Special

英国カンタベリー首座主教会議に出席して 神戸教区 主教 古本 純一郎

南アフリカ聖公会女性会議 正義と平和委員会 三木 メイ

朝鮮半島の南北統一と平和を求める平和会議 司祭 小林 聡







Special


2002年4月10日〜17日
英国カンタベリー
首座主教会議に出席して
 
主教 ヨハネ 古本 純一郎

 よく「首座主教として何かと大変でしょう」と言われて来ましたが、自分の器に合わせて無理をせず、可能な限り職務を11教区の主教さんに分担していただき、主教会と総会、常議員会の議長など、他の方に代行してもらえない数少ない職務だけを果たした程度のことで、管区事務所総主事を始め多くの方々の助けを得て、とにかく任期を無事に終えることができたことは感謝でした。

 首座主教でしかできないことの一つが当然のことながら毎年招集される「首座主教会議」への出席でした。お陰で昨年と今年の2回、参加することができました。昨年の3月、米国のノース・カロライナ州、カヌーガでの会議の帰途、展望台に上ったそのニューヨークの世界貿易センタービルが、その後同時多発テロで崩壊するという痛ましい事件が起こりました。今年は4月10日から17日までの1週間、英国カンタベリー大聖堂の境内に、この度建設された「インターナショナル・スタディー・センター」を会場に世界聖公会38管区の首座主教が参加して開かれまして、家内同伴で出席させていただきました。会場のセンターは、2階建ての木造建築で、宿舎と食堂、会議室を備え、宿舎のどの個室からも大聖堂が間近に望まれるように設計されていて、そのような素晴らしい環境の中で、1週間生活することが出来ただけでも首座主教にしていただいたお陰だと感謝いたしました。

 今回は特にこの10月末で引退されるジョージ・ケアリー大主教の主催で、カンタベリーで開かれたこともあって、会期中にも大主教ご夫妻に感謝と賛辞を表わす会合が幾度か持たれました。今回も、温かく気さくなアイリーン夫人は、同伴の主教夫人のために種々なブログラムを用意して歓待してくだざいました。今回の会議(英語では“ギャザリング”ですから「会合」と言うのが正しいでしょう)の主題は「和解」で、特に世界と、聖公会内に生ずる緊張・対立の中で、神が私たちに託された和解のミニストリー(使命・職務)を強く意識して、終始祈りと交わりの中で会合が進められました。

 1週間のうち、主日を除いて毎日のスケジュールは、朝の礼拝に続き和解をテーマに聖書研究で始まり、その後グルーブに別れて各管区の持つ具体的な諸問題について話し合い・分かち合い、祈祷会。正午から大聖堂のチャペルで聖餐式。昼食の後、午後の会合。毎夕の礼拝は、聖歌隊による大聖堂の唱詠晩祷に参加。夕食後、夜の会合と就寝前の祈りで終わるというものでした。会合と会合の間に休息するか、次の会合の準備をするかというかなり過密な日程でした。

 会合に於いては、全世界の聖公会の内部における諸問題、政治的、経済的、神学的格差と対立。中東、殊にイスラエルとアラブにおけるテロと紛争、宗教間の対立と迫害、南半球に於けるHIV/AIDSの猛威という危機と分裂等の実態を学習し、教会は今や議論をしている時ではなく、真剣な祈りと緊急かつ具体的な実践・行動が要請されていることを深く認識し、全聖公会は和解と援助において正義と平和を求めるあらゆる宗教、政府、NGO等の活動と積極的に協働するようにとの声明を出しました。

 3回の会合にわたり、各管区が直面する諸問題について発表されましたが、幸か不幸か日本聖公会ほど平和で恵まれた管区は少ないことを感じさせられました。しかし同時に、教区・教会の数に対して日本聖公会ほど信徒数の少ない管区はないことも知りました。いろいろの問題に頭を突っ込み、議論することよりも、何よりも伝道する、福音を宣べ伝えるという教会の本来の使命にもっともっと私たちは力を注ぐべきではないかと考えさせられました。

 先に出された「日本聖公会の現状と将来に関する主教会の見解」の中で、「我々聖職、信徒はあらゆる意味での傲慢さを捨てて、《時が良くても悪くても》み言葉を宣べ伝えなければならない」と勧められている言葉に素直に従いたいと思います。
(前首座主教、神戸教区主教)




