月報「コイノニア」
2010年7月号 No.323


《聖書を飛び出したイエス様・その20》
 心優しい人々

アニメ作品『新世紀エヴァンゲリオン』から

司祭 ミカエル 藤原健久

心の貧しい人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。
悲しむ人々は、幸いである、その人たちは慰められる。
柔和な人々は、幸いである、その人たちは地を受け継ぐ。                 (マタイ5・3-5)

 先日、開催しました「エヴァンゲリオン(以下、エヴァと略)を語る会」には、三人の中高生と、一人の青年が参加してくれました。エヴァは、今から十数年前にテレビで放映され、大人気を得た作品です。それほど古い作品なのに、今の中高生達にアピールするほどの力を持っています。今、日本では、数多くのアニメ作品が造られていますが、エヴァがその原点の一つとなっているのは確かです。それほど優秀な作品です。
 時は近未来、「セカンド・インパクト」と呼ばれる謎の大爆発によって、人類の半数が滅び、環境が激変してしまった地球に、「使徒」と呼ばれる謎の強大な生物が襲ってきます。人類を救うために開発されたのが、「エヴァ」と呼ばれる、ロボットのような、巨大な人型兵器。中学生の主人公達は、エヴァに乗り込み、使徒と闘う、というストーリーです。
 中高生達にエヴァの魅力を聞いてみました。まずは、戦闘シーンの格好良さ。従来の「巨大ロボットアニメ」よりも激しく、リアルな闘いが繰り広げられます。また、人物描写の深さ。登場人物は、単純な「正義の味方」ではなく、それぞれが、悩み、葛藤し、傷ついています。その深みが、見る側の繊細な心にマッチするのでしょう。
 私は初めて今作品を見たとき、その「暗さ」に驚きました。私が子どもの頃に見ていたアニメでは、勧善懲悪が当然の価値観でしたが、エヴァでは、何が悪で、何が正義か、分からなくなっています。襲い来る敵も恐ろしいのですが、味方であるべきエヴァも、恐ろしい姿形をしています。周りの状況も謎だらけで、謀略が渦巻き、誰を信頼すればいいのか分かりません。そのような中で、身を張って闘うのが、まだ幼さの残る中学生なのです。私は、この混沌とした、痛々しい、絶望的とも思えるような世界観に、びっくりしてしまいました。
 この状況は、実は、現実の中高生達が置かれている状況に、大変近いのではないでしょうか。中高生の頃は、大人への入り口の時期です。体が大きくなるだけでなく、精神的にも親から離れ、自立を始める時期です。交友範囲や活動範囲も広がります。けれども、彼らを取り巻く世界は、彼らに対して、決して優しいものではありません。世界は大人によって動かされており、中高生達が自由に造り上げることのできる部分はごく僅かです。大人は、彼らに自立を促すと同時に、大人のルールに従うことを強要します。その上、現在の日本の状況は、大変混沌としています。何が正しく、何が間違っているのかが分からなくなっています。大人達が混乱し、傷ついている社会です。中高生達が混乱しないわけがありません。
 イエス様は、絶えず、社会の中で押さえつけられ、小さくされている人に目を向け、彼らと共に歩まれました。イエス様が祝福する「貧しい、悲しい、柔和な人々」は、社会の中で力を持ち得ない人々でした。どれだけ文句を言おうと、叫びを上げようと、社会は殆ど彼らの声を聞きません。だから、彼らはじっと耐え忍んでいたのです。
 中高生達も、混乱する社会の中で、じっと耐え忍んでいるのではないでしょうか。不安なこと、腹が立つこと、がっかりすること、きっといっぱいあるでしょう。けれども彼らは、毎日、懸命に生きています。教会は、ひたすら彼らを受け入れ、彼らの語る言葉に耳を傾け、彼らを祝福し、彼らと共に歩むように努めなければなりません。


マリア幼稚園コーナー

 昨年、教育実習生としてお世話になり、初めて出会う素直で、心優しい子ども達の姿や先生方が展開される保育に魅了されました。そして、この4月から聖マリア幼稚園の緑組(年長組)の副担任をさせていただいています平林菜摘と申します。
初めて社会に出て3ヶ月が過ぎました。実習生とは違う本物の先生になったということで、子ども達から呼ばれる「先生」という言葉に責任の重さを感じます。と同時に保育者を目指してきた私にとっては「先生」と呼ばれることに喜びも感じています。子ども達の笑顔を見た時や、お友達同士教え合う姿、年齢が下のお友達のお世話をしている姿を見た時などには、思わずこちらも笑顔になります。子どもたちが毎日様々な姿を見せてくれることで、小さな変化でも「できるようになったね!」と子どもの成長を一緒に喜びあえることが、この仕事の楽しいところだと感じています。
毎年取り組んでいる七夕製作では、手の込んだ物も多くあり、その過程で涙しながらも、最後まで自分の力で作り上げた時の子ども達の顔は自信に満ち溢れていました。そして、1学期の終わりに開かれた「夏のお楽しみ会」では、それぞれのクラスが一生懸命練習した、歌やリズムバンド(合奏)を披露し、おいで下さったお家の方々から、多くの拍手をいただきました。年長組の終わりのご挨拶を見守っていた私は、子どもの緊張が伝わり、挨拶が終わる頃には泣き出してしまいそうになりました。そんな子どもたちの表情は誇らしげに見えました。
夏休みに入ると同時に梅雨が明けて、本格的な夏がやってきました。しかし、今年の梅雨は「シトシト」という雨の降り方ではなく、ゲリラ豪雨が多く、日本各地では多くの土砂災害等が見られ、中には命を落とされた方もおられます。自然の恐ろしさを改めて感じます。子ども達の夏休み、怪我や事故に気をつけて楽しい夏を過ごして欲しいと願っています。そして、休み明けにいろんなお話を聞かせてもらうことを楽しみにしています。(緑組副担任 平林菜摘)


2011年度園児募集
   ご協力のお願い

 9月1日(水)より、願書配布。10月1日(金)より願書受付(いずれも午前9時から)となります。それに先立ち新調したポスター等を掲示、協力いただけるところを探しています。該当年齢の家庭への声かけ等ご協力お願いします。


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