「奉仕職シリーズ」の第二巻「聖書朗読の喜び」が発行されることになり大変嬉しく思っています。
本書で述べられているとおり、神のみ言葉は神の恵みの出来事の動機なのです。

 礼拝の中で聖書を朗読することは、聖餐式で司祭がパンとぶどう酒を聖別してキリストの人類救済の出来事を記念するように、歴史の中での神の恵みの出来事を記念し黙想することなのです。

 イエスご自身も故郷のナザレの会堂で聖書を朗読されました(ルカ四章一六〜一九)。
 一般の人々の読み書きがまだ普及していなかった時代の教会では、会衆に聖書を朗読して聞かせることは重要な役割でした。中世の教会で「朗読者」(Lector=レクトル)といえば主教・司祭・執事の三聖職位の下位にある聖職位として尊敬されていました。現代の教会では礼拝での聖書朗読はすべての信徒が積極的に奉仕するように期待されています。ただし、個人の信心行為と違って聖書朗読は会衆に聞かせることが前提であり一定の準備が必要です。

 本書はその有益な手引きとなるものと信じます。

 祈祷書の「聖書を読む前の祈り」(一三四頁)は、中世を通してあまりにも形骸化し迷信的になってしまった聖餐式に聖書朗読の意味をあらためて強調した英国の宗教改革の指導者クランマー大主教が作ったものです。以前は降臨節第二主日(聖書の主日)の特祷として親しまれてきたものですが、聖書朗読者はとくにこの祈りを捧げることをお勧めいたします。

                

日本聖公会東京教区          
                       主教 ヨハネ 竹田 眞