月報「コイノニア」
2006年11月号 No.279


み言葉の力、賛美の歌、教会の価値

〜「天使の贈り物」一九九六年、アメリカ映画〜

司祭 ミカエル 藤原健久

「問題は僕が来る前からあった。君は忘れている、何が大切かを。」
「何だね、教えてくれ。」
「聖マタイ教会は住人たちを結びつける絆だ。なくなれば、みんな堕落する。君はジュリアの心を失う。」

「これしきの事じゃ参らんぞ。私はしぶといんだ、君が何者でも。」
「僕の事は、明日になれば忘れてる。だが、壊す前に、教会の真の価値を見るんだ。」
「真の価値?」「分かるはずだ、心の声が教えてくれる、進むべき道を。」

 原題は「The Preacher's Wife」、ホイットニー・ヒューストンが牧師の妻の役を演じている、素敵なクリスマス・ムービーです。それだけに、歌の場面は迫力十分です。今回は黒人の会衆が中心の教会で、本格的なゴスペルを聴かせてくれます。私は実は福音主義派の教会の礼拝にはちゃんと参加したことはないのですが、実際の礼拝もかくあらんと思わされます。本格的なバンドをバックに、リズミカルで元気の出る賛美歌が力強く歌われ、聖歌隊がコーラスで支えます。会衆は手拍子を打ち時に立ち上がり、時に踊り出します。ホイットニーのお母さんは教会のゴスペル歌手で、彼女も小さいときから教会で歌い、今でもコンサートの時には必ずゴスペルを歌うのだそうです。ゴスペルは今、少し流行っていますが、本物のゴスペルの迫力はどうでしょう!聖書のみ言葉を受け、その中の大切なメッセージを何度も何度も繰り返し、先唱者が盛り上げてゆきます。コーラスによって柔らかくされた私たちの心の中に、ソロの歌声が、時に激しく時に静かに入り込み、心の隅々まで浸透していきます。そして日頃のつらくて忙しい日常で、すっかり堅くなってしまった私たちの心を解きほぐしてくれます。ゴスペルの歌声を聞いていると、知らずに元気になり、涙が浮かびます。
 また歌と同時にスゴイのが説教です。聖書のみ言葉を分かりやすく解説するだけではなく、時に激しく、時に優しく会衆に語りかけます。会衆との掛け合いには驚かされます。牧師のメッセージを会衆も繰り返し、納得したときには立ち上がって賛同し、分からないときには問いかけ、感動したときには「ハレルヤ」と唱えます。牧師も決して壇上から語りかけることをしません。会衆と同じ苦労をし、同じ悩みを持つ一人の人間として、共にみ言葉を分かち合い、救いのメッセージを確認し、共に喜び、共に泣き、そして共に元気になってゆくのです。
 舞台となる教会は黒人の多く居住する地域にあります。住人は貧しく、治安も悪そうです。教会も貧乏です。地上げ屋に攻撃され、存亡の危機に立たされています。けれども教会は地域の中心になっています。行き場のない青年たちやお年寄りに集いの場を提供し、貧しい人々のための給食活動を行い、病人を見舞い、犯罪に巻き込まれた人には面会に行きます。また平日には聖歌隊の練習や様々なミーティングで、人々は教会に集います。日曜日には、それらの地域の動きがすべて礼拝に集められるようです。人々の貧しさ、苦しみ、忙しさ、悩み、それらが礼拝の場に寄せ集められ、聖書のみ言葉と賛美の歌声によって、希望と今日一日を生きる力へと変えられてゆくのでしょう。
 私個人としては、地域の人々のためにあちこち駆けずり回りながら、日々悩む牧師さんの姿に共感し、「あぁ、仲間もがんばってる」と、怠け者の我が身を奮い立たそうとしています。

(上映会は12月10日、午後1時半より、幼稚園ホールにて、無料。)


幼児祝福式

 11月12日(日)幼児祝福式が行われました。一般に行われる「七五三」に代わるもので、当教会は毎年この時期に行っています。小学生低学年以下の子供たちは藤原司祭から祝福を受け、プレゼントをいただき、とても満足そうな笑顔を見せていました。


洗礼・堅信式

 11月19日(日)ステパノ高地敬京都教区主教をお迎えし、洗礼・堅信式が行われました。
 クロス佐竹登さん(教父母 井上進次さん・坂本義雄さん・辻法子さん)とダリア河内舞さん(教父母 前田潤さん・浅間麻衣さん・生谷朋子さん)のお二人が洗礼・堅信をお受けになりました。
 おめでとうございます。


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