月報「コイノニア」
2003年11月号 No.243


布にくるまって

司祭ヨハネ

 その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」 ルカによる福音書二・8―12

 ジオットが描く降誕の場面はきわめて殺風景です。一本の草木もない岩山。柱と屋根だけの、雨露をしのぐにも足りない建物。この建物と岩山は、博士たちの来訪の場面にもそのまま用いられています(マリアコイノニア2002年12月号)。「かみのみこ みさかえと みくらをはなれ むらざとに あれまして すまいなかりき」(聖歌二五)と歌われるように、「世は言によって成ったが、世は言を認めなかった。言は、自分の民のところへ来たが、民は受け入れなかった」(ヨハネ一・10、11)ことを暗示しているかのようです。
 御子に注目しているのはマリアと助産婦らしき婦人、それにロバと牛が一頭ずつだけ。産褥にあるマリアは半身を起こしてわが子を受け取ろうとしており、乳飲み子はまだ飼い葉桶に寝かされていません。羊飼いたちは羊と共にまだ野にあって、天使のお告げを受けています。別々の場所で起こった出来事が一つの絵の中に描かれています。
 ヨセフは母子に背を向けて物思いに沈むかのように蹲り、一人浮いているように見えます。出産に立ち会う父の所在なさでしょうか。それとも、羊飼いたちのように別の場所・別の時のヨセフでしょうか。たとえば、夢に天使が現れてマリアが聖霊によってみごもったことを告げられた時のヨセフ(マタイ一・18―25)でしょうか。
 降誕の場面を描いた多くの画家は、ヨセフを気まずそうな表情で描いています。古くからの冗談として「自分の妻のお腹の子に心当たりがないのだから」と言われ、ジオット自身が自分の絵についてそう言ったという話も伝えられていますが、真偽のほどはわかりません。男性の画家たちが自分の人間的な思いをヨセフの姿に投影することはあり得たかもしれません。
 それはさておき、最も重要に思われることは、縮小画面では見えにくいでしょうが、乳飲み子が手も足も出ないように布でぐるぐる巻きにされていることです。乳飲み子を布にくるむというイメージではなく、まるでミイラのようにがんじがらめに縛られて、明らかに葬りのための布の巻き方です。イエスによって墓からよみがえらせられたラザロの姿も同じ巻き方で描かれています。上でふれた博士たちの来訪の場面でも、同じ巻き方をした乳飲み子の足の部分の布に博士が跪いて口づけしています。彼らが没薬を捧げたことの意味が、この布の巻き方によってはっきりと表現されています。
 十字架から降ろされたイエスの遺体を議員ヨセフが引き取り、新しい亜麻布で遺体を包んで新しい墓に葬ったことは四つの福音書すべてが語っています。第四福音書ではさらにニコデモが没薬と沈香を混ぜたものを持って来て、彼らが「ユダヤ人の埋葬の習慣に従い、香料を添えて亜麻布で包んだ」とされています。
 布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子はそのまま墓に葬られた主の姿に重なり、それが「あなたがたへのしるし」となるのです。


11/29
宣教100周年記念聖餐式・祝会

 11月29日(土)10時より、聖マリア教会の宣教100周年記念聖餐式が行われました。聖歌隊・ハンドベルクワイヤーのご奉仕のもと、当教会にゆかりのある遠方からのお客様を含め、200名近くの大礼拝を捧げることができました。
 聖職団として、ステパノ高地敬主教様をはじめ、歴代牧師の浦地司祭、小谷司祭も祭壇にあがっていただき、その100年の歴史を感じながら荘厳な礼拝を献げました。
 式後は、ウエスティン都ホテル「葵殿」に場所をうつし、100年記念祝会を催しました。マリアのタレントをフルに集約した出し物満載で、歌い、踊り、食事を共にし、楽しいひとときを過ごすことができました。
 出席した人全員が笑顔でこの100周年を迎えられた事を感謝し、また新たな100年に向かって前向きにみんなで歩む約束をし、100年後の祝会会場にこの都ホテルを予約して帰りました。

 百周年記念の喜びに満ちた聖餐式、そして熱い思いがあふれるような都ホテルでの祝会。多くの方々のご協力により、記念礼拝および祝会の一日が深く心に残る日となりました。感謝に耐えません。礼拝出席者約190名、陪餐者約170名。そして祝会出席者約170名でした。雨による混乱もなく、すべてが滞りなく進みました。実行委員長として教会員の皆様に心からお礼を申し上げます。本当に有り難うございました。

            宣教百年記念事業実行委員長 マルコ 新実康男


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