ロウソクの光

 その地方で羊飼いたちが野宿しながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。“恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。・・・”」ルカによる福音書2:8〜11

 私はクリスマスと聞いて思い出すものはたくさんありますが、その中で一番大好きなものが「ロウソクの光」です。ロウソクは昔から、人間に特別な魅力を与えてきました。

 昔々ゲルマン民族は、12月25日から1月6日までの間、悪魔や悪霊がはびこり、動き回ると信じ、大変恐れていました。その当時のヨーロッパは、とてもとても暗かったのです。キリスト教会は彼らに、「光による闇への勝利」というイメージを用いてイエスの誕生を宣べ伝え、人々の魂に訴えかけました。そして人々は、羊飼いたちのように「恐れるな」の声を聞き、恐れの心から解放されていきました。

 ロウソクの光は、最初は小さく、ゆっくりと大きく輝きます。都会の夜のギラギラした、すべてを均一にくまなく照らす光ではなく、優しく、柔らかい光です。すべての闇を消し去りはしません。その光はわたしたちを、わたしたちの中にある闇も含んで、すべてをあたたかく包んでくれます。イエス誕生の夜、一晩中辛い夜を過ごしていた羊飼いや羊たちを照らした光も、こうした光でした。

 キリスト教会にとってロウソクは、イエスのシンボルです。ロウソクの光は、ロウを燃やすことで生じます。ロウソクは自らを燃やしながら光ります。ロウは、イエスがわたしたちへの愛の故に、十字架にかかり、ご自分のいのちをささげてくださったことのシンボルです。

 ロウソクの光はわたしたちの祈りのシンボルです。ロウソクの炎は、わたしたちの祈りの手に似ていませんか。そして、イエスは、わたしたち自身がこの地上で、ロウソクの光のように輝くことを願っています。

 12月24日夕刻から、多くのキリスト教会においてクリスマス・イヴ礼拝が行われ、キャンドルライトサーヴィスといって、ロウソクを使った美しい礼拝が守られます。

 皆さんは何か、恐れに捕らわれてはいませんか。皆さんの心に恐れはないでしょうか。健康・仕事・人間関係・老後・自分の性格・子育て・夫婦・・・・・原発問題。解決しなければならないこともたくさんありますが、まずロウソクの光を見つめてみませんか。

 今年のクリスマス、教会でロウソクの光を見つめながら、お祈りしてみませんか。
 自宅でロウソクの火を見つめる時は、火の用心。

日本聖公会 石橋聖トマス教会牧師 
   司祭 アンデレ 磯 晴久