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■管区事務所だより第197号もくじ■

Page1 □海の日を前にして □聖公会生野センター法人化記念講演会を終えて □「第15回歴史研究者の集い」終わる □南アフリカ聖公会・ハイベルド教区から
Page2 □会議・プログラム等予定 □主事会議 □各教区・諸団体他 □人事・移動 □各種お知らせ(人権セミナー・The Liturgical Desk Calendar・新刊紹介)


 
管区事務所だより
2005年6月25日 第197号
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□海の日を前にして □聖公会生野センター法人化記念講演会を終えて
□「第15回歴史研究者の集い」終わる □南アフリカ聖公会・ハイベルド教区から


海の主日を前にして


管区事務所総主事 司祭 ローレンス 三鍋 裕
   最近飛行機のトラブルが続いているようですが、幸い大きな事故にはなっていません。「お気を付けて」と送り出されても乗客として乗る身には気を付けようがありません。飛んでいるときはともかく、着陸時には緊張します。ビルのような巨体がいきなり地上に停止する瞬間ですから。パイロットも大変でしょう。超音速機コンコルドが引退したと思ったら、総2階建てのジャンボ機が登場するそうです。あんな大きな物体が空から落ちずに飛んでいるのが不思議なのですが、大丈夫なのでしょうか。

 尼崎で大きな鉄道事故がありました。犠牲者の方は本当にお気の毒だと思います。今までは気が付きませんでしたが、運転士は過密ダイヤの中で何秒かの遅れを気にしながらスピード調整をしているようです。回復運転とか日勤教育という言葉さえ知りませんでした。スピードと便利さはありがたいけれど、それに伴う危険と働く人の心労を思うとき、ブレーキをかけたくなります。目下、リニアモーターカーを研究中で、完成すれば東京・大阪が1時間。でも、お金もかかりますし、私は今の新幹線で十分です。

 陸路では東名高速の恐ろしいこと。前後左右を高速運転のトラックに囲まれれば視界も遮られ、自分だけ減速するわけにも行きません。どのトラックも決められた時間に目的地に荷物を届ければならないそうです。スピードを上げざるを得ないのです。運転手も命がけです。私は恐ろしいから、交通量の少ない中央道しか使いません。

 海運も大変なんですよ。タグボート韋駄天がマラッカ海峡で海賊に遭って3人が拉致された事件がありましたが、この海峡は船団のように船が列をなして通行する難所。ちょっと進路を誤れば多量の油流出事故につながります。オイルタンカーは中東の港に入っても接岸することはあまりありません。太いパイプだけを繋いで油を船のタンクに移して出港します。日本から往復2ヶ月でしょうか。日本の港でも油を降ろしたら直ぐに出港。短い停泊時間も多くの書類事務、エンジンの整備や食料補給などで航海中以上に大忙し。20人余りの密閉集団の生活で、この繰り返しでは精神的に疲れます。鉄鉱石の船も似たようなもの。ネオン輝く港では鉄鉱石は積みません。山奥の鉱山から専用鉄道を引いて、鉄鉱石を積み出すだけの町を作ります。会うのは港の労働者、カンガルーとチャプレンくらい。この意味では港のチャプレンの働きは大切な意味をもちますが、停泊時間が短くなったのはチャプレンにとっても苦労する点であります。鉄鉱石を満載した船がなぜ浮いているのかが不思議なくらいです。嵐も怖いといいます。船体が大きいから舳先に当る波の力と船尾に当る波の力では、力のかかり方が違います。大げさに言えば船が折れる危険があります。世界の港町を見学しながらなんて船員生活は昔の話、今は機械も人間も時間との競争に追われます。あまりにロマンのない世界です。

 海での労働の難しい問題は船員間の労働条件の格差です。同じ能力で同じ仕事をすれば同じ賃金が原則です。ILOやITF(International Transport Workers’Federation)もそのように原則を定めてはいます。しかし貧しいお国からの船員の労働条件は、実際には劣っています。自分の国の賃金水準と比べたら、分の良い仕事であるかもしれません。あるいは自分の国では仕事がないのかもしれません。しかし、彼らが安全基準を満たしていない船で働かされていることも多いのです。自分の国の港に入ることがない場合もあります。つまり長期間家族に会うことができないのです。しかし、その家族のために働かなければなりません。ここでも効率が優先されます。

 今年は7月10日が海の主日です。海で働く人々とその家族のためにお祈りください。そして海で働く人々だけではなく、飛行機や空港、鉄道の運転士や保線区の人や駅で働く人々、トラックを運転する人や荷物を扱う人や道路を守る人、私たちが普段気にかけてはいなかったけれど私たちの生活を支えるために働いている数多くの人々を思ってお祈りください。多くは危険と緊張と孤独に耐えながら働いています。

 先日、真面目な方々の集まりで久しぶりに就寝前の祈りをご一緒しました。「確かなみ摂理により、わたしたちが生きるこの世界とその生活を支えてくださる神よ、どうか夜も働く人を守り、苦しみ悩む人を慰め、病気の人を強め、死に臨む人に祝福を与えてください。そしてわたしたちの生活が、互いの力によって担われていることを、深く心に刻むことができますように、主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン」

