法憲法規の規定

 まず、信徒奉事者の意味を明確化できないということですが、日本聖公会法規の第六章に「信徒」に関する規定が書かれています。
その第六〇条に信徒奉事者の任務について簡単な条項があります。それには信徒奉事者の任務について「礼拝において、牧師に協力する」としか書かれていません。

このほかの規定もありますが、それは任期とか、資格とか、任命の手続きとか、そういう事が書かれてあるだけで、職務内容についてのものではありません。職務に関するものとしては、第二項の「信徒奉事者は、礼拝において、牧師に協力する。」だけです。




 信徒奉事者とよく似た任務に「伝道師」という職務があります。伝道師は法規第四章に特別な項目があります。そこにも試験や認可のことは書かれてありますが、職務についてはまったく書かれていません。
どういう科目で試験をするかとか、資格とか、転出とか転入とか、退職とか休職とか、そういう事については書かれてあります。職務内容の規定がありませんから、伝道師となった人は司祭の命じる職務を自分自身の理解で行うしかありません。法規では、伝道師は聖職ではなく信徒に属する仕事です。

 現行の法規が発効するまでの古い法規では、聖職候補生が神学校卒業後教会に任命された時に、執事になるまで伝道師と言われていました。
聖職候補生から執事になるまでの移行の段階として伝道師とされたのです。もうひとつ特別に伝道師だけの任務を志す、伝道師だけに専念して奉仕しようという信徒の方もいらっしゃいました。そのような信徒を昔は『特志伝道師』と言っていました。女性は区別して『婦人伝道師』と呼んでいました。

 新しい法規では、聖職は聖職で伝道師と分けて別に規定しました。ですから伝道師は信徒に属します。
教区会では教役者の議員ではありますが、法規上は信徒に属します。非聖職の教役者です。
伝道師は聖職の職務から区別されましたから、聖職を志す神学生は神学校を卒業しても伝道師にならず、執事になるまで聖職候補生のままでいるわけです。




神学生にも聖職候補生の身分の人がおりますが、更に卒業して教会勤務に任命されてもなお聖職候補生なのです。教区に戻って教会で勤務する聖職候補生もいるわけです。

新しい法規では聖職候補生は聖職を目指す者で、執事になる前の期間のひとつのありかたですが、ひとつの職務でもあるのです。
この聖職候補生も職務内容についての規定は法規には「司祭の指導のもとに、その命じる職務を行う。」(第三九条)とだけしか書かれてありません。
正式に教役者の補佐として任命されるのですが、聖職候補生は何をするという職務記述は明確ではありません。牧師の下で聖職候補生として勤務するということであります。
法規では、信徒奉事者にせよ、伝道師にせよ、聖職候補生にせよ、具体的な任務の内容については触れられていません。

ただし、伝道師や聖職候補生に比べると、信徒奉事者は「礼拝において牧師に協力する」という職務についての規定がありますが、これは具体性があるとは言えません。