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『福島第一原発のような事故は再び起きる』 地震・火山研究者の6割が回答

(2016年3月20日福島民報新聞掲載記事より)2016年3月20日民報

地震や火山の研究者を対象とする共同通信のアンケートで、東日本大震災後も国としての防災対策の在り方は「根本的に変わっていない」として、教訓が生かせていないと懸念する意見が、回答者の9割近くを占めることが分かりました。

このアンケートは震災から5年をきっかけに、地震や活断層、火山の研究者120人に質問票を郵送し、27人から回答を得たものです。
東京電力福島第1原発事故のように、地震や津波と原発事故が複合する「原発震災」が再び起きるとする回答が6割超18人)に上りました。
また、26人(96%)が想定を大きく上回る地震や災害が「今後も起きる」と答えました。研究者自身の判断の誤りや、社会との関わりの薄さを反省する声もありました。


 

私はこのアンケートの回答者が2割程度だった事も気になります。8割の研究者はなぜ回答しなかったのでしょうか?防災問題に科学的に関与する立場である研究者が、もし原発についての言及を避けているのであれば、大変な事だと思います。

原発事故といえば、チェルノブイリ原発や福島第一原発をイメージする方が多いかもしれません。しかし、日本国内だけでも、これまで度々起こっています。1999 年 9 月に東海村 JCO 核燃料工場で、本来あり得ないはずの臨界事故が発生し、2名の従業員が死亡しました。2004 年 8 月には関西電力美浜3号炉で、容易に防止できたはずの2次系配管破断事故が発生し、5名の下請け作業員が亡くなっています。さらに志賀原発や福島第一原発では過去に発生していた臨界事故の隠蔽が明るみになっています。原発事故は実はとても身近なものであり、いつ起こってもおかしくないという事実を、私たち国民は自覚しなくてはならないと思います。

福島の子どもに、遊び、育つ権利を

(2016年3月13日赤旗新聞掲載記事より)2016年3月13日赤旗

福島県郡山市にある、『ペップキッズこおりやま』。ここは放射線を気にせず遊んでもらおうと、2011年12月に開館された屋内施設です。
福島県では自治体の屋内遊び場確保事業を活用して65施設が開設しました。その先駆けである『ペップキッズこおりやま』は毎年約30万人が利用する県内最大規模の施設です。郡山市の委託事業として、NPO法人・郡山ペップ子育てネットワークが運営しています。

小学校の体育館をしのぐ広大な空間に遊具がいっぱい。人間にとって基本的な36の動きを身につけられるといいます。70平方メートルの砂場や全力で走れるランニングコース、三輪車のサーキットやボール遊びの場所もあります。放射能のせいで、外で遊べない子どもが、親と共に県下各地から集まります。

ボールをかき分けて歩く「ボールプール」で5歳と3歳の娘2人と遊んでいた佐藤健太郎さん(36)は「外遊びはまだ不安だけど、ここなら安心。月3回の利用を子ども達が楽しみにしている」と話します。無料で利用でき、1回につき90分間遊べます。

ペップキッズこおりやまの運営にかかわる小児科医・菊池信太郎さんは、幼稚園児を調べ、原発災害の後体重の増え方が前年の3分の1ぐらいに落ちた事を明らかにしています。又、「福島の現状は、子どもが遊び、育つ権利の大切さを教えてくれました。私達大人の責任で、その権利を最大限に補償しなければなりません」と述べています。


 

5年前の原発事故は、福島の子どもから体力や遊び場を奪い、発育や人格形成に少なくない障害をもたらしました。
福島県郡山市で子育て中のあるお母さんは、震災以降子どもに一切外遊びをさせていないと言います。共働きで忙しく土日に車で遠出する事も難しいので、学校が無い日は子どもは家の中でゲームばかりしているそうです。多感な時期に外遊びを制限される事が、将来どのような影響を及ぼすのか、不安を感じていると話してくれました。そして、子どもに自然の中で思い切り遊ぶ思い出を与えてあげられなかった事に、罪悪感を抱いているそうです。
このような環境で子育てをする事は、親のプレッシャーも相当であり、家庭にも何らかの影響を及ぼすのではないだろうかと心配しています。

