~4月からの電力自由化~ 『再生可能エネルギーの推進』よりも『安さ』をアピール

(2016年2月28日朝日新聞掲載記事より)

2016年4月から一般家庭でも電力の購入先を選べるようになり、電力会社間で契約競争が起きています。今のところ、アピールの中心は「安さ」。価格競争の中でかすんでみえるのが、東京電力福島第一原発事故後に機運が高まった、再生エネの割合を高めようという視点です。電力会社を自由に選べるようになれば、原子力や二酸化炭素排出の多い発電所を持つ会社を避け、再生エネに力を入れる会社を支援できると期待されていました。

国が認可した電力事業者の一覧は資源エネルギー庁のホームページに出ています。ただ、どこから電源を調達しているかを示す「電源構成」を開示しているのはほとんどなく、消費者が再生エネに力を入れる事業者を調べるのは困難です。

情報が入手しにくい一因は、国が電源開示の義務化を見送り、事業者の判断にゆだねたためです。小規模事業者にとって開示の事務作業に手間がかかることなどを理由にしていますが、環境団体は開示に慎重な電力会社に配慮したのは明らかと反発しています。

ドイツでは、電源の100%が再生エネという事業者もあり、環境意識が高い人たちが選んでいます。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの柏木愛さんは「少しぐらい高くても環境にいい電気がほしい、という人は日本にもいる。現状は関心を持っている人ほど選ぶに選べない」と話しています。

再生エネを応援したい場合、どうすればいいのでしょうか。
ネット上の比較サイトをみると、料金以外に電源構成や二酸化炭素排出といった項目もあります。ただ、現在のところ、環境項目に回答していない会社も目立っています。逆に料金の表示は一切せず、独自の環境基準をもとに推薦する電力会社を紹介しているのが、環境保護団体などでつくる「パワーシフト・キャンペーン」のホームページです。事務局は公表資料をもとに再生エネに対する各社の取り組みを調査し、事業者に面談したうえで推薦対象を決めています。これまでに認可申請中を含めて10社を推薦しました。同事務局は「環境に配慮した電力会社の契約数が増えれば、再生エネの比率は上がっていく」としています。

■再生エネを電源の中心にする主な新電力会社
(2016年2月27日現在で「パワーシフト・キャンペーン」の基準を満たし、2016年度中に供給開始を目指す事業者の一覧。※の事業者はグループ内の子会社が予定)

◇4月1日から供給開始予定
 <水戸電力/水戸市>
 事前予約を受け付け中。茨城県中心の東京電力管内に供給
 <Looop/東京都文京区>
 3月中旬に契約プラン発表。東京電力、中部電力、関西電力の営業地域
 <みんな電力/東京都世田谷区>
 事前予約を受け付け中。4月以降は27の発電所を選択可能。首都圏中心に9都県に供給
 <みやまスマートエネルギー/福岡県みやま市>
 事前予約を受け付け中。当面は九州電力管内(離島除く)に供給

◇2016年度中に供給予定
 <トドック電力/札幌市>
 コープさっぽろの組合員の家庭が対象。6月から供給目指す
 <千葉電力/千葉県八千代市>
 4月の供給開始を目指し事前予約中。一般家庭向けは遅れる可能性も。東電管内
 <パルシステムグループ(※)/東京都新宿区>
 9都県にある生協「パルシステム」組合員の家庭が対象
 <生活クラブエナジー/東京都新宿区>
 21都道府県にある生協「生活クラブ」組合員の家庭が対象。首都圏1500世帯は6月、ほかは今秋以降の供給予定
 <湘南電力/神奈川県平塚市>
 事業用高圧電力の安定供給を優先。一般家庭向けは今秋以降の見込み

■パワーシフト・キャンペーンなどが示す、環境を重視した電力会社を選ぶ際のポイント
・電源構成などの情報を開示している
・電源の中心は風力、太陽光、小水力、バイオマス
・原子力発電や石炭火力発電は極力使わない
・地域や市民に根付いた活動を重視
・大手電力会社と資本関係がない
・親会社に石炭、石油会社がない

 

また、『再生可能エネルギー』と一言で言っても、必ずしもエコとは限りません。
例えば、再生可能エネルギーの中でも、バイオマス発電だけは燃料を必要とします。バイオマス発電は、廃材や産業廃棄物、糞尿や、トウモロコシやサトウキビを原料に精製されるバイオエタノールなどを原料にした燃料を使って発電することですが、これらの燃料の確保には、慎重に臨まなければなりません。
バイオエタノールを燃料にする場合は、本来食物であったトウモロコシやサトウキビを大量に必要とするため、食料問題につながりかねません。実際生産地では、すでにこれらが高騰するという問題が起きています。また、耕作をするために広大な土地が必要になり、米や野菜、果物が、トウモロコシやサトウキビに転作され、食料不足が起きる可能性も指摘されています。さらに、土地を確保するために山林や熱帯雨林などを切り開いてしまっては何の意味もありません。
他にも、廃材の確保が難しい場合には、森林資源の乱獲が懸念されています。
自然エネルギーを利用するために自然を破壊するという本末転倒な事態は避けなければなりません。その地域で産出される廃棄物を燃料資源として、上手に活用できるような仕組み作りが大切なのではないでしょうか。
是非『安さ』だけではなく、長い目で見て本当に良いと思う電気の調達方法を、じっくりと調べて選んで頂ければと思います。

(2016年2月29日赤旗新聞掲載記事より)

ドイツでは1998年に電力事業が全面自由化されました。EU(欧州連合)全体で一つの電力市場を作るためです。2005年制度改革があり法律の改正を経て、電力の購入先を変える消費者が増え始め、小売り事業者も増え、卸取引市場が活発になっていきました。
ドイツでは1998年に電力事業が全面自由化されました。EU(欧州連合)全体で一つの電力市場を作るためです。当初は小売りと卸の循環が上手くいかず、2005年制度改革があり法律の改正を経て、電力の購入先を変える消費者が増え始め、小売り事業者も増え、卸取引市場が活発になっていきました。これにより再生可能エネルギーも爆発的に伸び、主要な電源となり、石炭は先細りです。原発も2022年末までに全て廃炉にする事が決まっています。電力自由化と再生可能エネルギーの進展は、ドイツのエネルギー事情を根底から変えようとしています。

一足先に自由化に踏み切ったドイツでも、当初はなかなか上手くいかなかったようですが、法律を改正する事で問題を解決していきました。その結果、今では再生可能エネルギーが主要な電源となり、2022年までにすべての原発を廃炉にする事が決まっています。自治体では再生可能エネルギー100%化を競い合うように目指し、原発にこだわり時代の流れから取り残された大手企業が存亡の危機に立たされています。

これから日本でもドイツのように、消費者が自ら電力を選びやすいよう、国がルールを定めていく事が必要だと思います。そして、国民一人一人が自分の使っている電気について関心を持ち、国のエネルギー政策に国民の意志が繁栄される社会となる事を願っています。