月報「コイノニア」
2009年11月号 No.315


《聖書を飛び出したイエス様・その12》
         自分の足で立つ。

安倍夜郎「深夜食堂」から

司祭 ミカエル 藤原健久

 これが主の栄光の姿の有様であった。わたしはこれを見てひれ伏した。その時語りかける者があって、わたしはその声を聞いた。彼はわたしに言われた。「人の子よ、自分の足で立て。わたしはあなたに命じる。」彼がわたしに語り始めたとき、霊がわたしの中に入り、わたしを自分の足で立たせた。      (エゼキエル一・28-2・2)

 「営業時間は夜一二時から朝七時頃まで。人は『深夜食堂』って言ってるよ。メニューは…豚汁定食、ビール、酒、焼酎…これだけ。あとは勝手に注文してくれりゃ、できるもんなら作るよ、ってぇのがオレの営業方針さ。客が来るかって?それが、けっこう来るんだよ。」と言う言葉で始まる、渋いドラマです。
 原作はマンガなのですが、この秋からテレビドラマになり、小林薫が、原作にも負けない深い渋みで好演しています。題名のとおり、深夜に放映しています。
 都会の片隅でそっと営業している、カウンターだけの、10人入れるかどうかの、小さな食堂。髪を短く刈り込んだ、少し怖そうな、けれども優しい目をしたマスターが、お腹の空いたお客さんを待っています。作ってくれるのは、身近な料理…麺類、揚げ物、ごはん物、等々…特別な物はありません。「おふくろの味」を思わせるような優しい味の料理と、少しのお酒、それにマスターとのおしゃべりで、みんなお腹と心を満たしてゆくのです。
 私は若い頃、大人になったらこのようなお店で、渋く、お酒を飲んだりごはんを食べたりするものだと思っていました。私の予想は未だ成就していません。私が大人になり切れていないのでしょう。大人の道は遠い!
 原作本は、ある飲食関係の仕事をしている信徒の方から、「私の先生です」との言葉と共に、紹介してもらいました。確かにマスターの言動には、重みと深みを感じます。彼の魅力は何だろう、と考えてみました。色々あるのですが、最も大切なのは、「独りで、しっかりと生きている」と言うことのように思います。それは、お店に集まるお客さんたちも同じです。彼らは決して立派な人たちばかりではありません。仕事もいろいろです。普通のサラリーマンから、夜の世界で生きる仕事まで、様々です。また、生き様もいろいろです。しっかりした人もいれば、だらしない人もいます。人に騙されたり、馬鹿にされたり、愚痴を言ったり、すぐに誰かに甘えたり、様々です。けれども彼らは、自分なりに、独りで、しっかりと生きているのです。
 私は、礼拝の基本の一つは、「独りで神様の前に立つ」と言うことだと考えています。神様の前では、私たちに「後ろ盾」はありません。どのような家柄だろうと、どのような能力があろうと、今までどのような人生を送っていようと、それらは神様の前では何の意味も為しません。自分が、裸の人間として、独りで神様の前に立ち、神様に語りかけ、神様からの語りかけに応えるところから、礼拝は始まるのです。もちろん、礼拝は、みんなで一緒に行うものです。祈りと思いを一つに合わせて行くものです。けれどもそれは、まず、一人一人が、信仰的に自立してこそできる物だと思います。決して立派でなくても良い、弱くても、だらしなくても良いから、正直な、裸の自分として、神様の前に自分の足で立つことを、神様は望んでおられると思うのです。
 「一人では何もできないくせに、大勢になると、偉そうになる。」このような人は、いつの時代も軽蔑の対象になります。勇気の要ることかもしれませんが、私たちはそれぞれ、一人で、自分の足で立たなければなりません。そうして一歩を踏み出すとき、きっと神様が、その歩みを支え、強めてくれることでしょう。そして、私たちは、その歩みの中で、きっと共に歩む仲間を見つけることができるでしょう。 


聖マリア幼稚園コーナー

創立100周年記念「感謝の会」

 11月17日、在園生のお家の方々やおじいちゃん・おばあちゃんもお招きし、聖マリア教会にて、幼稚園の創立100周年記念「感謝の会」が行われました。
 これは、在園生とそのご両親・祖父母の方々を対象にした創立100周年の記念行事のひとつとして行なわれた特別の会です。毎年この時期に行っている収穫感謝や命の繋がりの感謝、勤労感謝の「感謝祭」ではなく、今年は一部「感謝礼拝」では、昔々の聖マリア幼稚園と教会の写真を藤原チャプレン先生に見せていただきました。「え〜!?全然違うー!」と子ども達の方からの声。しかし、建物の形や姿は今と違っても、自分達が生まれるよりもずっとずっと昔から聖マリア幼稚園・教会がある事を、写真を見て改めて実感したように思います。子ども達が着物を着ているような昔でも、女の子の頭には、大きなリボンのお飾りが付いていた事が私の中ではとても印象的でした。二部「記念コンサート」では、チェロの木村政雄さん(音登夢)、ヴァイオリンの木村直子さん(音登夢)、ソプラノの槙野綾さん、そしてピアノは教会でもお馴染みの西谷玲子先生に、本当に素敵な演奏、歌を聴かせていただきました。最初の「星に願いを」に始まり、「キラキラ星」や「ドレミの歌」「大きな古時計」等、子ども達もよく知っている曲。「あ!知ってるー!!」と、音楽に合わせて子ども達も思わず歌い出しました。他にも、クラシックの上等な曲を聴かせていただきました。子ども達のすぐ側まで来てヴァイオリンを弾いて下さったり、チェロとヴァイオリンの音が猫の声に変身したり、槙野さんがお人形さんに変身して歌いだしたり、本当に最初から最後まで楽しませていただき、子ども達も目をキラキラと輝かせて、あちこち目で追っていました。チェロやヴァイオリンは、初めて目にする子どもも多く、このように生演奏、生の声を聴くという事も、そうそう体験出来る事ではありません。子ども達にとって本当に贅沢な貴重な体験・経験だったはずです。しかし、本物に触れさせてあげたいと常に考えている当園の思いから実現致しました。三部「子ども達のお歌」では、子ども達のお歌をお聴かせしました。いつもとは違うお礼拝堂での発表でしたが、物怖じする事なく、気持ち良く一生懸命歌う子ども達でした。
 今回の「感謝の会」で演奏して下さった皆様に心より感謝すると共に、いつも幼稚園の為にお祈りし、様々な面でお助け下さっている教会の皆様にも感謝申し上げます。今後共、宜しくお願い申し上げます。(ダリア 河内 舞)


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