Special


〈海外出張報告@〉
    南アフリカ聖公会女性会議
  テーマ : ANGLICAN WOMEN BREAKING THE SILENCE
正義と平和委員会委員 三木 メイ
 [教会のヴィジョンと会議の目的]
 この女性会議は、南アフリカ聖公会管区(CPSA)内の女性に対する有効な支援のネットワークを作るための第一歩として、3年間の準備期間を経て初めて開催された。l999年7月にCPSAの大主教が率先して女性団体のリーダーたちを集め、会議開催の可能性を探る話し合いが行われたことに端を発しているので、この女性会議は“Archbishop's baby”とも言われている。

 大主教は同年の管区総会において、多様性における一致を求める旅へと歩み出すというヴイジョンをもつよう人々に説いている。現代社会においては、さまざまな「違い」が他者を疎外し不利な状況に立たせ、関係の破れと痛みを生じる結果をもたらしている。教会の応答として人々の苦悩を理解し、そのニーズに合わせて変わっていく知恵によって神の愛を表していこうというのである。南アフリカの国々は差別や憎しみや人権侵害や苦難に対する無視によって傷ついている。それゆえCPSAは人々の関係の破れを知り、痛みを感じ、ニーズを聞き、その傷を癒すことによって自分たちの共同体としての全体性と十全な人間性を取りもどすために、この旅に乗り出すのである。

 教会は、社会においても教会においても周縁の地位に置かれた女性の状況に悩んできたが、特にアフリカの女性たちは貧困ゆえに人間の尊厳を傷つけられやすい状況にある。そしてレイプやドメスティック・バイオレンスや職場での差別の潜在的被害者でもある女性は教会員の半数以上を占めている。CPSAは一致をめざして旅する教会として、女性たちに沈黙をやぶる機会を作ることの重要性を認め、女性会議を開催するに至った。女性たちの声を聞き、その成長を促すことは教会と社会の変革のための最も生産的で効果的方法であると捉えている。また、この会議に併せてCPSAの女性の司祭按手実現10周年の記念礼拝を行う。実際的な準備と運営は多数の女性信徒と聖職による実行委員会によって、長年の討議を積み重ねて進められてきた。

 「会議の目標」
 (1)女性たちの経験─その可能性や霊性が制限された経験─を互いに分かち合い知ること。
 (2)女性たちのアイデンティティーを明確にすること。
 (3)女性たちが社会における諸問題に対して応答できるよう理解力を深めること。
 (4)南アフリカ聖公会の女性の司祭按手10周年を祝う礼拝を行うこと。

 [会議の内容]
 会議は5月12〜16日、ヨハネスブルグ国際空港近くのルーテル派の施設であるKEMPTON PARK CONFERENCE CENTERで行われた。参加者は、CPSA管区内7カ国19教区から約140名、黒人・白人・カラードと呼ばれる人たち等、言語は(基本的には英語)約14種、年齢は20歳前後からおそらく80歳前後まで幅広い層の女性たちが集まり、まさに多様性に富んだ会議であった。各教区からの代表者は基本的に6名ずつ、MOTHER’S UNION、聖公会女性連盟(AWF)、女性の聖職、女子学生、若い女性のグループ、COMMUNITY WORKERから選ばれている。会議運営は実行委員たちによってかなり細部にわたる配慮がなされ、特に互いの文化、言語、立場、状況、意見の違いを尊重しあうよう促し、礼拝の方法や討議方法にもさまざまな工夫がなされていた。数名の女性の聖職が会期中のカウンセラーとなった。会場にはより明解な目的とヴィジョンが掲示された。「CPSAの女性たちを力づけるプロセスを組み立て、男女の平等を実現するために教会と社会に変化をもたらす結束をうちたてよう。」意見は真剣に活発に交換され、礼拝は生き生きとした喜びに満ちて、盛り沢山のプログラムは進行した。

 プログラム前半では、何が女性の可能性を妨げているかに焦点をあてながら、参加者たちの信仰生活における経験、特に社会や教会の中で疎外されたり失望した経験、そしてそれを乗り越えた経験などが分かちあわれた。14日朝には小グループでルカ福音書の「マルタとマリア」を読み、日本と同様に男女性別役割意識に苦悩する現状を語り合った。その後、霊性や潜在的な力を見いだすためのパネル・ディスカッションや8つのワーク・ショップが行われた。その日の夜は文化的交流として各教区のメンバーが得意の歌や踊りやドラマなどを賑やかに披露し、楽しい交わりの時を過ごした。15日朝にはサムエル記下13章の「アムノンとタマル」について小グループで話しあった。そして「社会問題への挑戦」として女性の貧困克服の問題、エイズや女性と子供に対する虐待の問題等についての講演やビデオ鑑賞の後、教会は何ができるかについて話し合った。