福島第一原発作業員の放射線被ばく 年5ミリシーベルト超3万2000人

(2016年3月7日赤旗新聞・福島民報新聞、9日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第1原発で事故対応に当たる作業員のうち、厚生労働省が白血病労災認定の基準の一つとする年間被ばく線量5ミリシーベルトを超えた人は、2016年1月末で延べ3万2000人余りとなった事が分かりました。原子炉内部の調査や使用済み燃料プールの核燃料搬出など困難な仕事が控えており、今後も被ばく線量が通常の原発より高くなるのは確実です。2012年度以降は、東電より関連会社の被ばく線量の方が大きく、その差も拡大しています。

 

作業者の被ばくに関しては、電力会社社員に比べ、請負会社などの社外の作業員の放射線被ばくが平均の4倍の線量にのぼることもわかりました。全体の9割近くが社外の作業員であるため、総被ばく線量では約30倍になります。より危険な業務に下請け作業員を当たらせているという実態が次々に明らかになってきています

 

福島第一原発事故後、原発作業員の入れ代わりは激しく、特に放射線量が高い現場では3か月ほどで被ばく線量の限度に近づいて原発を離れるケースもあるそうです。又、その危険に見合った待遇とは言えず、(月平均20万円程度で、除染作業員の方が待遇が良い場合もある)不満の声も上がっています。廃炉まで少なくとも40年はかかると言われるなか、今後ますます人材の確保が難しくなってくる事が予想されます。

福島第一原発は、現場の作業員の人々の努力のおかげで、かろうじて冷温停止状態が保たれています。私達は、彼らの努力に対する敬意と感謝を忘れてはいけないと思います。

そして原発作業員の方々の健康に対し、雇用後まで及ぶ確かな補償制度を国は早急に確立するべきだと思います。

高浜原発3・4号機 運転差し止め 稼働中で初めて

(2016年3月10日朝日新聞・福島民報・赤旗新聞掲載記事より)

2016年1~2月に再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、大津地裁の山本善彦裁判長は2016年3月9日、福井に隣接する滋賀県の住民29人の訴えを認め、稼働中の原発2基に対して初めて、運転を差し止める仮処分決定を出しました。福島原発事故の原因が解明されていない中で、地震・津波への対策や避難計画に疑問が残ると指摘。安全性に関する関電の証明は不十分と判断しました。

決定は直ちに効力を持ち、2基のうち4号機はトラブルで既に停止中のため、稼働中の3号機を関電は10日に停止します。一方で、決定の取り消しを求める保全異議や効力を一時的に止める執行停止を地裁に申し立てる方針です。それらが認められない限り、差し止めの法的効力は続きます。
安全性の立証責任は資料を持つ電力会社側にもあるとし、十分に説明できない場合はその判断に不合理な点があると推認されるという立場をとりました。

そして東京電力福島第一原発事故の重大性を踏まえ、原発がいかに効率的でも、事故が起きれば環境破壊の範囲は国境を越える可能性すらあると指摘。安全基準は、対策の見落としで事故が起きても致命的にならないものをめざすべきだとしました。そのうえで、前提となる福島原発事故の原因究明は「今なお道半ば」と言及。その状況で新規制基準を定めた国の原子力規制委員会の姿勢に「非常に不安を覚える」とし、新規制基準や審査について「公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」と述べました。

そのうえで、高浜原発の過酷事故対策について検討しました。電力会社が耐震設計の基本とする揺れの大きさ(基準地震動)について、関電が前提とした活断層の長さは正確といえず、十分な余裕があるとは認められないと判断しました。1586年の天正地震で高浜原発のある若狭地方が大津波に襲われたとする古文書も挙げ、関電の地震・津波対策に疑問を示しました。さらに、新規制基準でも使用済み核燃料プールの冷却設備の耐震性原子炉などに比べて低いレベルとされ、関電もプールの破損で冷却水が漏れた場合の備えを十分に説明できていないと述べました。

また、高浜原発の近隣自治体が定めた事故時の避難計画に触れ、「国主導の具体的な計画の策定が早急に必要」と指摘。「この避難計画も視野に入れた幅広い規制基準が望まれ、それを策定すべき信義則上の義務が国には発生している」と述べ、新規制基準のもとで再稼働を進めている政府に異例の注文をつけました

