月報「コイノニア」
2001年3月号 No.211


続 四 十 日

司祭ヨハネ

イエスは苦難を受けた後、御自分が生きていることを、数多くの証拠をもって使徒たちに示し、四十日にわたって彼らに現れ、神の国について話された。そして、彼らと食事を共にしていたとき、こう命じられた。「エルサレムを離れず、前にわたしから聞いた、父の約束されたものを待ちなさい。ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは間もなく聖霊による洗礼を授けられるからである。」
(使徒言行録第1章3―5節)

 マリア・コイノニア次号(四月号)の発行日はちょうど復活日になります。それまでは大斎が続くからというわけではありませんが、「四十日」についてもう少し考えたいと思います。前号では時間的空間的制約(原稿の締切日とスペースのこと)により、「四十日」についてまだまだ不十分だという思いが残りました(いつもそうですが)。そんな矢先、速水敏彦先生からお電話をいただきました。速水先生は聖公会神学院で新約聖書を教えてくださった私の恩師です。「四十日」について先生がかつていろいろお調べになり、御著書『新約聖書―私のアングル』に書いておられることをご教示下さいました。そこに示されている先生のお考えをまずご紹介させていただきます。
聖書に出てくる四十という数字の意味については、いろいろな議論があり、「多数」を意味するとか、「一世代」あるいは「一区切り」とか、「試練の時」とか言われていますが、速水先生はこれを「大きな転換期」「過渡期」を表すと考えられます。洪水の中、旧い世界と新しい世界の間を四十日間箱舟で漂ったノア。奴隷の状態にあったエジプトを出て自由と独立に生きる約束の地カナンに至るまで、四十年間荒れ野をさまよったイスラエルの民。カナンの地に四十日間潜伏して偵察してきた斥候たち。四十日間荒れ野を歩き続けて神の山ホレブに達した預言者エリヤ。荒れ野で四十日間断食して祈られた主イエス。これらの例から、「聖書に出てくる四十という数字は、あるものでなかったものがあるものとなる、といったような転換期、過渡期を表している」(同書232頁)と指摘しておられます。そして最も重要なこととして、復活のキリストが四十日間、この地上でご自身を顕現されたことを挙げ、「罪と死に支配されていた人間と世界の現実から、神様が支配される新しい人間と世界の現実―神様の現実への移行を示している」、「歴史が、メシアであるイエス様によって二分され、私たちは、今や、復活のキリストとともに生きる新しい時代を生きているのだ」と述べておられます。
速水先生のご指摘は非常に重要です。四十日間の大斎の意味も、これによって一層明らかになるように思います。
大斎の四十日間と復活顕現の四十日間は復活日を中心とする点対称を形づくります。そのように把えると、まさに「大きな転換」、最大の転換点として、復活日が浮かび上がってきます。「十字架につけられ、死んで葬られ、よみに降り、三日目に死人のうちからよみがえり、天に昇られました」(使徒信経)に言う、「よみ」から「天」への、マイナス無限大からプラス無限大への、比類なき大転換。全宇宙が巻き込まれている、死から生へのこの上なく壮大で神秘に満ちた主の過越。聖書に出てくる「四十」はすべて、この主の過越に焦点を結んでいると言えましょう。
主の死によって絶望のどん底にたたき込まれた弟子たちは、復活の主の顕現によって歓喜の極みに引き上げられ、さらに聖霊の降臨によって世界に押し出されて行きます。そのように、私たちにとっても、大斎の四十日と復活顕現の四十日は、主の過越を主と共に歩む道となるのです。
(図は14〜15世紀、モスクワ派フェオファン・グレク派イコン、「主の十字架」)


連載
京都聖マリア教会の印象(5)