 南アフリカでは女性と子供に対する性的虐待(レイプ)が近年特に多発しており、HIV/エイズ感染の増加の一因となっている(人口の約8%)という深刻な悩みを抱えている。だからこそ「沈黙」の文化を打ち破り、教会女性として声をあげてこの状況を変えて行こうという参加者の希望が語り合われ、各教区にジェンダー・デスクをおいてネットワークを作り、継続的にこれらの問題に積極的に関わっていくことが決められた。16日には、プレトリアの大聖堂において、女性の司祭按手10周年記念礼拝が行われた。

 [日本聖公会との関連について]
 今年2月7日付けでケープタウンのンドゥンガネ大主教からNSKKの総主事宛に今回の女性会議開催費用の募金申請の手紙が送られ、それに対してNSKKは重債務国への基金から百万円を送金している。加えて現地の人々との交流を深めるために渉外主事の丸山悦子さんと私が派遣されたのであるが、正義と平和委員会として新しくジェンダーの問題に取り組みを始める今年にこのような女性会議に参加できたことは、時にかなって学ぶこと多く、今後の活動にいい意味での影響を及ぼすことになるだろうと思われる。議題や決議内容そのものについては、南アフリカ聖公会独自のものであり、NSKKとは直接的関連はない。
*    *    *
 今回の女性会議は男性聖職である大主教の提唱と奨励によって実現された。それは明確な教会のヴィジョンのもとになされた教会女性に対する支援の一形態である。NSKKでもこのようなことは今後期待できるのだろうか?

 ジェンダーの問題は女性と男性の問題であって、女性の働きや痛みに対する男性の理解やサポートは欠かせないのだが…。
 NSKKでは組織や年齢の枠を越えた女性会議はまだ行われていない。今後、日本の社会や教会での女性たちの現状を踏まえた上でNSKKにおいても女性会議を開催し、女性をエンパワーできるネットワークを作ることができればと考えている。CPSAの多数の女性スタッフと暖かく迎え入れてくれた参加者の方々に感謝している。




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〈海外出張報告A〉
朝鮮半島の南北統一と東北アジアの平和を求める聖公会平和会議
─2002年4月20日〜26日─

司祭 小林 聡

 はじめに
 米国聖公会第73(定期)総会決議に基づき、米国聖公会が提唱した今回の会議には、米国聖公会から7名(米国聖公会正義と平和委員会議長リチャード主教、聖公会ピース・フェローシップのメリー・ミラーさん、総会執行部評議委員のルイ・クルーさん、米国聖公会ニュースサービス編集長のジェームスさん、米国聖公会正義と平和部門主事のブライアン司祭など)、日本聖公会から5名(輿石総主事、丸山渉外主事、沖縄から崎浜秀松さん、立教大学チャプレンの香山司祭、小林聡司祭)が参加。大韓聖公会からは終始お世話をしてくださった方々を含めて10人以上が入れ替わりプログラムに参加した。

 会議に臨むにあたり
 歴史的に初めて大韓民国(韓国)において日本、米国、韓国のそれぞれの代表が集まり平和についての交わりを持つこととなったわけだが、それは数年前の沖縄で開かれた「沖縄週間プログラム」に米国、韓国からの参加者を得て行われたこととつながっている。今回のプログラムは大韓聖公会側が用意してくださったプログラムを共に体験し分かち合うという内容だった。今回の会議の準備が始められた昨年から今にいたる世界の状況はここで振り返るまでもなく、私達に平和とは何かをするどく問いかけ続けている。ブッシュ大統領が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のことを「悪の枢軸国」と名指しした後のことでもあり、いやおうなしに朝鮮半島の緊張関係が世界の平和問題とつながってくることを感じていた。

 痛みを分かち合うことを目指したフィールド・トリップ
 パク・キョンジョ神父(大韓聖公会正義平和司祭団団長)の「米軍基地と環境汚染」という今回の会議の導入としての講義では、もはや基地が人権を蹂躙するだけではなく神の被造物であるこの大地への冒涜であり、韓国では在韓米軍への訴えがいかに困難なことであるかが語られた。一同が訪れた梅香里(メヒャンリ)米軍射撃場はソウル特別市の南西30キロの海岸沿いに位置する。1952年から50年間、一日13時間400回に及ぶ爆撃練習は、村人のあらゆる生活権を奪っていった。誤爆で殺された住民の補償などない。自ら二度も逮捕され生活のすべてを反基地闘争にささげるチョン・マンギュさんは言う。

