられた故事が重ね合わされているのでしょうか。
さて、巡礼の帰途、イエスがいないことに気づいた両親は、同行の親類や知人の間を捜し回り、さらに捜しながらエルサレムに引き返し、「三日の後」、ようやくイエスを神殿で見出しました。
右の絵では、少年イエスが学者たちに囲まれて中央に座り、落ち着いた様子で右手の人と対話しています。相手がわずかに身を引くようにしているのは驚きの表現でしょうか。画面左手には、イエスをようやく捜し当てたマリアとヨセフが立っています。マリアは思わず両手を差し伸べ、イエスに声をかけます。「あ、こんなところにいた・・・何してるの、心配してたのよ」と、切迫した母の声が聞こえるようです。父親もそれに和するように右手を出しています。場違いな両親の出現に対して、座席に着いている左から三人目の人物は、「いったい何事か」と言うように闖入者を振り仰いでいます。
過越祭とエルサレムはやがてイエスの受難の時と場所になり、学者たちとの対話の場面は受難週に神殿で教えられたイエスと、それを聞いた人々の驚きに重なります。「三日の後」は復活のキーワードであり、「どうしてわたしを捜したのですか」というイエスの言葉は「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか」(二四・五)という御使の言葉を連想させます。「父の家」とは復活・昇天のイエスがおられる御父のもとであり、神の子であることのご自身による宣言でもあります。この場面は受難・復活を頂点とするイエスの公生活全般と重なっています。
少年イエスを「自分の子」として見ている両親にはイエスの言葉が分かりませんし、父の家にいるべき神の子を親類や身の回りに捜しても見出すことはできません。「わたしにとってのイエス」を捜し求めても決して得られることはないでしょう。神の子の信仰は肉によるのでなく、神の言を受け入れることによります。この画面でのイエスの像は、少年の形姿をとりながら紛れもない主なのです。


聖霊降臨日礼拝

――諸言語聖書朗読――

 5月30日は聖霊降臨日。復活日・降誕日と並ぶ三大祝日で、「主は昇天の後、公会に聖霊を降し、み力によってすべての国に福音を宣べ伝えさせられた」(聖餐準備6)教会の誕生日・宣教開始の日です。大プロセッションを行い、聖歌隊とハンドベルクワイアがご奉仕しました。
 また、使徒言行録の朗読に合わせて、インドネシア語(浦地愛)・明治文語(大塚勝)・タイ語(江口翠)・ギリシア語(八城晃)・ドイツ語(宗像康雄)・イタリア語(住吉恵美)・大阪弁(瀬佳子)・スペイン語(山本進)・京都弁(菅原さと子)・ラテン語(下田屋一朗)・松江弁(宗像和子)・ヘブライ語(林悦子)の各言語で朗読されました。「一同は聖霊に満たされ、『霊』が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした。(使徒言行録2・4)」を体験しようというもので、昨年度から行っています。日本語方言の登場が今年の特色です。

ハンドベルクワイアのご奉仕も
回を重ねてかなり上達してきました。


大塚新司祭誕生

 5月29日(土)主教座聖堂において司祭按手式が行われ、ダニエル大塚勝司祭とエッサイ矢萩新一司祭(上野聖ヨハネ教会)が誕生しました。おめでとうございます。按手式・祝会のために多くの教会員の方々にご協力いただきました。ありがとうございました。

マリアの礼拝での聖餐式司式


将来計画懇談会

 去る6月13日、第1回目の将来計画懇談会が行われました。先月号でも呼びかけました通り、サブタイトルを『聖マリア教会の明日を語ろう』とし、宣教百年記念事業だけでなく、もっと幅広く教会そして幼稚園の将来について全員の語らいの場を持とうとするものです。
 初めての会でもあり、どんな内容になるのだろうかと、当初は期待と不安交じりの中、約三〇名の参加者がそれぞれに活発な意見を交わし、今後につながる良いスタートが切れたと思っております。
 第1回目のテーマは「聖マリア教会ってどんな教会?」。そして今回は「誕生月」をもとに四グループに分かれ、普段は話すことの少ないメンバー同士でも共通の語らいの場が持てました。
 様々な活発な意見交換の後、グループごとにディスカッションの結果を発表し、最後は議長の総括で締めくくりとなりました。
 紙面の都合で全ては掲載できませんが、発表の主な内容は次のとおりです。

◆聖マリア教会の特徴
・各世代が揃っており、それぞれの活動が活発。かつ多様性をもっている
・特に幼稚園の先生が全員信徒であり、幼稚園を卒園して教会に「Uターン」する人も多い
・大きい、全体に豊かで恵まれている
・ハイチャーチ的伝統がある
・婦人会、青年会等々、それぞれに「居場所」がある。
・仲間意識が強い反面、外からは入りにくい雰囲気がある
・遅刻や礼拝中の私語が目立っていた(最近は少なくなった?)
・礼拝や教会生活が本当に神様、信仰に向いたものとなっているか?
・信徒子弟が少なく、将来が不安 等々。

 次回は7月11日(日)午後1時から2時です。この会は全員参加にこそ意味があります。今回参加できなかった方もあらかじめご予定いただいて、ぜひ語らいの場に出て、思いをぶつけてください。
 (議長 キリル森田朋宏)


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