高浜原発から約30~70キロ圏内に住む今回の原告住民らは、過酷事故が起きれば平穏で健康に暮らす人格権が侵されると訴え、決定もそのおそれが高いと認めました。

高浜原発はもともと敷地が狭く、福島第一原発のように汚染水を保管できる場所もありません。それだけに、炉心溶融など重大事故が起きた場合に事故対処ができるのか疑問を抱かざるをえません。避難ルートも乏しいため、大地震が起きれば救援のための車両の運行もままなりません。

福島第一原発事故からちょうど5年。裁判所の判断は、まさに原発の安全対策の弱点を突いた格好です。二度と福島のような大事故を繰り返さぬためにも、原子力規制委や関電には、裁判所が提起した疑問を正面から受け止めるとともに、誠実に答える責務があると思います。

志賀原発直下に活断層 1号機廃炉強まる

(2016年3月4日朝日新聞・福島民報・赤旗新聞掲載記事より)

原子力規制委員会の有識者調査団が北陸電力志賀(しか)原発1号機(石川県)直下の断層について、「活断層と評価するのが合理的」とする評価をまとめました。活断層の可能性を否定できないとした昨年夏の評価書案に続き、これで評価が確定しました。
今後、志賀1号機の廃炉を懸けた議論は審査会合に移ります。調査団の判断は「重要な知見の一つ」として扱われ、北陸電が新たなデータを示すなどして、これを覆せなければ1号機は廃炉に追い込まれます。

問題になったのは三つの断層。1号機の真下を通るS-1断層は「地盤をずらす可能性がある断層(活断層)」との最終判断となりました。1号機と2号機のタービン建屋直下を走るS-2、S-6断層については「ずれが地表に及んでいないものの、12万~13万年前以降に活動した可能性がある」としました。
規制委は、前身の経済産業省原子力安全・保安院から活断層の追加調査を指摘された6原発を対象に有識者による現地調査を続けてきました。志賀1、2号機と日本原子力発電敦賀2号機(福井県)、東北電力東通1号機(青森県)について、活断層の可能性が指摘されました。原発立地の不適が今ごろ問題になるのは、建設当時のずさんな審査にあると考えられます。志賀1号機の安全審査は旧通商産業省と原子力安全委員会が1987~88年に行いました。北陸電はその際、断層の追加調査を実施しました。有識者調査団が活断層と指摘するのはその時の図面です。活断層を疑わせる試掘溝の断面が、なぜか見落とされた可能性が高いのです安全審査の公正さを疑わせますが、保安院はさかのぼって検証することに否定的な姿勢を崩しませんでした

~児玉一八原発問題住民運動石川県連絡センター事務局長の話~
より踏み込んだ表現で認識を示しており、活断層の可能性が否定できないというのが結論。北陸電力はデータを出してきても、活断層であることを否定できていません。北陸電力は、この結論を受け止めて志賀原発を廃炉にすべきです。
原子炉建屋の真下に断層がある1号機はアウトと宣告されました。2号機も、重要施設である冷却水を取水する配管やタービン建屋の下を通っている断層があります。改修して再稼働を目指すのではなくて、無駄なお金を使うのはやめて、資金や技術力は自然エネルギーの開発、普及に振り向けるべきではないでしょうか。
北陸電力は、9電力の先頭を切って原発から脱却すべきだし、それが最も賢明な判断です。今回の結論を県民に広く知らせ、廃炉を求めていく運動をいっそう強めたいと思います。

志賀原発1、2号機は、東京電力福島第1原発事故の直前から停止していますが、これまで北陸電の電力供給に大きな支障は出ていません。同社は大規模な水力発電も持つことで知られます。見通しの立たない原発再稼働に今後も資金を投入し続けるのは疑問です。
はたして、規制委は科学的根拠に基づき、厳正公平な判断を示せるのでしょうかー。
活断層の存在を無視した再稼働を許すことになれば、原発の安全規制そのものが揺らぐでしょう。

志賀原発・・・北陸電力が、日本海に面した能登半島の石川県志賀町に建設した原発。
福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)2基の原子炉があり、1号機は1993年に運転を開始し、出力は54万キロワット。2号機は2006年に運転を開始し、出力は135・8万キロワット。2007年、操作ミスで起きた1号機の臨界事故を8年間隠していたことが発覚。1号機ではその後も制御棒にかかわる事故が続きました。2011年3月から定期検査のため運転停止中。志賀原発には周囲に活断層がいくつもあり、2013年に北陸電がこれまで活断層でないとしていた、志賀原発から約1キロの福浦(ふくら)断層について活断層と認めています。