 「住民が隣接する地域での爆撃練習は実戦感覚を求めての練習だ」。韓米間の不公平な条約により韓国は実質米軍統治下にある。在韓米国大使館を訪れた際、米国大使は、米軍は韓国軍と共に北の脅威に立ち向かっていると語っていた。しかし韓国政府自体が米軍指揮下に置かれている現実はとても主権国家とは思えない。射爆場の端に目印の黄色い旗が立ててある。マンギュさんがそれを引きちぎり逮捕された2001年6月、全国から3500人が梅香里に集まり、射爆場を人間の輪で囲んだ。今では毎日途絶えることなく人々がここを訪れる。あらゆる人々がつながっていく。それは他の国での軍隊による抑圧に苦しむ人ともつながっていく。北と南が38度線を境に対峙している板門店にある共同警備区域(JSA)。イムジン川を越えて入っていくその場所に私たちは、アメリカ人主教の参加の為、パスポートを見せずに入ることとなった。ここは年間1000人以上の観光客が来るという。その多くが退役軍人らしい。ここでの観光は、明らかに北の脅威に対する防衛の必要性を訪れる者に刷り込んでいくねらいがあるが、日本からの修学旅行生があの場所でどのような気持ちで北の大地を眺めていたのかが気になった。ソウルからここは約40キロ。日常的にテレビから流れる米軍放送は否応なく防衛という名のもとに軍による緊張感を感じさせる。

 ソウルから北へ車で1時間。90を超える在韓米軍基地の一つスタンレーヘリコプター基地の目の前に「マイ・シスターズ・プレイス」はある。基地の周りにあるクラブで働く200人を超える女性たちの心と体のケアをしている場所である。女性たちの多くはロシアやフィリピンから来ている。スタッフのユ・ヨンニムさんは女性たちが人権を蹂躙されむごい殺され方をしても韓国では訴えることも出来ず、政府は謝罪要求すらもしたことがないという。「韓米相互防衛条約」は韓国の領土、領海、領空を無条件、無制限、無期限に米国の軍隊に譲渡することを規定している。つまり、米軍、米兵、軍属の犯罪は韓国の法的管轄権外におかれている。

 聖公会大学でのシンポジウムと課題
 フィールド・トリップの後、2日間にわたり5つの講義とそれへの応答、分かち合いを行った。朝鮮半島における在韓米軍の政策的意味、日本の右翼化、中国脅威論について、そして市民ネットワークと平和運動における教会の役割について学び分かち合った。その中で特に私の記憶に残ったことを述べたい。このシンポジウム自体が同時通訳をつけ、3ヶ国語に翻訳されたテキストを事前に準備し、それぞれの講義が平和に向けた意気込みを感じさせられるものであったことを考えると、韓国側の痛みにみちた叫びのようなものを感じさせられた。ブライアン司祭は講義への応答の中でブッシュ大統領の言う「自分の側かテロの側か」の二者択一の選択をこえる必要を語られた。今回のフィールド・トリップで聞いたことを自国に帰って語ることの難しさを米国代表の一人が語られたが、韓国側からは自国が行っていることへの責任と、疎外された人々の声に聞き自分の現場で具体的に行動していくことの大切さが語られた。崎浜さんは南北分断を目にし、はらわたを痛める共感が平和への連帯を強めると発言された。また香山司祭は日本と朝鮮半島の歴史を振り返る中から罪の告白の大切さを語られ、米国聖公会代表に対して在韓米軍の存在に対して謝罪すべきではないかと問を投げかけられた。

 教会が平和を求める動きに関わる時、それぞれの立場、レベルから働きかけることが出来る。シンポジウムの中で特に関心を持ったことは、地域や各教会レベルでの平和への取り組みがグローバルな視点を持ちつつ取り組まれ、それらがつながっていくことなしに国際会議は意味をなさないということだった。米国代表がどのように自国で伝えたらいいのか分からないと言ったことは今まで管区レベルでの出来事が各教会に伝わらないことと一緒のことである。しかし問題の根は朝鮮半島の緊張を維持し増幅させているのは私達日本に住む者の責任でもあると言うことであり、私達の暮らしの結果が板門店で顕在化しているに過ぎないということである。そして教会はやはりそのことに気づかず見て見ぬ振りをしてきた罪を告白し、痛みを負うものの叫びに耳を傾けながら、みずからの生活の場で平和を作り出す行動を地道にしていくしかない様に感じた。

 最後に、全聖公会は過去のあらゆる植民地政策に対する謝罪をしなければ本当の意味で和解は出来ないことを今回改めて感じた。初めての韓米日合同会議であったので、なかなか打ち解けて話せるまでにはいかなかったが、香山司祭の投げかけに応答できなかった今回の会議は、私達がグローバルなレベルでの私達の罪の告白と謝罪という和解に向けた課題の前に立たされることとなったように感じた。
(京都教区司祭)
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