月報「コイノニア」
2010年3月号 No.319


《聖書を飛び出したイエス様・その一六》
    ほなっ。

映画「おとうと」から

司祭 ミカエル 藤原健久

わたしたちは、今は、鏡におぼろに映ったものを見ている。だがそのときには、顔と顔とを合わせて見ることになる。わたしは、今は一部しか知らなくとも、そのときには、はっきり知られているようにはっきり知ることになる。
             (Tコリント 13・12)

 優秀な姉と、そうでない弟。姉は東京で、女手一つで娘を育てあげ、片や、弟は大阪で、仕事は上手くいかず、バクチや借金で乱れた生活をしています。子どものときから叱られ馬鹿にされるばかりの弟、唯一の誇りは、可愛い姪に名前を付けたことでした。けれども、その姪の結婚式に、酒を飲んで酔っぱらい、場を台無しにしてしまいます。親族の中で唯一弟をかばってきた姉も、弟に迷惑をかけ続けられ、ついには多額の借金の肩代わりをするに至って、絶縁を宣言します。行方知れずになった弟と、次に再会したのは、大阪のホスピスでした。行き倒れの末運び込まれたのです。姉は弟の最期を、静かに看取ります。平日の昼間にもかかわらず、映画館は満員でした。昨年の「おくりびと」といい、誰もが避けることのできない「死」を、正面からしっかりと見据え、死を巡る人間模様を丁寧に描き出そうとする良心的な作品に、多くの人々の注目が集まっています。作品の後半、弟の死が近づく場面では、館内のそこかしこで、すすり泣く声が上がりました。私も泣きっぱなしでした。
 弟が死を迎える場面では、厳粛な雰囲気が漂っていました。ホスピスの小さな個室で、姉と姪、ホスピスの職員さんたちに見守られて、弟は亡くなります。職員さんは言います。「よく頑張ったね。あなたがここにいてくれて楽しかったよ、ありがとう。」悲しみだけではなく、感謝と、励まし、祈りが満ちていました。現実の「死」が持つ重みだろうと思います。
 映画のホスピスには、実在のモデルがあります。東京の日雇い労働者の町、山谷(さんや)にある民間のホスピス「きぼうの家」です。貧しい人々が、最期にその人らしく生きられるように、ケアしておられます。運営しておられるのはクリスチャンの方で、聖公会を含めキリスト教各派が応援しています。映画のとおり、財政的には大変厳しい中、献身的に奉仕されているとのことです。
 山田洋次監督は、本当に丁寧に人間を描く方だと思いました。人間の現実の姿から決して離れることなく、けれども人間の善さをにじみ出します。姉も弟も、決して「聖人」ではありません。感情的になって怒ったり、相手を傷つけたりします。けれども弟の最期の時、二人は聖性を帯びています。全てを赦し弟のそばにいてあげる姉は、聖母マリアのようです。亡くなる瞬間まで、冗談を言って人を笑わせる弟は、十字架の上でも人々を気遣ったキリストのようです。これは、この二人の交わりに、神様が降臨してくださっているのでしょう。私達は神様の姿に似せて造られました。私達の内には、神様の愛が備えられています。私達の愛は、一人では育ててゆくことはできません。誰かを愛し、誰かから愛されることで、世の終わりの完成に向けて、私達はキリストの愛に近づいてゆくのです。私達は、一人ではなく、みんなと一緒に成長してゆくのです。
 それにしても出演者が素晴らしい。蒼井優の透明感のある可愛さ、笑福亭鶴瓶の味のある関西弁、そして吉永小百合。容姿の美しさだけでなく、立ち居振る舞いの一つ一つに、深い存在感があります。私は、すっかり遅咲きの、サユリストになってしまいました。


2010年度
受聖餐者総会開催

 2月21日(日)、礼拝堂において受聖餐者総会が開催された。午後12時30分、出席者51名、委任状60通、現在受聖餐者140名の過半数の出席を確認して、議長藤原健久司祭が総会の開催を告げられた。藤原司祭のお祈りと挨拶をもって、一週間前に配布された総会要項冊子『教会のあゆみ』の議事に沿って進められた。まず、2009年度の教勢報告が行なわれたが、特に報告の追加、補足説明、意見、質問はなかった。2009年度の主な活動報告についても追加、補足説明は特になかった。席上、議長より、ボーイスカウト京都第24団(団委員長:長谷川和彦兄)の活動に対し、特に当教会との関わりに於いて、丁重な謝辞が述べられ、出席者一同、拍手でもって謝意を表した。