核燃料サイクルが経済性を持たない事実が明らかに

(2016年2月28日朝日新聞掲載記事より)

電力各社は「契約に関わる事項」などとしてMOX燃料の価格を明らかにしていませんが、貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されています。それを輸入本数で割ると、MOX燃料1本あたり2億604万~9億2570万円。時期でみると、99年の福島第一は1本2億3444万円なのに対し、直近の2010年と13年は7億~9億円台。13年6月に高浜に搬入されたものは1本9億2570万円となりました。 ウラン燃料の価格も非公表ですが、同様に98年7月輸入分は1本1億1873万円。13年10月の輸入分は同1億259万円で、13年6月輸入のMOX燃料はこの約9倍にあたります。
電力各社はMOX燃料の価格を明らかにしていませんが、貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されています。それを輸入本数で割ると、MOX燃料1本あたり2億604万~9億2570万円。時期でみると、99年の福島第一は1本2億3444万円なのに対し、直近の2010年と13年は7億~9億円台。13年6月に高浜に搬入されたものは1本9億2570万円となりました。 ウラン燃料の価格も非公表ですが、同様に98年7月輸入分は1本1億1873万円。13年10月の輸入分は同1億259万円で、13年6月輸入のMOX燃料はこの約9倍にあたります。

使用済み核燃料を再処理して作るウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料は、通常のウラン燃料より約9倍高価なことが、財務省の貿易統計などから分かりました。再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)などプルサーマル発電を行う原発で使われますが、高浜で使うMOX燃料は1本約9億円となっています。

プルサーマル発電は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する国の核燃料サイクル政策の柱とされます。核兵器に転用できるプルトニウムの日本保有量(47・8トン)を増やさない狙いもありますが、国内の再処理施設は未完成なうえ、コスト面でも利点が乏しいことが浮き彫りになりました

1本のMOX燃料で利用できるプルトニウムは多くありません。一方、燃料の値段は電気料金に反映されます。原発のコストに詳しい立命館大の大島堅一教授(環境経済学)は「安価になるからリサイクルするはずなのに、MOX燃料は逆に高価で、経済的におかしい。国は商業的にも技術的にも破綻している政策を続けており、負担は国民に回ってくる」と指摘します。

そもそも、MOX燃料は当初高速増殖炉で使うはずでした。しかし原型炉もんじゅ(福井県)は実現の見通しが立っておらず、プルサーマルが核燃料サイクル政策の軸とされます。電力各社は、16~18基の原発でプルサーマル発電をすれば年間6トン前後のプルトニウムを利用できると想定しています。しかし、青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場とMOX燃料加工工場は、稼働が大幅に遅れています。加えて、使用済みMOX燃料は建設中の加工工場で処理できず、その処分方法も決まっていません。

内閣府原子力委員会の小委員会は2012年、核燃料サイクルのコストの試算を発表しました。将来の電源に占める原子力の比率にかかわらず、使用済み核燃料を再処理せずに地下に埋める「直接処分」の方が、再処理してプルトニウムを利用するより安いとしています

(2016年3月3日朝日新聞掲載記事より)

2016年3月3日朝日
MOX計画の発端は、冷戦終結を受けて米国とロシアが2000年に結んだ核軍縮協定にさかのぼります。解体した核兵器のプルトニウムをMOX燃料にして、それぞれ原発と高速炉で消費することで合意しました。米国は07年に工場を建設し始めましたが、計画は思うように進んでいません。 代替案の「希釈処分」は、プルトニウムをほかの物質と混ぜて分離しにくくして、ニューメキシコ州にある核廃棄物隔離試験施設で地下655メートルに地層処分することを想定しています。米エネルギー省のモニツ長官は「(MOX工場に比べ)確実に技術的な挑戦が少なく、今からでも半分以下のコストですむ」と評価。MOX工場より15年以上早い20年代前半には搬入を始められるとしています。

