サンパギータ <126号> 2008 03・04  
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サンパギータ
125号



■カパティラン設立20周年に寄せて


  弁護士 松 浦 信 平


今年、カパティランは設立20周年を迎えるという。
丁度20年前、私は交換留学生として、韓国の大学にいた。当時、韓国の民主化運動は最高潮に達しており、「軍部独裁打倒」を叫ぶ学生と警官隊が、正門前で、激しい衝突を連日繰り広げていた。バブルに浮かれる日本から来た私には、「新しい時代をつくる」と目を輝かせて語る韓国の学生たちの姿は、ほんとうに衝撃的だった。韓国での生活では、日本が植民地支配を通して隣国に犯した罪の深さが突き刺さってくる出来事にも、多く出会った。
自分の生まれた日本という国を、少しでもアジアの友人に誇れるものにしたい・・・との想いを抱いて留学生活を終えた私は、組織の論理に押しつぶされずにそんな想いを実現する職業として、弁護士となる道に進んだ。
弁護士となって、既に13年が過ぎた。「アジアの中の日本」というテーマについて自分に何が出来たか・・・、振り返ってみると、正直、心もとない。
東京郊外の比較的小さな町にある私の事務所には、種々雑多な事件が舞い込んでくる。目の前の事件の動きに、ときに翻弄されながら、「次の一手」を打っているうちに、瞬く間に歳月が過ぎていく。いろいろないきさつがあり、近ごろは、この地域での刑事司法や少年司法の分野での活動が多くなりつつもある。
それでも、フィリピンや韓国をはじめとするアジアの女性たちの事件には、自分なりに特別な想いをもって取り組んできた・・とは言える。
あるフィリピン人女性が日本人夫から受けていた仕打ちは、奴隷扱いそのものだった。異国で孤独に生きる彼女にとって、助けを求めて逃げ出すことが非常に難しいことを、夫は間違いなく計算に入れていた。
あるフィリピン人女性は、日本人夫に離婚届を偽造され、幼い子どもとともに置き去りにされた。夫は、自分の犯罪行為の責任を追及する力は妻にはないと見くびっていた。
ある韓国人女性は、日本人夫との別居の際、子どもたちを力づくで夫に奪われていた。「子育てを放棄した。母親の資格はない」と言い張る夫から彼女が子供を取り返すまで、2年もの歳月が費やされた。
グローバリズムという化け物に翻弄され、故郷を離れ海を越える人々(やその子供たち)が強いられるたたかいの苦しさは、計り知れないものがある。弁護士の力が役立つことはもちろんあるが、彼女たちの道を切り開くために、どうしても必要なのは、「人々のつながり」を生かした多面的な支援だと、つくづく思う。疲れ切った心をケアしてくれる存在。住まいの確保、医療、育児など生活上のさまざまな問題への対処法を教えてくれる存在。それらが弁護士ともつながりあって、少しずつ道が開けてくる。人々をつなげる本当に大事な仕事を、たくさんの困難の中で、カパティランがしてくれている。そのカパティランを、たくさんの方々がつながって支えている。
カパティランとつながるこの小さな町の小さな法律事務所は、いつでもスタッフからの電話を待っています。
設立20年を迎えたカパティランが、多くの方々の支えのもとに、ますますよき働きをされますように! 


カパティラン運営委員会は現在7名のメンバーで構成されており、毎月定例の委員会でカパティランの運営について協議し、またイベントの企画、提供をしています。各メンバーのカパティランに対する思いなどを順番に掲載いたします。

■カパティランと定款・規約
     
  カパティラン運営委員 司祭 佐々木 庸


カパティランの運営委員として、特にカウンセラ−の資格も無いのに20年の歴史の三分の一に当たる6年も務めさせて頂いて来ました。
人間でいえば20年は成人、大人ということになります。そこでこれを機会に感謝礼拝、後援会組織作り、記念チャリティ−コンサ−トなどが企画されています。
私は司祭なので感謝礼拝に携わるのはあたりまえですが、「定款・規約」作成にジ−ン・ペンゴスロさん、笹森田鶴司祭とともに関わらせて頂いています。現在は、他の組織の物を参考にさせて頂きながら英語と日本語の間でカパティランの実情に合ったものをと頭を悩ませております。
20年間、現場のスタッフ(カウンセラ−)と運営委員会と事務局が力を合わせてやって来られたことにまず、敬意を表したいと思います。
しかし、たとえば、運営委員の任期すら決まっていないのは、いかに和気あいあいとした良い時代であったとしても、もう少し明文化することは悪いことではないのではないかと思っています。
但し、それは「石の板」に刻んだ文字で人を不自由にするものではなく、キリストの愛の実現を目指し人を生かす「人の心の板」に書きつけられた「定款・規約」であろうとすることは言うまでもありません。
運営委員会の皆さんに検討して頂き、20周年記念感謝礼拝に引き続き「第1回総会」を開催出来ればと願いつつ作業を進めています。


