二、 「A年」「B年」「C年」、その他
 A年、B年、C年という三年周期の朗読配分については、A年が『マタイ福音書』、B年が『マルコ福音書』、C年が『ルカ福音書』を中心に選ばれているということに、ここではとどめたいと思います。また『ヨハネ福音書』は例えば洗礼に関係する記事や「命のパン」などキリストの「秘義」に関わる記事が多く記されていることから、それぞれふさわしい時に、三年間を通して配分されています。
 例えばB年に『マルコ福音書』を続けて読んでいて、いわゆる「五千人以上の人々への給食」(特定一一・一二)を読んだところで、次の週にヨハネ福音書の「命のパン」に関する主イエスの言葉が挿入されている(特定一三)という具合です。それによって同一の主題について、違う角度から聖書の言葉を聞き、また説教することが可能になります。
 その他、「復活節」には旧約聖書に替えて『使徒言行録』を読む習慣が古代からあり、採用されている等、この聖書朗読配分の問題はかなり複雑で、教会暦の理解とも関わっていますので、朗読に関するこの小冊子の域を越えます。
 現在の三年周期の朗読配分はローマ・カトリック教会やアメリカ聖公会他、またルーテル教会など、広く世界諸教会に共通に採用された日課表に基づいています。以前の一九五九年祈祷書と比較して、旧約聖書朗読が増えたことをはじめ、礼拝の中で読まれる聖書の量が格段に増えていることは確かです。
 しかし、現在の朗読配分が最終的で完全かと言えば、そんなことはないでしょう。
 いずれにしても、朗読者もただ無関心に決められた所だけを読むのでなく、その日の他の聖書日課、とくに福音書が何なのか、心を向けてみることは意味もあり、また楽しいことと思います。