月報「コイノニア」
2006年12月号 No.280


人間・この醜いもの、そして美しいもの

〜「アンドレイ・ルブリョフ」一九六六年、ソビエト映画〜

司祭 ミカエル 藤原健久

「人間なんてそんなものだ。」
「同じ信仰を持っていてもか?大地も人も一つじゃなかったのか。タタール人が嘲笑したよ、“お前らはどうせ仲間同士で殺し合うんだ”と…」
「神は許してくださるよ。だが殺した者は、自分を罰しながら生きるのだ。」
「赦しを乞うために無言の行に入る。これから一切口を利かない…。ロシアは…母なるロシアは耐えている。おれも耐えねば…いつまで苦しむんだ。」

 世界で最も有名なイコン画家、アンドレイ・ルブリョフの伝記映画です。アンドレイのイコンは以前にも数点紹介しましたが、どれも素晴らしいものです。明るく、軽やかで、光にあふれています。彼を描くにあたって、この映画も大変美しく、素晴らしい映像で構成されています。壮大なセットに膨大な人数のエキストラ、美しい自然と教会、一カットをじっくりと長回しで撮影する手法。ドラマ部分は白黒なのですが、それとも相まって、一五世紀に撮影されたドキュメンタリー映画を見ているかのようです。テレビでは多分制作不可能な贅沢さです。監督は芸術性と共にリアルさも追求したに違いありません。どのカットも完璧なリアルさです。その姿勢は、人間の内面性にまで向けられています。
 この映画では、人々は、どの人も、大変リアルに、その分醜く描かれています。人々は嫉妬し、ねたみ、だまし、陥れ、どなり、殴り、殺すのです。教会の中での虐殺の場面には、あまりのひどさに、言葉を失う思いがします。何の備えのない穏やかな農村を、突如恐ろしい暴力がおそいます。侵入してきたタタール人は、教会の門を破り、逃げ込んだ村人たちを襲います。美しいイコンに囲まれた聖堂の中に、悲鳴が満ち、人々が暴行され、殺されます。目を覆いたくなるような場面です。
 映画のラストで、急に画面がカラーになります。そしてアンドレイの代表的なイコン数点を映し出します。それも、細部からじっくりと撮影し、その後に全体を映し出します。私はその画面を見て、「あれ」と驚きました。今まで見慣れたイコンが、急に別の意味で親しく、身近に感じられたのです。よく見ると、イコンの細部が、今まで映画の中に出てきたものを表しているのでした。イコンの着物の模様、衣服のひだ、傷ついた手足、これらは映画の登場人物のものとそっくりでした。イコンの隅に小さく描かれている騎馬姿の男、建物、これらも映画に出てきた兵士、教会とそっくりでした。そしてキリストの憂いを帯びた眼差し、これも映画に出てきた、あの、弱く、ずるい、醜い人々の眼差しと一緒でした。アンドレイは彼の生涯に出会った人や物をイコンに描いていたのでした。いや、より深く言うなら、アンドレイが出会ったものを組み合わせて、イコンを作り上げていったのでしょう。その結果、あの素晴らしいイコンになったのです。何と不思議なことでしょう。あの軽やかで、美しいイコンは、醜く、汚い人間によって構成されていたのです。ここに、神様の救いの業を見るような気がします。神様は、人間の全て、醜さや罪深さをも全て用いて、比類なき美しさへと組み合わせてくださるのです。
 三時間ほどある、長くて、重苦しい映画です。しかし見終わった後、明るい神様の救いを感じさせる、素晴らしい映画です。その素晴らしさは、私のように、子どもの泣き叫ぶ騒がしい声に囲まれ、家事により何度も中断させられながら、家庭の小さなテレビ画面で見ていても、減ることはありません。

(この映画のDVDを貸し出します。借用書に必要事項を記入の上、牧師まで。)


Merry Christmas

 聖マリア教会のクリスマスは、他の教会では類を見ないほどたくさんの礼拝が行われます。ここではその一部であるクリスマス礼拝を紹介させていただきます。

22日(金)16時
日曜学校クリスマス礼拝

 日曜学校も幼稚園の卒園生を中心にその学校の友達などを集めてたくさんの子どもたちが集まりました。クリスマス礼拝のあと、幼稚園ホールで楽しいゲーム大会。サンタさんにプレゼントを頂き、家路につきました。


23日(土・祝)12時30分
ボーイスカウトクリスマス礼拝

 ボーイスカウトもクリスマス礼拝。凛々しい制服姿で聖堂が満員になりました。その後カブ隊の入隊式を行い、幼稚園ホールでゲーム等満載の楽しい会を持ちました。


24日(日) 10時45分
降臨節第四主日(主要聖餐式)
総員礼拝・祝会

 24日(日)の礼拝は降臨節第四主日(紫)として守り、聖歌隊、ハンドベルクワイアがご奉仕しました。
 礼拝後一足早いクリスマス祝会。お馴染みの持ち寄り形式で、腕に縒りをかけたごちそうが並びました。聖マリア幼稚園の子ども達のお祈りで会を始め、ゲーム等で楽しいひとときを過ごしたあと、子供たちお待ちかねのサンタさんも登場。子どもも大人もプレゼントを頂き大喜びでした。

24日(日)19時30分
クリスマスイブ
  ・キャンドルサービス
 クリスマスイブに行われるキャンドルサービスは「九つの日課による唱詠晩祷」。聖書朗読・黙想講話と黙想・お祈りを各日課ごとに行う聖マリア教会独特の形で、七年目となります。聖堂に響き渡る聖歌隊の歌声とともに、蝋燭の光のもと、荘厳な礼拝を捧げました。

24日(日)23時30分
降誕日第一聖祭(深夜聖餐式)
 24日深夜の聖餐式は降誕日第一聖餐式です。約30名の出席で盛況でした。教会員だけでなく、一般の方も大勢お見えになりました。

25日(月) 降誕日7時
第二聖祭(早朝聖餐式)
25日(月) 降誕日8時
英語聖餐式
 25日早朝の降誕日第二聖餐式は、外国人旅行者からの問い合わせが多い英語聖餐式を8時から行いました。

25日(月) 降誕日10時45分
第三聖祭(主要聖餐式)

 降誕日の主要聖餐式は平日のため少々こぢんまりとしたアットホームな礼拝になりました。

25日(月)18時
ジュニアチャーチクリスマス礼拝

 中高生(ジュニアチャーチ)は夜の礼拝を献げ、その後ホールでパーティーを行いました。料理は高校生たちの手作り。早くから集まって用意をし、おいしくいただいて楽しくゲームをして過ごしました。



婦人会だより

 11月18日(土)に婦人会の伝達講習の四回目として「刺繍の会」をしました。
 吉田栄子姉を講師にお迎えし、10名の参加者は細かいクロスステッチでのサンタクロースの刺繍に挑戦しました。細かい作業に備えて、わざわざルーペを買った熱心な人もありました。吉田栄子姉の手取り足取りの優しいご指導に、少しずつサンタクロースの形が浮き上がってきます。
 参加者の中には男性二人―佐竹さんと、伝達講習皆勤賞の藤原司祭の姿も…。特に藤原司祭は前回のお料理だけでなく刺繍にも器用さを発揮され、婦人会の会員からは「こんな奥さんがほしい〜」という声が上がったほどでした。
 会員のタラントをシェアーしたいとの思いがあり、シリーズで行った伝達講習でしたが、実り多い四回を終えられて皆さまのお力添えに感謝しています。また年度末にあたり、来年の婦人会をお支え下さる役員の方々が無事与えられることを心から願っています。
       (野嶋敦代)


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