 【2009年度教会会計決算報告】について、担当の南委員から経常会計及び、特別会計について、「要項」により報告が行なわれた。つづいて会計監査の佐々木亨兄より、「2009年度決算は正確かつ適正」である由報告され、挙手により全会一致で承認された。
[議案1]【2010年度教会会計予算案】についても南兄より、「要項」に添って説明が有り、2009年度の実態に合わせた事、支出は概ね現状維持とした事、特別会計繰り出し金は2009年度予算計上額を踏襲した事が伝えられた。教区献金について、「予算額を超えた献金額は教区に納めることを希望する。」という意見が出された。これについては[教区から要請のある献金額以上を奉献されている方も多くある。当教会は、牧会協力献金を多く納めている。教区に対して多くの奉仕をしている。]との返答が議長より出され、経常会計予算案および上記の説明について、挙手により、全会一致で提案どおり、承認、決定した。
[議案2]教会委員に一名の婦人会役員を加える件(提出者:教会委員会)
 本議案について、議長から提案内容および提案趣旨について、『要項』により説明が行われた。様々な意見が出され、質疑応答ののち、挙手により、採決を行ない、「賛成33」(出席者過半数)で、提案通り承認、決定し、2011年度教会委員選挙から実施することとした。
[議案3]パイプオルガン設置に向けて、具体案を検討する委員会を設置する件(提出者:教会委員会)本議案について、議長から提案内容および提案趣旨について、『要項』により説明が行われた。あわせて、議長から、当該委員会の運営においては、「@一からのとっかかりである、A反対意見も含めて考える、B重要なこと(設置、予算、募金等)は必ず受聖餐者総会にかける」の三点を委員会の確認事項としている旨の補足説明があった。その結果、熱心かつ慎重な協議の過程において、議題修正案が提出された。◎議題修正案(提出者:續木智子姉、賛成者:浦地恭子姉、谷敬子姉)「議題を『将来のオルガンの具体案を検討する委員会を設置する件』と修正する」 議長から、本議題修正案は、修正案の提出要件を満たしているため、本修正案から採決したい旨の説明があり、挙手で採決を行った。採決の結果、「賛成四三、反対五」で、修正議題により、承認、決定した。
 議案全てについて承認されたため、閉会祈祷をもって終了した。
(書記/野本武・菅原さと子)


雑感

年に一回の受聖餐者総会。会議に慣れておられる方もおられれば、全く会議などに出たこともない方もみんな集まっての総会です。「ここで一言言っておかないと一年間何も言えなくなる!」と張りきって発言される方もいらっしゃり、これは大変素晴らしいことだとは思います。ただ、既にお配りしているはずの「総会のしおり」には必ず目を通して欲しいものです。会議はそれを総べて熟読いただいているということを前提におこなわれています。今年のしおり製作は、週報やコイノニアで再三呼びかけたにもかかわらず、どなたもお手伝いには来ていただけず、司祭ご夫妻お二人で作業していただくことになってしまいました。そのあたりにも総会資料の軽視が見られるかもしれません。反省!(し)


ボーイスカウト京都第二四団も総会開催

 2月20日(土)午後6時30分より佐野屋にてボーイスカウト京都第24団総会が行われました。
 議長の南育成会長の進行で、各隊の活動報告、新体制の紹介、会計報告、予算決議を行いました。
 総会後は恒例のすき焼き懇親会。おいしい食事と、楽しい会話に花を咲かせました。


聖マリア幼稚園コーナー

『2009年度を終えて』

幼稚園の桜も咲きはじめたものの寒い毎日。開花も一休みでしょうか。特別の年度が子ども達の歌う「主イエスとともに」の歌で二十四日に修了致しました。また、「♪桜の蕾もふくらんで、もうすぐ学校嬉しいなあ」と、去る3月19日には、20名の子ども達が聖マリア幼稚園を巣立ちました。その日は朝からどんよりしたお天気の中、子ども達は正装して登園。保護者の方々も、笑顔でお越し下さいました。がその中には、目にうれし涙、寂しくなる涙を浮かべて、ご一緒に登園された方もおられました。当園の卒園式は、子ども達もその保護者の方も全員参加で臨みます。これは、この園の子ども達の繋がりや保護者同士の繋がりを大切にしてきたことにあります。日々の送り迎えにはじまり、この園の方針の一つである縦横の関係を紡ぐことで、家族のような関わりをいつまでも大切に続けて欲しいと願っているのです。クラスを越えての関わりは、子ども達や保護者、特に第一子で子育て初めての方にとっては、とても大切な「共有の場」となっています。では、卒園した20人の子ども達の進学先はといえば、10校もの学校に分かれて入学式を迎えます。それは、錦林校10人、三錦2人、四錦1人、御所南1人、松ヶ崎1人、教育大付属1人、ノートルダム1人、立命館1人、同志社1人、横浜に転居しての藤が丘1人と半数が聖マリア幼稚園右代表のような形になります。多くの親御さんは、みんなと一緒である事を望み、入園の時からそのことを思って、集団での見学を希望されることが多々あります。それは、メリーちゃんサークルやpre-preに来られる時から見受けられることです。しかし、当園に入園を希望して下さる保護者の方々に感謝すべきは、しっかりとご自分のお子さんには何が必要なのか、当園の教育理念・方針・保育内容等を理解した上で、みんなに流される事なく入園させて下さっていることです。その為か、子ども達に対してもしっかりとした考えを持っておられる場合が少なくありません。子ども達も、幼く経験不足から、楽しい事に思いっきり揺さぶられたり、困った時に「どうしよう!?」と考えすぎたりしました。叱られた時にはショゲかえり手も足も出せなくなっても、知らず知らずに体中に力の蓄積を計り、本番には何にもめげずやってのけるという場面に、私たちは度々遭遇させられるという、素晴らしい切れ者達が揃っていました。そんな年長組を見て来た年中の子ども達も、隣の保育室で先生と子ども達が織りなす喜怒哀楽の日々を眺めていた花組の小さな子ども達も、憧れを抱いたお兄さんお姉さんへの思いを胸に、大きくなる次のクラスへの期待に心を弾ませているはずです。子ども達の成長素晴らしい!本当に嬉しいものです。又、教会の皆様にお目にかかる事なく去ってしまいましたが、今年度のみで、赤組副担任の北村敦子が退職致しました。4月から新卒先生を迎えます。そして、67人の子ども達と共に新年度を迎えます。この一年、子ども達、先生達そして各々のご家族をお守りお導き下さいました神様に感謝申し上げます。そして今年度も、教会の皆々様のお祈りに支えられて無事修了致しましたことに深く感謝申し上げます。
(園長 ルデア菅原さと子)


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