米政府では、サウスカロライナ州で進めていたウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の建設を打ち切る方針を打ち出しました。核兵器の余剰プルトニウムをプルサーマルで利用する計画でしたが、総額400億ドル(約4・5兆円)ともされる費用高騰が「重荷」になっているからです。代替案として、プルトニウムをほかの物質と混ぜて捨てる「希釈処分」を検討しています。

米国が陥った苦境は「プルトニウム利用はコスト高で割に合わない」ことを改めて示すものです。費用面から考えてプルトニウムを地中に捨てざるを得ないという米国の判断は世界に影響を与えるでしょう。約100トンもつ英国もMOX燃料での利用をめざすとしながら、同時に地中に捨てる研究もしています。
「捨てる時代」が始まる中で、日本は再処理工場を新たに動かしプルトニウムをつくろうとしています。すでに50トン近くあり、主な利用先としていた高速増殖炉の開発が全く見通せないのに、です。核燃料サイクルが経済性をもたない事実から目をそむけず、原子力政策を見直すことが必要です

日本が核燃料サイクルから手を引けないのは、やめると原発を動かせなくなる事があります。原発のプールにある使用済み燃料が「資源」から「ごみ」に変わると、捨て場を見つけない限り、プールが満杯になってしまいます。このため、すべての使用済み燃料を再処理する「全量処理」という非現実的な政策を捨てられないのです。
しかし国際的に見ても、破綻している事が明らかとなってきました。これ以上リスクや負担を増やさないためにも、国民一人一人がエネルギー事情へ関心を持ち、正しい方向を示していく事が今求められているのだと思います。

~4月からの電力自由化~ 『再生可能エネルギーの推進』よりも『安さ』をアピール

(2016年2月28日朝日新聞掲載記事より)

2016年4月から一般家庭でも電力の購入先を選べるようになり、電力会社間で契約競争が起きています。今のところ、アピールの中心は「安さ」。価格競争の中でかすんでみえるのが、東京電力福島第一原発事故後に機運が高まった、再生エネの割合を高めようという視点です。電力会社を自由に選べるようになれば、原子力や二酸化炭素排出の多い発電所を持つ会社を避け、再生エネに力を入れる会社を支援できると期待されていました。

国が認可した電力事業者の一覧は資源エネルギー庁のホームページに出ています。ただ、どこから電源を調達しているかを示す「電源構成」を開示しているのはほとんどなく、消費者が再生エネに力を入れる事業者を調べるのは困難です。

情報が入手しにくい一因は、国が電源開示の義務化を見送り、事業者の判断にゆだねたためです。小規模事業者にとって開示の事務作業に手間がかかることなどを理由にしていますが、環境団体は開示に慎重な電力会社に配慮したのは明らかと反発しています。

ドイツでは、電源の100%が再生エネという事業者もあり、環境意識が高い人たちが選んでいます。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの柏木愛さんは「少しぐらい高くても環境にいい電気がほしい、という人は日本にもいる。現状は関心を持っている人ほど選ぶに選べない」と話しています。

再生エネを応援したい場合、どうすればいいのでしょうか。
ネット上の比較サイトをみると、料金以外に電源構成や二酸化炭素排出といった項目もあります。ただ、現在のところ、環境項目に回答していない会社も目立っています。逆に料金の表示は一切せず、独自の環境基準をもとに推薦する電力会社を紹介しているのが、環境保護団体などでつくる「パワーシフト・キャンペーン」のホームページです。事務局は公表資料をもとに再生エネに対する各社の取り組みを調査し、事業者に面談したうえで推薦対象を決めています。これまでに認可申請中を含めて10社を推薦しました。同事務局は「環境に配慮した電力会社の契約数が増えれば、再生エネの比率は上がっていく」としています。

■再生エネを電源の中心にする主な新電力会社
(2016年2月27日現在で「パワーシフト・キャンペーン」の基準を満たし、2016年度中に供給開始を目指す事業者の一覧。※の事業者はグループ内の子会社が予定)

◇4月1日から供給開始予定
 <水戸電力/水戸市>
 事前予約を受け付け中。茨城県中心の東京電力管内に供給
 <Looop/東京都文京区>
 3月中旬に契約プラン発表。東京電力、中部電力、関西電力の営業地域
 <みんな電力/東京都世田谷区>
 事前予約を受け付け中。4月以降は27の発電所を選択可能。首都圏中心に9都県に供給
 <みやまスマートエネルギー/福岡県みやま市>
 事前予約を受け付け中。当面は九州電力管内(離島除く)に供給