■私たちは今もここにいます

  カパティラン カウンセラー 河島 ローズ


ハイ、私達は元気でやっています。

私の心に刻まれている“I WILL SURVIVE”という古い歌のようにカパティランも生き続け20周年を迎える事となりました。

あれは長男がまだ9歳の小学生だった頃、私はカパティランの最初のカウンセラーであり、ケースワーカー、宣教師、広報を一人でこなすタフな若い女性と出会い、友人になりました。そして彼女との友情が私をボランティアに導いたのです。その後、活動に参加したり、家族のため、働く母としての責務のために休止したりしていました。時には日本特有の本音と建前が、私を精神的にも肉体的にも追い込むこともありました。それでも私達の友情が互いの人生の苦難を乗り越えさせ、カパティランを通じてより絆を深め、新たな力と責任をもって常に働き続けてきました。

人は誰でも生きていれば問題にぶつかります。例外はありません。それが生きるという事でしょう。違った家庭環境、育ち方をしてきた事によって違う価値観、性格や望みを持った人々と毎日係わっていくのです。争いや揉め事は日常茶飯事です。それが起きた時私達はどう対処するでしょう? ある人は絶望と無力からすべてを終わらせるために自らの命を絶ちます。多くの人は誰かに打ち明け、助けを求めます。そして多くの人がカパティランに頼るのです。

コミュニケーションは技術です。カウンセリングも同様で、ただおしゃべりするのではありません。効果的なコミュニケーションとは聴く能力と感情をきちんと表現する能力から成り立っています。カパティランでは、耳と目と心を使い相手重視の支援的なカウンセリングを行なっています。

私達はクライアントの心の奥底にある感情的な事柄をあからさまにするより、現在の生活情況に注目し支援していく事を心掛けています。その人を悩ませている事を言葉にすることによって問題を浮上させます。その際、カウンセラーはクライアントが問題に対してどう感じているかを語ってもらい、深く考慮する機会を提供します。ゆっくりと考察し明確化することによって彼らは悩みを軽減させていくのです。

カウンセリングは非常に難しい作業です。複雑な心理の人と話すことは、教育だけでなく経験と共感が必要とされます。カウンセラーはクライアントの人生を肯定的なものへと変えるために彼らの心に語り掛けます。自ら決断を下すという事はクライアントにとって辛い作業です。そのため多くの忍耐と心からの思いやりの言葉が必要不可欠となるのです。

カウンセリングでは、特に電話相談では声に気をつけなければなりません。それはクライアントの怒り、不安、抵抗、恐れ、苛立ちを和らげる非常に大切な役割を担うからです。無理に話させるのではなく、自由に語ってもらうことによって彼らがどのように感じているかを共有することは、彼らの人となりを理解する手助けになります。クライアントが信頼できると感じられるような声であることが必要です。また、彼らの母国語を使うことも大切です。理解できる言葉は安心感を与えます。カウンセラーは彼らの問題を解決する立場ではないのですから、偉そうな態度は禁物です。カウンセリングのゴールはクライアントが自らを見つめ、分析し自分自身を理解することなのです。

時にはカウンセラーが自身の信念を話す必要が出てきます。私の場合、価値観の相違の際起こります。問題を詳しく話し合った後、クライアントに見解を尋ねられる事がありますが、もし家族関係などの私にも関連がある事柄ならば、私自身の価値観を述べます。それを押し付けることなく、相手にとって誠実に必要最小限に留めます。私はリスクを承知で自らの価値観を明らかにする時、カウンセリングが仕事の域を超えた人間的な作業であるように感じられます。

自分自身の価値観をクライアントに話すことには危険があり、そのことはよくわかっています。が一方で、相互の信頼関係をコミュニケーションの中で築いていくことができます。誠実に相手を尊重する姿勢があるかぎり、互いに学び合いより効果的な対話となるのです。

最後に、最も大切なことはどのようにクライアントが自分を見つめ直すか、なのです。私と話した後、もしクライアントが“決断を下そうか? 行動を起こそうか? 選択権や責任は自分にある”と考えるようになったら、私は暖かく見守りながら、微笑んで言うのです。頑張ってください、と。

もしもし! こちらはカパティランです。


■電話相談件数
  <1月> 143 件
  TOP3 (1) DV関係 13   ビザ関係 13   (3) 子ども関係 6
  <2月> 172 件
  TOP3 (1) 婚姻関係 17    (2) 医療関係 14   (3) ビザ関係 12
 
■ケースワーク件数
 <1月>10件 <2月>13件

■面談件数
  <1月> 3件 <2月>8件

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