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聖パトリック教会1957年伝道開始
2013年11月17日発行 第254号
牧師 司祭 バルナバ 菅原裕治
蒔かれた種の譬えについての解説を語った後、イエス様は、他の譬えを語ります。そして最終的に神の国の
譬えへと展開していきます。
最初の譬えは、「ともし火を持って来るのは、升の下や寝台の下に置くためだろうか。燭台の上に置くためで
はないか」という譬えです。この譬えの意味は、そのままの内容です。部屋を照らすための明かりを、わざわ
ざ光が隠れてしまうような場所に置いてはならないということです。これは当たり前のことですが、現実の世
界では、この当たり前のことが、行われていないのではないと思います。神様から見て、光である事柄が、人
間の考えや思いで隠されてしまっていないか、イエス様はこの譬えを通してそう問いかけています。
次は、「隠れているもので、あらわにならないものはなく、秘められたもので、公にならないものはない」で
す。これは、教訓のような譬えです。イエス様の時代も現代も、人間は知恵や技術を使って何かを隠そうとす
る場合があります。そして一時期は、隠せてしまうかもしれないが、ふとしたことで明らかになってしまうも
のです。しかし、この譬えは、そのようなこと以上のことを語っています。誰も見ていないとしても、神様は
見ているということです。神様には、人間の行うことはすべてが明らかだからです。
次にイエス様は、「聞く耳のある者は聞きなさい」と語ります。聞き従うことに関して警告の意味を含めた譬
えです。耳は聞くものですが、本人に聞く意思がなければ、聞いていないのと同じです。だから、聞く耳を持
ちなさいという表現になっています。
この警告の言葉の後、イエス様はさらに「何を聞いているかに注意しなさい」と再度注意を促したのちに、譬
えを続けます。最初に「自分の量る秤で量り与えられ」とありますが、それは人間があらゆることについて、
何かを考え、判断した時、同時に、その判断でその人自身も、その考えや判断で評価され、認識されるという
ことです。しかし、神様の視点からすれば、人間の判断・予想通りに物事が起こるわけではなく、それらを超
えた事柄が発生する。「更にたくさん与えられる」とイエス様は語っているのだと思います。
そしてそのような人間の量りを超えた何かが起こるからこそ、「持っている人は更に与えられ、持っていない
人は持っているものまでも取り上げられる」という言葉が逆説的に響いてきます。この部分はイエス様の時代
の経済状況を示したような譬えです。豊な人、あるいは強い人がより豊かになり、貧しい人あるいは弱い人は
より貧しくなるという意味です。今日の社会でも同じかもしれません。もちろん、ここにあるのは逆説です。
それは、人間の量りで、すなわち人間的な視点で、どんなに自分の豊かさや強さを追求し、そしてそれを獲得
して誇り、貧しさや弱さを軽蔑したとしても、その人の豊かさや強さは、神様から見たら取るに足りない。特
に神の国を受け継ぐという視点からすれば、逆転する逆転する。この世界では何も持っていなくて、貧しく弱
いと思われていた者が、より多くの恵みを神の国で与えられる。逆に、多くを持っていると思っていた者は、
神の国では取り上げられる。ここは、マタイ福音書にある山上の説教の冒頭とも類似する意味が込められてい
ると思います。
これらのことを踏まえて、イエス様は、「神の国は次のようなものである」と神の国の譬えを語ります。一つ
は、人が土に蒔いても、ひとりでに実を結ぶような「種の成長の様子」です。もう一つは、人間は、取るに足
りないと判断してしまった、非常に小さい種であるが、成長すると、他のどんな野菜よりも大きくなる「から
し種」という存在です。これら二つの譬えが語ることは、ただ一つ、神の国の奥義あるいは秘密は、人間のあ
らゆる思いを超えているということです。
これらの教訓のような譬えは、何を意味しているのでしょうか。あるいは、どのようにしたらこれらの譬えに
即した歩みとなるのでしょうか。その問いに対する答えは、前半の単純な譬えが語っています。それは光を光
として受け入れ、それが周りを照らすような場所に置くことです。そして神様に対しても、人に対しても、何
かを隠す、あるいは何かを隠したまま何かを行うことをしないということです。これは、しっかりと現実を見
て、自分で何かを判断しつつも、しかし、自分の判断がいつも限界や欠点があることを忘れずに、そして人間
の思いをはるかに超えた神様を意志を信頼しつつ、歩むことに他ならないと思います。
このような歩みは、一人の個人の努力では、極めて難しいことです。しかし、だからこそ、教会があるので
す。イエス様を中心とした祈りと交わりの場所があるのです。私たちも教会がそのような場所であり続けるよ
うに、共に歩んでいきたいと思います。
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