◇2016年度中に供給予定
 <トドック電力/札幌市>
 コープさっぽろの組合員の家庭が対象。6月から供給目指す
 <千葉電力/千葉県八千代市>
 4月の供給開始を目指し事前予約中。一般家庭向けは遅れる可能性も。東電管内
 <パルシステムグループ(※)/東京都新宿区>
 9都県にある生協「パルシステム」組合員の家庭が対象
 <生活クラブエナジー/東京都新宿区>
 21都道府県にある生協「生活クラブ」組合員の家庭が対象。首都圏1500世帯は6月、ほかは今秋以降の供給予定
 <湘南電力/神奈川県平塚市>
 事業用高圧電力の安定供給を優先。一般家庭向けは今秋以降の見込み

■パワーシフト・キャンペーンなどが示す、環境を重視した電力会社を選ぶ際のポイント
・電源構成などの情報を開示している
・電源の中心は風力、太陽光、小水力、バイオマス
・原子力発電や石炭火力発電は極力使わない
・地域や市民に根付いた活動を重視
・大手電力会社と資本関係がない
・親会社に石炭、石油会社がない

 

また、『再生可能エネルギー』と一言で言っても、必ずしもエコとは限りません。
例えば、再生可能エネルギーの中でも、バイオマス発電だけは燃料を必要とします。バイオマス発電は、廃材や産業廃棄物、糞尿や、トウモロコシやサトウキビを原料に精製されるバイオエタノールなどを原料にした燃料を使って発電することですが、これらの燃料の確保には、慎重に臨まなければなりません。
バイオエタノールを燃料にする場合は、本来食物であったトウモロコシやサトウキビを大量に必要とするため、食料問題につながりかねません。実際生産地では、すでにこれらが高騰するという問題が起きています。また、耕作をするために広大な土地が必要になり、米や野菜、果物が、トウモロコシやサトウキビに転作され、食料不足が起きる可能性も指摘されています。さらに、土地を確保するために山林や熱帯雨林などを切り開いてしまっては何の意味もありません。
他にも、廃材の確保が難しい場合には、森林資源の乱獲が懸念されています。
自然エネルギーを利用するために自然を破壊するという本末転倒な事態は避けなければなりません。その地域で産出される廃棄物を燃料資源として、上手に活用できるような仕組み作りが大切なのではないでしょうか。
是非『安さ』だけではなく、長い目で見て本当に良いと思う電気の調達方法を、じっくりと調べて選んで頂ければと思います。

(2016年2月29日赤旗新聞掲載記事より)

ドイツでは1998年に電力事業が全面自由化されました。EU(欧州連合)全体で一つの電力市場を作るためです。2005年制度改革があり法律の改正を経て、電力の購入先を変える消費者が増え始め、小売り事業者も増え、卸取引市場が活発になっていきました。
ドイツでは1998年に電力事業が全面自由化されました。EU(欧州連合)全体で一つの電力市場を作るためです。当初は小売りと卸の循環が上手くいかず、2005年制度改革があり法律の改正を経て、電力の購入先を変える消費者が増え始め、小売り事業者も増え、卸取引市場が活発になっていきました。これにより再生可能エネルギーも爆発的に伸び、主要な電源となり、石炭は先細りです。原発も2022年末までに全て廃炉にする事が決まっています。電力自由化と再生可能エネルギーの進展は、ドイツのエネルギー事情を根底から変えようとしています。

一足先に自由化に踏み切ったドイツでも、当初はなかなか上手くいかなかったようですが、法律を改正する事で問題を解決していきました。その結果、今では再生可能エネルギーが主要な電源となり、2022年までにすべての原発を廃炉にする事が決まっています。自治体では再生可能エネルギー100%化を競い合うように目指し、原発にこだわり時代の流れから取り残された大手企業が存亡の危機に立たされています。

これから日本でもドイツのように、消費者が自ら電力を選びやすいよう、国がルールを定めていく事が必要だと思います。そして、国民一人一人が自分の使っている電気について関心を持ち、国のエネルギー政策に国民の意志が繁栄される社会となる事を願っています。