司祭 ヨセフ 小谷春夫

 京都聖マリア教会に勤務させて頂いて十四年、いろいろなことがあり、思い出すことは沢山あり、ちょっと下田屋司祭におめにかかった折りに一言お話したのがきっかけで月報に紙面を割いて頂くことになったのですが、この原稿を最後にさせていただこうと思います。と申しますのはこの記事と関係するのですが、京都聖マリア教会の周辺のことについては私より詳しいことをご存じの方が沢山おられるのですから、地域との関係を深めるためにも是非周辺の歴史について、筆をとって書いていただきたいと願うからです。ここに問題提起だけさせていただきます。
第一の問題、最近歴史に関心をもって本を読むのですが、次のような記事を読みました。「このころ(1156年保元元年)までに白河上皇の建立したいわゆる「国王の氏寺」法勝寺をはじめ、「勝」の字をつけた天皇家の御願寺、六勝寺が建ち並び、貴族の邸宅をはじめさまざまの雑人の家の建ち並ぶ鴨川の東―河東の白河の地は新たな都市としての姿をあらわした。そしてこの白河の地は、京と琵琶湖の要津坂本とを結ぶ要地であり、古都の右京の地の荒廃後、北野神社を中心に、同じく新たな都市地域になりつつあった西京、さらに宇治川、淀川の河川交通と結びついた、鳥羽殿を中心とする京都の南郊とも対応しており、上京、下京を中心に京都は全体として「水の都」ともいうべき新しい都市に変貌しつつあった。」(網野善彦著、日本社会の歴史、中、72頁)
 鴨川の東は昔から田舎で、明治に都が東京に移ったのに反発し学問文化の中心として その名誉を取り返そうとして開発された土地とばかり思っていたのでこの記事には驚きました。カスバート司祭がここに教会を建てられたのにその歴史をふまえておられたのでしょうか。
 第二の問題、現在の土地に宣教が始められてから随分と建物の変遷があり、その建て替え毎に京都の他の教会に古い建物を譲ってきたと聞いていますし、またいろいろな建物がたてられたりこわされたり、いろいろな人がそれらの建物に住まわれたといいます。その歴史を総て知っておられる人がおられると思います。その方々の思い出は如何でしょう。また前の牧師館には山田司祭の時も長谷川司祭の時も青少年の賑やかな集まりが随分とさかんだったと聞いています。私自身もご馳走になり、風呂にも入れていただいたことがあります。そんな経験もやはり残しておくべきではないでしょうか。
 第三、教会の周辺も随分変化したと思いますが、どこかでその記録もあってよいのではないでしょうか。私の知る限りでも、たとえば、左京郵便局、ボーリング場、その後の上野病院、京都市電丸太町線の敷設、撤去、少し離れますが、スケート場がありましたし、今の京都会館の建てられる前はなんでしたでしょうか、などなど。もう少し昔のこと迄遡れば、錦林小学校が男子校であった事など聞かされたことがあります。そのへんの時代からの変化も知りたいし、それらのことは教会にどんな影響をもたらしたでしょうか。
 第五、京都聖マリア教会は戦後一時期進駐軍に接収されたのですが、その頃この辺におられた方の生活状況はどうでしたでしょうか。その頃私は岩倉の実相院に下宿していて夜、本を読もうとしても一時間毎に停電したのを覚えていますが、この辺は何時も電気がついていたのではないでしょうか。また礼拝はどのように守られていたでしょうか。 
 以上の問題をきっかけとし信徒の人々がもっておられる思い出を書いて頂けたらと思います。勝手なことを申し上げていますが御配慮をお願いして筆をおきます。


3月の教会委員会から

《報告事項》
▽教籍異動 2名
パウロ中野豊、フランシス中野浩(大阪教区石橋聖トマス教会へ送籍)
▽礼拝
結婚式 山中秀樹・祝部恵/婚約式 菅原一樹・森津なぎさ/2月逝去者記念聖餐式(レクイエム)/大斎始日礼拝。〈礼拝予定〉大斎早朝聖餐式(毎朝7時)/三月逝去者記念聖餐式(レクイエム)3月21日(水)11時
▽教会員外の結婚式費用
▽池袋福音教師社団理事に下田屋司祭が就任
▽堅信式希望者五名(日程は教区主教と相談)
▽婦人会の連絡網が出来た
▽サーバーズマニュアル改訂作業中。出来次第サーバー講習会開催。
▽ジュニアチャーチ・イースター大文字山早天礼拝4月15日(日)午前4時30分教会集合
▽日曜学校3学期最終礼拝3月18日。卒業1名

《協議事項》
▽受聖餐者総会議事録確認
▽教区代祷表代祷項目、司祭に一任
▽コピー機および印刷機のリース代・紙代等消耗品費年間60万円を幼稚園と教会で折半負担する。
▽行事案内立看板
片面黒塗り、片面フェルト張りで見積を取る。
▽事務室の旧パソコンの処分を吉村委員に一任する。


みんなで盛り上げよう!
第5回SDGコンサート

コンサートの季節到来!
 第5回の京都聖マリア教会コンサートは、昨年の第1回コンサートで素晴らしい演奏を披露して下さり、皆さんからも再出演の要望の声が高かった、大阪フィルハーモニー管弦楽団主席フルーティストの野津臣貴博さんを再度お招きすることになりました。
 野津さんご自身も前回の演奏で私たちの礼拝堂の響きを大変気に入って下さり、また特にバッハの音楽については教会の礼拝堂という空間で演奏することに特別な思い入れを持っておられて、再出演のお願いを、待ってましたとばかり快く引き受けてくださいました。西谷玲子さんのピアノとの息のあった名演奏が聴けること請け合いです!
 私たちの教会コンサートには、一人でも多くの方に私たちの礼拝堂に足を運んでいただくという伝道的な目的と同時に、礼拝堂建築の借入金返済の収益事業としての性格もあります。どうか皆さん、今年もコンサートを盛り上げ、礼拝堂をお客様で一杯にしましょう。よろしくお願いいたします!

第5回京都聖マリア教会コンサート
▼日時=4月22日(日)・16時30分開場、17時開演 
▼出演=野津臣貴博(フルート)・西谷怜子(ピアノ)
▼プログラム=
バッハ・無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調BWV1013、
モーツアルト・ソナタ ト長調KV.301、
ジョリベ・五つの呪文、
ドビュッシー・シリンクス、他
▼入場料=2000円


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