台湾聖公会訪問記  司祭・ペテロ 岩城 聰


 3月31日から4月4日まで、大阪教区台湾交流委員会の訪問団(竹林徑一司祭、奥村貴充兄、および岩城)の一員として台湾に行き、聖公会の11の教会および大学、教区事務所を訪問すると共に、今後の具体的な交流の見通しについて話し合うことができました。無事の帰国と主にある兄弟姉妹としての交わりを深めることができたことを、何よりもまず神に感謝いたします。
 台湾聖公会は、正確には米国聖公会第[管区・台湾教区で、米国聖公会(ECUSA)に属しています。台湾の面積は九州よりも少し小さい程度の島ですが、そこに全部で13の教会(聖ヨハネ大学チャペルを含む)、2つの伝道所、および教区事務所と付属のチャペルがあります。訪問団はそのほとんどを巡ることができたわけです。台湾聖公会(頼栄信主教)は大きく南北に分けられ、北部地区の中心はもちろん台北にある聖ヨハネ大聖堂で、南部地区の中心は高雄にある聖テモテ教会のようです。この聖テモテ教会と聖ペテロ教会、天恩堂(グレース教会)の3つでだけ台湾語の礼拝が行われており(台湾語だけで礼拝を行っているのはテモテ教会のみ)、他の教会では国語(北京語)での礼拝、およびところによっては英語の礼拝が行われています。4月2日の主日には、竹林司祭が高雄の聖テモテ教会、奥村兄が嘉義の聖ペテロ教会、岩城が岡山の諸聖徒教会にそれぞれ分かれて出席し、日本聖公会からの賓客として歓迎されました。礼拝用式は、基本的にはアメリカ聖公会のものを用いているため、日本聖公会の礼拝(聖餐式)とほとんど違わず、言葉の違いはあっても、容易に溶け込めるものでした。教会によっては、青年を対象とした賛美礼拝を取り入れ、二回に分けて礼拝をしているところもありました。
 高雄の聖テモテ教会、台中の聖ヤコブ教会のように、大きなビルを建設して、その中に会館や幼稚園(テモテ教会は幼稚園ではなく、土曜学校のようなプログラム)を持っているところもあり、経済的な運営にはかなり工夫を凝らしている様子がうかがえました。ヤコブ教会の幼稚園は園児が400人以上おり、台中では屈指の高い評価を受けているとのことでした。他にも、高雄の聖パウロ教会、台南の天恩堂、台北の牧愛堂(良き羊飼い教会)などに、100人以上の園児を抱える立派な幼稚園があり、良い働きをされているようでした。
 新たな宣教課題に取り組む動きも見られました。高雄の聖テモテ教会での土曜学校は、幼児から中学生まで、スポーツや音楽、工作、絵画、補習などの活動を小グループで行い(有料)、地域の子どもたち70人以上を集めているということで、幼稚園児の減少という日本と共通した課題を持った台湾での新しい取り組みとして注目されました。また、台北の牧愛堂では、地域の独居老人のための配食サービスを始めています。170人ほどの老人を対象とし、50人ほどのボランティアが参加し、配食だけでなく、病院への付き添いなどヘルパー的な働きもしているようです。私が感動したのは、基隆の聖三一教会の取り組みでした。この教会は貧しい街区にあり、失業、離婚、自殺者が後をたたないとのこと。10年ほど前までは活動が低調で、信徒は5人程度に減少していたそうですが、その後着任した牧師のもとで、地域の貧しい子どもたちのためのさまざまなプログラム(学童保育のようなもの)を始め、5人、10人と子供が増え、今では約30人の子どもが集まっています。その中から、教会の礼拝に出席する子供も出てきて、10人ほどが洗礼を受けたとのことでした。宣教の原点を見る思いがしました。
 中国との関係を巡って微妙な政治的問題が存在しているため、聖公会はどちらかというと政治問題からは距離を置いているようです。その他、様々な問題について報告をしなければならないと思っていますが、まずは、訪問の雑感のみを記させていただきました。

写真・左下 高雄の聖テモテ教会 
写真・右下 台北の聖ヨハネ大学の学長、チャプレン、宣教師とともに