原発事故から5年 いまだ消えない不安と溝に苦しむ母親達

(2016年2月23日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故からまもなく5年がたちます。除染などで放射線量は下がりつつありますが、日々の暮らしやなりわいなど至るところに事故の影響はなお残っています。
東京電力福島第一原発事故からまもなく5年がたちます。除染などで放射線量は下がりつつありますが、日々の暮らしやなりわいなど至るところに事故の影響はなお残っています。

東京電力福島第一原発事故からまもなく5年が経過します。

いまだ7万人もの人が政府の指示で避難を続けているとはいえ、福島県ではスーパーに並ぶ地元産の食材を買う親子も増え、子ども服がベランダで揺れるようになりました。しかし、事故前の日常を取り戻せない人も少なくありません。人々の間に生まれた溝は、時がたっても埋まりません。

事故直後に親子3人で、福島県沿岸部から郡山市に引っ越した母親(40)もその溝に苦しんでいます。5年生の娘(11)はクラスメートが給食を配膳し始めると、ランドセルからお弁当をとり出します。給食には放射性物質の検査を通った県内産の米や野菜が使われています。しかし、母親は娘の体への影響を心配し弁当を持たせています。

娘は「机を並べている他の子と違っていても、気にならなくなった」と言います。でも、クラスメートに「給食を食べないなんてノイローゼ?」と陰で言われているのも知っています。仲良しだったが今は口をきかないそうです。母親は「いつか娘が病気になるかもしれない。そう思うともう押しつぶされそうで」と話しています。
福島県教委職員は「数は多くないとはいえ学校に弁当を持ってくる子はいる。屋外の運動会でマスクをしたまま徒競走をする子もいる。放射能への思いは様々で強要できない」といいます。

(2016年2月21日福島民報新聞掲載記事より)

平成27年度の学校給食の福島県産品活用割合は27.3%で、前年度を5.4ポイント上回り、三割近くまで回復しました。
2015年度の学校給食の福島県産品活用割合は27.3%で、前年度を5.4ポイント上回り、三割近くまで回復しました。

上記のグラフから分かるように、福島県内の学校給食では福島県産品の活用率が震災後から年々上がっています。
郡山市在住の、ある小学生の子を持つお母さんは、震災以降福島県産の飲食物は一切購入せず、北関東の食品の購入でも躊躇しています。それでも、子どもの学校給食は仕方が無いので食べさせているのだそうです。震災から5年経った今も食品への不安に変化は無く、今後もずっと福島県産は避けるつもりでいる、とお話してくれました。
福島では、誰にも言えず1人で不安を抱えているお母さん達が沢山います。母親の緊張感は、子どもや家庭に少なからず何らかの影響を及ぼす事と思います。学校給食に福島県産を活用する事は、復興のアピールになるのかもしれませんが、そのようなお母さん達の気持ちに寄り添う事も大切な事だと思います。

この他にも同新聞では、母子避難をきっかけに離婚したケースや、賠償金を理由に誹謗中傷を受け傷ついている母親のケースが紹介されています。

中京大学の成元哲(ソンウォンチョル)教授らは事故後から継続して、福島市など9市町村で、事故当時1~2歳の子どもがいた母親を対象に以下の調査をしました。2015年回答を寄せた1200人余りの5割「(福島での)子育てに不安がある」と答えました。「地元産の食材を使用しない」の項目では、「あてはまる(『どちらかといえば』を含む)」が、事故後半年の8割超からは大幅に下がりましたが、まだ3割近くいました。賠償には7割以上が「不公平感がある」と答えました。成教授は放射能への不安は人それぞれで対策が難しい。せめて不満の矛先が避難者に向かわないような施策が必要だ」と述べています。

人の心が形成されるうえで一番大切な子どもの頃、その日々が放射能のせいで傷つく事が無いように、子育てに安心して取り掛かれる環境を取り戻すことが、今しなければならないことなのだと思います。手遅れになる前に・・・・。

もんじゅ廃炉3000億円 原子力機構2012年に試算

(2016年2月16日福島民報、2月17日福島民報・赤旗新聞掲載記事より)

高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構が、もんじゅを廃炉にするには30年間で約3000億円の費用が必要との試算を原発事故の次の年に行っていたことが分かりました。原子力機構は「当時、もんじゅの存続の是非が議論されたため、内部で試算した」としています。

