月報「コイノニア」
2009年4月号 No.308


《聖書を飛び出したイエス様・その5》
   先生と呼ばないで

書籍「ホームレス中学生」から

司祭 ミカエル 藤原健久

 あなたがたは「先生」と呼ばれてはならない。あなた方の師は一人だけで、あとは皆兄弟なのだ。…あなたがたのうちで一番偉い人は、仕える者になりなさい。だれでも高ぶる者は低くされ、へりくだる者は高められる。
               (マタイ23・8-12)

 しばらく前に、本屋の店頭で見かけ、「まだ売れているのか」と驚き、買いました。著者は若手お笑いコンビの一人で、彼の今までの人生をつづった自叙伝です。
 著者が中学生のある日、学校から帰ってくると、家に「差し押さえ」のテープが貼られていました。著者と兄姉が呆然としていると、父親が帰ってきて、子どもたちにこう言います。「厳しいとは思いますが、これからはそれぞれ頑張ってください。…解散!」そう言って父親はどこかへ去ってしまいます。それから彼らのホームレス生活が始まりました。著者は近所の公園で寝泊まりします。持っていたお金はすぐに底をつき、落ちているお金を探したり、雑草を食べてみたり、何もないときには段ボールをかじってみたりして、極限の生活を送ります。このような生活が一ヶ月ほど続いたある日、町中で偶然親友に出会い、友だちの両親や近所の人々が事情を知るようになり、彼らに助けられて、兄姉と共に、貧しいながらも最低限の生活を送ることができるようになります。
 著者は周りの人々に感謝しながら頑張っていきますが、それでも徐々に、短いながらも辛いことの多い人生を思い、生きる気力を失っていきます。けれどもそのことを誰にも言えず、鬱々とした思いで日々を過ごします。そんなときに彼は「恩師」と呼ぶべき先生に出会います。それが高校の担任の先生、工藤さんです。彼女は生徒に「先生と呼ばないで」と宣言し、一人の人間として生徒達と接している、ユニークな先生でした。放課後の教室で偶然著者と出会った工藤さんは、優しく著者に話しかけてゆきます。なかなか心を開けない著者を前にして、彼女は、自分の悩みを著者に話し始めてゆきます。クラス運営の悩み、自分の人間としての未熟さ…。著者はびっくりします。立派な大人の先生が、未熟な子供の自分に、自分をさらけ出して話をしてくれる、そのことに彼は、先生の自分に対する信頼感を感じます。そして初めて自分の悩みを打ち明けます。彼女はその悩みを真剣に受け止め、長文の手紙を書き、その中で彼がいかに大切な存在で、自分も彼を大好きであることを伝えます。彼は、自分が愛されていることを知り、今までの価値観が根底から覆り、「生きたい」と思うようになり、心と生活が一変します。
 イエス様は、「神の子」であり、私たちの「救い主」であり、私たちを導いてくれる「先生」です。けれどもイエス様は、時に自分の弱さを弟子たちにさらけ出して居られました。「もうすぐ十字架にかけられる」という予告や、「眠らず一緒に祈っていて欲しい」という言葉は、実は「自分は寂しく、辛いんだ」と正直な自分の思いをさらけ出すものだったのかも知れません。イエス様はまず、一人の人間として、私たちに接してくださったのです。けれども弟子たちは「あなたは『救い主』なのですから、そんなこと言ってはダメです」と、イエス様の思いを拒んでしまいました。イエス様は、完全な「神」であると同時に、完全な「人間」です。イエス様にも辛いこと、悲しいこと、悔しいことが沢山あったのです。そしてその弱さを正直に、イエス様は私たちにさらけ出してくださるのです。それはきっとイエス様の私たちに対する信頼の証でしょう。私たちがその信頼を感謝して受け、自分も心を開けるとき、私たちは新たな道に出会えるのかも知れません。
 時には祈りの中で、「イエス様」と呼ぶ代わりに「イエスさん」と呼んでみるのも良いかもしれません。


祝 ご復活!

今年は、花冷えの中、美しい桜を愛でながら大斎節を過ごし、春爛漫の温かく明るい日差しの中で、復活日を祝いました。

3月25日(水)13時30分
大斎始日(灰の水曜日)礼拝

 昨年度の「しゅろの十字架」を燃やして灰にしたものを用いて礼拝しました。
 司祭の額の黒い十字架は、しばらく消えませんでした。4名参加。

4月5日(日)10時45分
復活前主日(しゅろの主日)
しゅろの行列と聖餐式。

 聖餐式の冒頭、前日に作ったしゅろの十字架と、しゅろの枝をもって、聖堂前室から聖堂内を一周しました。福音書朗読は、長い受難の物語で、教会委員による、役割分担の朗読を行いました。61名参加。

9日(木)聖木曜日 19時
洗足式・聖餐制定記念聖餐式・聖木曜日の黙想

 最後の晩餐と、イエス様が弟子たちの足を洗われた事を覚えて礼拝しました。四名参加。その後、聖書と詩編と沈黙の繰り返しによる、約一時間の黙想を行いました。一名参加。

10日(金)聖金曜日 正午
京都伝道区合同受苦日礼拝
 (主教座聖堂)

 小林司祭(大津)の説教でした。伝道区内の教会で分担して行う福音書朗読では、当教会から浦地恭子さんがご奉仕下さいました。

10日(金)聖金曜日 19時
  聖金曜日夕の礼拝
(十字架の主に対する崇敬と賛美)

 聖卓前に、等身大の木の十字架を安置し、礼拝を行いました。4名参加。

11日(土)聖土曜日 10時
イースター・エッグ作り、
  入学式・進級式

 約20名の子どもたちが集まって、個性的なデザインの卵を作ってくれました。
 新しい式文でお祈りしました。

11日(土)聖土曜日23時
イースター・ヴィジル
復活のろうそくの祝福・
洗礼の約束の更新・復活の聖餐式


 主の復活をお祝いする最初の礼拝です。暗闇の中でのろうそく礼拝から始まります。「キリストは本当に復活された!」6名参加。

12日(日)復活日 4時30分
  ジュニアチャーチ
   大文字山早天礼拝

 午前4時半に教会出発。ジュニアチャーチを中心に山上で朝の礼拝をしました。

12日(日)復活日 7時
早朝聖餐式
12日(日)復活日 8時
英語聖餐式

 イギリスからのご家族が参加してくださいました。四名参加。

12日(日)復活日 9時30分
日曜学校

 この日は礼拝だけで、分級はナシです。「分かち合い礼拝」でした。

23日(日)復活日 10時45分
主要聖餐式

 復活の喜びに満ちあふれた礼拝です。モニカ織田悠衣ちゃんの洗礼式も行われました。礼拝後の祝会では持ち寄り昼食会が行われ、美味しい食事に舌鼓を打った後、楽しい歌や、卵探しで楽しい時間を過ごしました。約130名参加。


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