月報「コイノニア」
2001年12月号 No.220


イスラームをめぐって(三)

司祭ヨハネ

汝に啓示された啓典を読誦し、礼拝を守れ。
礼拝は、みだらなことや悪事を避けるもの。
神の御名を唱えることこそ最大の務め。
神はおまえたちの所業をよく知りたもう
(第29章蜘蛛の章45節)

 コーラン(アル・クルアーン)はもともと「読誦」を意味し、記憶した者が人々に朗誦して聞かせるものでした。教会音楽もイコンもないイスラームでは、コーランの朗誦とアラベスクの装飾文様が信仰の唯一の芸術的表現だと言われます。コーランの朗誦は礼拝以外にも様々な機会に行われ、朗誦のコンテストもあるそうです。しかし右の句の初行にあるように、コーランの朗誦は何よりもまず礼拝と結びついています。
ムスリム(イスラーム教徒)という語から真っ先に連想するのは彼らの礼拝の姿ではないでしょうか。イスラームは「啓示と実践の宗教」と言われるほどに、実践としての礼拝を大切にします。彼らはいつどこにいても、定められた時刻が来るとメッカに向かって礼拝を始めます。礼拝における彼らの独特の動作は、非ムスリムに対して大きな衝撃と感動を与えるようです。実際、東南アジアにイスラームが広がったきっかけは、交易などでやってきたムスリムたちの礼拝する姿を見て、現地の人々の改宗が急速に進んだためだと言われます。現代世界においてイスラームが最も大きく教勢を伸ばしているのも、この礼拝の姿によるところ大です。宣教論や伝道方策などの理屈ではなく、日常生活の中心に礼拝がしっかりと据えられていることこそ、信仰の最高の証しです。クリスチャンは大いに学ぶべきではないでしょうか。
メディナ聖遷の初期、ムハンマドはユダヤ教徒にならいエルサレムに向かって礼拝したと言われます。しかしやがてユダヤ教徒と訣別し、メッカのカーバ神殿を礼拝の方角として定めました。礼拝の方角は「キブラ」と呼ばれ、最も重要視されます。彼がメッカにいた時は、メッカ南部から見てカーバ神殿もエルサレムも同じ方角でした。しかしメッカ北方のメディナからでは正反対になります(10月号の地図)。ムハンマドがキブラをメッカに変更したのはメディナ聖遷(ヒジュラ=イスラーム紀元)の第二年と言われます。それ以来全世界のムスリムはメッカに向かって礼拝してきました。モスクの内部はほとんど何もない空間ですが、メッカの方角を示す壁のくぼみ(ミフラーブ)だけは必ずあります。彼らの礼拝にとって、キブラは絶対に欠かすことができません。砂漠で礼拝するときも、砂の上にキブラを示す線を書いて始めるとのことです。
礼拝は一日五回、夜明け前(ファジュル)、正午少し過ぎ(ズフル)、午後(アスル)、日没後(マグリブ)、夜(イシャー)と、太陽の位置に従って行われます。礼拝はモスクで集団で行うことが望ましいとされますが、どこででも個別に行うことが認められています。ただし、金曜日の正午過ぎにはモスクで行われる集団礼拝に参加することが義務とされています。
礼拝の時が来ると、モスクの尖塔(ミナレット)からムアッジンと呼ばれる係りが、アザーンという告知を行います。アザーンでは次の言葉が朗誦されます。「神は至大なり(二回)。神は唯一であることを証言する(一回)。ムハンマドは神の使徒であることを証言する(一回)。神のほかに強さも力もない(二回)。礼拝に来たれ、繁栄に来たれ(一回)。神は至大なり(二回)。神は唯一である(一回)」。朝のアザーンでは、最後の「神は至大なり」の前に「礼拝は睡眠よりよい」が入ります。意味深い言葉です。

(写真は巡礼であふれるメッカのカーバ神殿。中央に小さく見える黒い建物が至聖所。世界中のムスリムの心がこの一点に集まる)


Merry Christmas

今年のマリアのクリスマス

23日(日)10時45分
降臨節第四主日・総員礼拝・祝会

 マリアの大礼拝にはもはやなくてはならないハンドベルクワイヤー。メンバーは十代前半から80代と様々ですが、月二回の練習を続け、一人でいくつものベルを扱うなど、ますます技術的にも向上してきています。聖歌隊との息もぴったりで、礼拝音楽委員会の先導のもと、例年以上の回数の練習を積み、自信をもって当日を迎えました。聖歌隊も若いメンバーたちの実力が現れ、新旧交代の予感をも感じさせました。
 降臨節第四主日ということで紫の祭色の礼拝ですが、たくさんの会衆が出席され、いい音楽とともに素晴らしい神様への讃美を献げることができました。
 礼拝を終えるとお待ちかねクリスマス祝会。持ち寄りのごちそうはいつもの通りの超豪華版。婦人会の方々を中心に腕に縒りをかけた逸品が並びました。服部卓爾さんの司会のもと、ゲームあり歌ありと楽しいひとときを過ごしました。そしてクライマックスは子供たちお待ちかねのサンタさんの登場。子供たちはプレゼントを手にして大喜びでした。

24日(月)19時半
クリスマスイブ・キャンドルサービス

 クリスマスイブのキャンドルサービスは昨年に引き続き「九つの日課による唱詠晩祷」です。各日課を教会各部の代表が朗読し、最初から最後まで蝋燭の光だけで礼拝を捧げました。出席者は約100名で、二階会衆席まで満席になりました。一般の出席者も多く、外人旅行者らしき人や、クリスマスイブを二人で過ごすカップルも数組見られました。
 この晩祷にも聖歌隊が奉仕し、美しい歌声を礼拝堂に響かせました。

24日(月)23時半
降誕日第一聖祭(深夜聖餐式)

 ミッドナイト礼拝は聖歌集第五部の聖餐式U(プレイン・ソング)のB、いわゆる「マリア・ミサ曲」による歌ミサです。この時間の礼拝を行っている教会は京都教区でも少なく、内外にも広くお知らせしてたくさんの出席者を得、聖マリア教会の新しい伝統にしていきたいと思っています。少々難しい歌ミサになりますが、聖歌隊がリードすべく猛練習を重ね、当日を迎えました。

25日(火) 降誕日
7時
第二聖祭(早朝聖餐式)
10時45分
第三聖祭(主要聖餐式)

早朝聖餐式に見えたのは旅行中の外国人たちだけでしたので、英語聖餐式に切り替えて行いました。
 主要聖餐式は、ふだんの主日礼拝とほぼ同程度の出席者で、一同主の御降誕を心から祝いました。礼拝後会館ホールで親しい交わりの時をもちました。降臨節第四主日に一足早くクリスマス祝会をもちましたが、何と言ってもやはり降誕日を迎えてはじめて晴れ晴れとクリスマスを祝う気持ちになれるものです。

大晦日深夜聖餐式について

昨年に引き続き今年も12月31日23時半から深夜礼拝を行います。教会暦の上では「主イエス命名の日前夜」です。深夜聖餐式の定めは特にありませんが、日本人の感覚として、過ぎゆく年に与えられた数々のみ恵みを深くかみしめて主に感謝し、聖体拝領のうちに新しい年を迎えたいものと思います。
神社仏閣の初詣に何十万人もの人々が押し寄せる日本的宗教風土の中にあって、クリスチャンのための教会式「初詣」と捉え直すこともできるのではないでしょうか。


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