もんじゅの廃炉費用が明らかになったのは今回が初めてで、その額は通常の原発の数倍に上ります。もんじゅにはこれまで1兆円超がつぎこまれ、再稼働する場合も改修費など1000億円超が必要です。運転を再開しても廃炉にしても、さらに巨額の費用負担が発生する実態が明らかになりました。

 

『もんじゅ』は、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出すことから“高速増殖炉”と呼ばれます。政府は「夢の原子炉」として、使用済み核燃料の再処理工場とともに核燃料サイクルの両輪と位置付け、1兆円を超える多額の国費を投入して研究開発を続けてきましたが、事故やトラブルが後を絶たず運転実績はほとんどありません。2012年には大量の機器の点検漏れが発覚、原子力規制委員会が13年5月、事実上の運転禁止命令を出しました。

では、もんじゅはなぜ今まで運転を続けてきたのでしょうか?それは、運転をやめる事が出来ない色々な理由があるからです。日本はすでに、核兵器数千発分に相当する47トン以上のプルトニウムを保有しており、もんじゅなどでプルトニウムを利用することを理由に、その保有を国際的に容認されています。もんじゅの廃炉などで、その前提が崩れれば、「日本も核兵器に転用か」といった国際的疑念が高まりかねないからです。
又、核のゴミの問題もあります。高速増殖炉は核のゴミのリサイクルを目標に研究開発されていましたが、実際は失敗続きで破綻しています。しかし、核燃料サイクルが不可能である事を認めれば、原発が『トイレの無いマンション』であると認めてしまう事になります。原発の再稼働や核の輸出を目指している政府や電力会社としては、それでは都合が悪いため、やめるにやめられない状況となっているのです。

もんじゅの継続が、問題の先送りでしかない事は明らかです。無駄な国費がこれ以上費やされる事の無いように、一刻も早く廃炉へと進む事を願っています。

除染ごみ 搬出遠く ―中間貯蔵施設用地取得1%―

(2016年2月13日・17日福島民報・14日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の予定地は、福島第一原発を取り囲むようにしてあります。放射線量が高く人が許可なく立ち入れない「帰還困難区域」です。福島県と大熊、双葉両町が除染廃棄物の搬入受け入れを決めてから、間もなく1年を迎えます。
又、除染廃棄物を中間貯蔵施設建設予定地内の保管場に搬入する“パイロット(試験)輸送”は、順調に進めば2016年3月中にも完了する見通しです。
しかし、中間貯蔵施設建設予定地の用地交渉は進んでおらず、施設整備と廃棄物の本格輸送を始める見通しは立っていません。交渉の結果予定地の取得が出来たのはわずか1%未満に留まっています。福島県内の復興に欠かせない施設ですが、交渉に携わる人手不足が深刻であり、地権者からは「先祖伝来の土地を手放したくない」という複雑な思いも聞かれます。

一方、福島県によると除染廃棄物の仮置き場は、ほぼ満杯に近い状態です。
中間貯蔵施設への本格輸送開始に見通しが立たない事で、新たに出た除染廃棄物の行き場は無く、住宅や事業所などの除染現場敷地内に置かざるを得ない状況となっています。
私の住む郡山市でも、普段外を歩いていると、道路の至る所に除染廃棄物が置かれているのが目に入ります。一軒家では、自宅の除染で出た汚染土を庭の下に埋めています。除染によりいくらか線量が下がったとはいえど、庭の下に汚染土が埋まっているのは気持ちの良いものではありません。ここで生活していく上では、放射能を忘れる事は出来ないのです。

当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
当プロジェクトの事務所付近にあるアパートの軒下に置かれた汚染土
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子
除染で出た放射性廃棄物を埋める為に、庭に穴を掘っている様子

福島の復興のためには、放射性廃棄物の行き場を定める事は急務です。
このまま、除染廃棄物がある風景の中で、次の世代が育って行く事は心配です。未来のある子ども達の為にも除染廃棄物の受け皿となる中間貯蔵施設を早く作って欲しいという想いはありますが、中間貯蔵施設予定地の方にとって人生が詰まった『家』を手放す事を迫られる心情を考えると、その解決の難しさを感じています。