月報「コイノニア」
2010年6月号 No.322


《聖書を飛び出したイエス様・その19》
   幽霊と、共に生きる。

加藤周一『言葉と戦車をみすえて』、映画「しかし、それだけではない。」から

司祭 ミカエル 藤原健久


平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。             (マタイ5・9)

「たまには真面目な本を読まないと」と、読み始めました。現代の「知の巨人」加藤周一さんの、論文を集めた文庫本です。戦後すぐ、学生の時に書かれた天皇制についての論文から、憲法九条について述べた最近の文章まで収められています。特に中心になっている「言葉と戦車」と言う論文は、秀逸です。チェコスロバキアの民主化運動を、一九六八年にソ連は武力で弾圧しました。チェコの民衆は武力によらず言論によってソ連に打ち勝ちました。この画期的な出来事を加藤さんはあざやかに論評しています。どの論文を読んでも、文章は歯切れ良く、論旨は的確で、私達がこれから歩むべき方向についての示唆に富んでいます。読んでいて元気になる文章です。「賢いとは、こういうことか」と全く感服してしまいました。
 加藤さんについてのイメージをより膨らませるために、晩年の姿を収めたドキュメンタリー映画を見に行きました。そこで私は、大きな衝撃を受けました。加藤さんは、決して「本の世界」の人ではなく、つい一年と少し前まで、平和のために、一生懸命活動しておられた人なのでした。加藤さんは、日本の右傾化傾向に警鐘を鳴らし、平和憲法を守るために、他の著名人らと共に「九条の会」を立ち上げ、精力的に活動しておられました。特に、東京大学で行われた講演会には、「若い学生達に、是非伝えなければ」という気迫を感じました。そのメッセージは、決して抽象的な理論ではなく、感情的なスローガンではなく、客観的な歴史分析と今後の予想、具体的な提言です。「平和じゃなきゃ生きられないでしょ。戦争をやって何をするんですか。何のために戦争するんですか。」加藤さんは、2008年12月に89歳で死去される直前まで、「知識人」である自分の使命として、人々に平和への道を語り続けたのでした。
 映画にはサブタイトルがついていました。「加藤周一、幽霊と語る」です。加藤さんの言論活動の根本には、戦争により死んでいった友人達への思いがあります。加藤さんの元には、友人達が幽霊になって、やってくるそうです。そして加藤さんは、幽霊と語り合うそうです。加藤さんは語ります。「戦前、戦中、戦後と生きていった人達は、意見を変えている。亡くなった人は意見を変えない。変わらない意見を持って、社会を見なければならない。そうしないと本当の批判にならない。」戦争によって殺された友人達、戦争は絶対嫌だと思いながら死んでいった友人達、彼らの思いは決して変わることがありません。その思いを自分の思いとして、加藤さんは語り続けてきたのでした。
 私達は幽霊を恐がり、鎮め、死者の世界に追い返そうとします。けれども加藤さんにとっては、幽霊は生きているのでしょう。幽霊となった友人達の思いを受け止め、対話し、それを現在の社会に活かすために尽力するとき、幽霊は生きてくるのです。加藤さんは、幽霊と語り合うだけでなく、幽霊と共に生きたのでしょう。
 イエス様は、人々を愛し抜き、十字架に架かられました。イエス様は幽霊でなく復活なさいましたが、十字架に架かった時点での、愛の思いは決して変わることがありません。弟子たちはそれからずっと、移り変わりの多い社会に於いて、決して変わらない愛の思いをもって、宣教してきたのです。
 加藤さんは世を去りました。私達が加藤さんの本を読み、平和の思いを受け継ごうとするとき、加藤さんは幽霊となって私達の元に来てくれそうな気がします。そしてきっと平和への道を示してくれるのでしょう。


京都伝道区
合同礼拝を開催

 6月13日、京都伝道区合同礼拝がアグネス教会において行われました。『神さまの恵みに生かされて』という信徒伝道協議会(信伝協)での年間テーマのもと、京都伝道区11の教会から約220名が集まっての聖餐式でした。司式は京都教区主教 高地敬先生・下鴨基督教会司祭 黒田裕先生が、お説教は大阪教区主教 大西修先生がして下さいました。セシリア会(聖歌隊)のご奉仕があったり、チャントが当教会で使っているものとは違ったり、詩編が歌になっていたり・・・と少しずつがいつもと違う聖餐式でした。また代祷では、具体的な施設、地域、色々な事で悲しんでいる方々の為に、また各教会のこの一年間に逝去された方々を覚えてお祈りしました。
 礼拝後は、教区センター オリーブ・パームの部屋に場所を移し、懇親会が開催されました。130名程が聖餐式に引き続き参加されていたそうです。サンドイッチの昼食をいただいた後、五つの出し物(お琴・ブレイクダンス・フラダンス・楽器演奏・ミャンマー舞踊)のご披露・・・。短い時間でしたが、楽しい時間を過ごす事が出来ました。
 当教会から合同礼拝には26、7名(子供含む)が、懇親会には12名が出席されていました。出席された方々からの「ひとこと感想」をご紹介させていただきます。
*昔の友人(他教会)の顔が見られて懐かしかった。
*一緒に活動していた先輩がたくさん亡くなられている事が寂しかった。
*以前も出席した事がありますが、久し振りに出席出来て良かったです。お話なさった主教様のお話も良かったと思います。もう少し、出席された方々と話す機会がほしかったです。
*礼拝も良かったし、懇親会もいろいろ企画されて楽しく過ごしました。
*大人数での礼拝も、時には良いのではないかと思いました。唯、各教会での礼拝がどうなっているのか少々気に掛かります。この様な時に限って、久し振りの方とか、初めての方が来られる様に思います。
*懇親会は色々な得意な『出し物』をご披露下さり楽しかったです。小林司祭、首の骨、お気をつけ下さい。他教会との交わりのよい機会ですから、さらに多くの方にご参加頂きたいです。
 極一部の方々からしか、お声を聞く事が出来ませんでしたが、ご報告させて頂きます。
(信伝協担当:野嶋久暉/末松玲子/浦地愛)


夏のキャンプにご協力ください

夏です!キャンプです!
聖マリア教会は他の教会が羨むほど若いメンバーが多く、野外活動も活発です。
ところがこのところ、夏休みが短くなり、限られた日しかキャンプが開催出来ないところにボーイスカウト各隊や教区など日程がバッティングしてしまい、スタッフも参加者も足りない状況に陥っています。将来教会を背負って立つ子どもたちを教会に足を向ける大きいチャンスです。一部分でも結構です。ご協力お願いします。


日曜学校北小松キャンプ

7月17日(土)〜18日(日)

復活学園北小松学舎のキャビンを使って宿泊します。琵琶湖での水浴など危険も伴うので、ひとりでもたくさんの目が必要です。
(参加費)小学生5000円・スタッフ1500円 
(問)浦地愛



ジュニアチャーチ芦生キャンプ

7月24日(土)〜25日(日)

当教会芦生キャンプサイトは自然いっぱいの素晴らしい環境です。由良川で泳いだりの自然の中での礼拝を体験してください。 
(問)吉村伸


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