月報「コイノニア」
2010年8月号 No.324


《聖書を飛び出したイエス様・その21》

優しく穏やかな旅立ち

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』から

司祭 ミカエル 藤原健久

神はわたしの魂を生き返らせ、み名のゆえにわたしを正しい道に導かれる。
たとえ死の陰の谷を歩んでも、わたしは災いを恐れない。
あなたがわたしと共におられ、あなたの鞭と杖はわたしを導く。              (詩編23・3-4)

 「死」について、じっくりと考えてみようと、この作品を読みました。
 孤独な少年ジョバンニと、心優しい親友のカムパネルラ、実は彼は川でおぼれて亡くなっていることが、物語の最後で分かるのですが、彼ら二人が、銀河を走る鉄道に乗って旅をする、と言う物語です。数ある宮沢賢治の作品の中でも、最も幻想的な物語なのだと思います。物語の筋立てだけではなく、文章そのものがとても幻想的に表現されています。
 鉄道の中で唯一、ジョバンニは死んでいません。彼はカムパネルラが亡くなったことを知りません。大好きな親友と一緒で喜んでいます。けれども彼らの心には、いつも、悲しみが漂っています。それは、きっといずれ来る別れの予感なのでしょう。どんなに愛する人とも、いずれは死によって分かたれてしまう、これは、私たち人間にとって、どうしようもない事実です。通奏低音の様な悲しみは、きっと全ての人が持っているのでしょう。
 この作品には、死についての、深い洞察が、全編に記されています。宮沢賢治の思いの全てを理解することは到底できませんが、私が気づく範囲で、少しだけ作品中の「死」について見てみたいと思います。
 まずは、死への旅立ちは、日常の、身近なものに包まれています。銀河鉄道のモデルとなったのは、賢治の愛した故郷、岩手の軽便鉄道です。また、鉄道の窓から見える様々な風景も、岩手の風景なのでしょう。ススキ野原やきれいな川、川面に降りてくる鳥たち、また美しい星空も、見慣れたものです。死への旅立ちは、慣れ親しんだものに囲まれて、穏やかに為されるのでしょう。
 また、一緒に行ってくれる人がいます。銀河鉄道には、様々な人々が乗車しています。死への旅立ちは決して一人ではありません。またジョバンニが同席しているように、生きている人でさえ、ギリギリまで一緒にいてくれます。天国へ足を踏み入れるのは、どうしても一人です。一人で生まれ、一人で死んでゆくのは人間の定めです。けれども、ギリギリまで一緒にいて、慰め、励ましてくれる人がいるのです。
 そして、死は必ず悲しみをもたらします。親友を失ったジョバンニは、胸を打って泣きました。どんな人の死であれ、必ず泣いてくれる人がいる、悲しんでくれる人がいるのです。
 最後に、死の瞬間に私たちは、人の幸せを求めるのです。彼らは言います。「僕はもう…本当にみんなの幸いのためならば、僕の体なんか百ぺん焼いてもかまない。」利己的で罪深い私たちですが、死を前にして他者の幸せを求めるのでしょう。既に世を去った私たちの先輩達は、きっと天国で、私たちの幸せを祈っておられるのでしょう。
 死は悲しく辛いものです。けれども死への旅立ちは、優しく穏やかに行われる。決して怖がらなくて良いよ。宮沢賢治はこのように、私たちに語りかけているのではないでしょうか。
 イコンを始め様々な聖画に描かれたイエス様のお顔には、どこか憂いがあるような気がします。それは、死すべき人間に対する、優しい眼差しではないでしょうか。けれどもその目の輝きは、決して悲しみだけではありません。死を越えるものへの希望と励ましの光が、灯っています。十字架の後には必ず復活がある。死で終わるのではなく、私たちは信仰によって永遠の命を得られる。イエス様は命の希望へと私たちを導いてくれます。
 私たちは愛する人の死を前にして、大いに悲しみます。悲しみ嘆き、大きな声で泣き叫んだら、私たちはまた、新たな歩みを始めるのです。人と交わり、愛する人を大事にし、食事をし、眠るのです。ジョバンニは力強く走ってゆくのです。


マリアの夏〜2010キャンプ・行事報告特集

日曜学校北小松キャンプ

○7月17日(土)18日(日)、復活学園北小松キャンプ場にて。

 今年は小学校が夏休みに入る前のキャンプにもかかわらず35名(幼稚園児含む)の子どもが参加。大人も部分参加を含め40名、総勢75名でキャンプをする事が出来ました。それも前日までの雨が嘘のように見事な快晴の中(非っ常〜に暑かったですけど。)でのキャンプ。全体的に時間は押し気味でしたが、用意したプログラムが全て出来た事、本当に感謝です。
 今年のテーマは『めざせ!トム・ソーヤ』。トム・ソーヤのように一つでも冒険・挑戦をしてもらおうと、キャンプ中折々に『トム・ソーヤの冒険』の話を聴きました。そして、【夕食の野菜を切る】【キャビン毎に松を植える】【イカダを作る】【肝試し】【イカダに乗ってみる】とこちらが用意した五つのプログラム。それらが子ども達にとって大きいか小さいかは判りませんが少しでも『冒険』だったり『挑戦』になっていたら嬉しいです。
 今年もたくさんの方々にお手伝い頂きました。《日曜学校のキャンプ》というものの現在の日曜学校の教師だけでは(もしくは若い衆のお手伝いだけでは)一泊二日のキャンプは出来ない状況です。でもこうして幅広い年齢層の方々に関わって頂き、今年も無事にキャンプが出来ました事、とても感謝しています。また、お祈りいただいたり、キャンプの為にと献金をいただいたり、美味しいパンを朝一で運んで下さったり・・・子ども達のためにたくさんのお気持ちに感謝しています。
 小さい怪我等はあったものの無事にキャンプを終え、一つ心残り・・・といえば、『浴衣姿のカエル男』の写真を撮り忘れた事でしょうか?
 来年の夏も・・・子ども達の為に沢山の関わりを、どうぞよろしくお願いいたします。主に感謝!(マーガレット 浦地愛)


京都教区小学生キャンプ

○8月2日(月)〜4日(水)、復活学園北小松キャンプ場にて。
 マリアよりの参加者=松本優平


24団ビーバー隊夏季キャンプ
「パイレーツ オブ ビーバー」

○7月17日(土)〜18日(日) 和知山の家にて。


ジュニアチャーチキャンプ

○7月24日(土)〜25日(日)、芦生キャンプサイトにて。


24団カブ隊 夏季カブホリディ
「目指せ!!キングオブカブ in 長命寺」

○7月30日(金)〜8月1日(日)、近江八幡長命寺にて。


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