私たちが気が付かないところでなされている多くの人々の生活に、心を向けることができますようにと願います。




■聖公会生野センター法人化記念講演会を終えて
特定非営利活動法人 聖公会生野センター
総主事 呉 光現

 今年3月28日付で聖公会生野センターは「特定非営利活動法人 聖公会生野センター」になりました。そして5月29日には大阪教区主教座聖堂の川口基督教会にて第1回の会員総会と、それを記念して大韓聖公会ソウル教区次期主教の朴耕造(パク・キョンジョ)主教をお招きして講演会を持ちました。当日は関東3教区の訪問団を含めて約80名の出席のもとに開催できたことを感謝いたします。

 朴主教は30数年の牧会の経験をお持ちであると共に韓国の民主化にも尽力なさった方です。また、教界だけでなく環境問題への積極的な取り組みなど幅広い活動をなさっています。1980年代後半から開始された「分かち合いの家」運動、という社会宣教活動を積極的に支援してこられた方でもあります。

 記念講演は「分かち合いの家の霊性」をテーマにされました。講演では、チベット仏教の指導者のダライラマ師の著作などを紹介しながら、わかりやすく語られました。朴主教は、分かち合いの家のその基本的な精神と霊性を、以下のようにまとめられました。
@ イエスの福音を身体で生きる復活の証人にならんとする。
A 祈る人として生きようとする。
B 労働する人として生きようとする。
C 共同体で生きようとする。
D 正義のために闘う人として生きようとする。
E 貧しく生きようとする。

 朴主教は上記の精神をもとに、韓国でも貧しい人たちが集住する地域にてなされている「分かち合いの家」の活動は、私たちに「幸福」というものに対する問いかけをしていると指摘されました。幸福とは物質や名誉ではなく、つまるところ十字架を背負い、イエスにしたがって生きていく。そして神と一体になった時に真の幸福が得られる、と穏やかな語り口ながら明確に指摘されたことが印象に残っています。

 講演会の後は第1回の会員総会が持たれ、2004年度の事業報告、会計報告と2005年度の事業案、予算案が可決承認されました。

 聖公会生野センターはNPO法人化に伴い、会員組織として再出発しました。具体的には現場の働きを大切にしながらも、多くの人の参加とご支援をこれまで以上に仰いでいきたいと思います。それらを通して多くの会員を得て共に歩んでいくことになります。また以前どおり、私たちの基本精神は変わることなく、朴主教が指摘なさったように、イエスに従い、この世で苦難を受けている人たちに仕えていき、共生社会の実現を大阪生野から発信していきたいと思います。聖公会内外の人々と協働しながら、地域への関わりをより深く進めていく決意でおります。




■「第15回歴史研究者の集い」終わる

日本聖公会歴史研究会 司祭 大江真道

「第15回歴史研究者の集い」は、北海道教区の協賛を得て5月30日より6月1日まで、好天に恵まれ、岩見沢市毛陽の「メイプル・ロッジ」にて開催された。参加者は北海道教区の聖職2名を含めて24名であった。

 第一日目は全員JR岩見沢の駅に集合し、ロッジのバスで会場に到着。予定書通り午後3時から開会。現地幹事の村田文江氏のオリエンテーションの後、大濱徹也北海学園大学教授から「開拓・殖民と信仰・信心」という講話。参加者の自己紹介。夕食後は研究発表。「新天地のキリスト者」(鈴木直子氏)、「明治期の神戸を中心としたCMSとSPGの宣教」(吉田弘氏)、「国際日本文化研究センター発行の論文集『日本研究』30号の紹介」(大江満氏)、「管区・東京教区の歴史文書保管、その他」(諫山禎一郎氏)、「居留地問題、大阪教区歴史資料問題など」(西口忠氏)と、最終日に発表を予定していた分まで繰り込んで午後10時まで実施。

 第二日目の5月31日は、今回のメインのフィールドワーク(ツアー)で、午前8時40分に貸切バスでロッジを出発し、高速道路で石狩川上流の新十津川町に到着、開拓記念館を見学、土佐からのキリスト教信徒が開拓した浦臼町の資料館と聖園教会(日本基督教会)を見学。午後に月形樺戸博物館(刑務所─集治監)、当別町の伊達記念館、本庄睦男生誕地を見学して宿舎のメープル・ロッジに帰着した。その日の夕食は親睦・交歓会。

 6月1日の最終日は、残った発表「第19回国際宗教学宗教史学会世界大会(日本での開催は1958年以来2回目)の報告」(大江真道司祭)を聞いて、来年の開催地を協議(沖縄と決定)したあと閉会の祈りで解散。

 バチラー記念館を見学したい人たち16名は午前9時に北海道教区文書保管委員長の雨宮大朔司祭の案内で、3台の車で有珠聖公会・バチラー夫妻記念礼拝堂を訪問した。北海道教区が2000万円を投じて修理し、二階に新設した資料室を、雨宮司祭と中村一枝、三浦千晴教区文書保管委員の案内で見学、バチラー八重子さんの歌碑とお墓、さらに伊達市の噴火湾文化財研究所も訪問した。今回の「集い」は北海道教区のご協力を得て、実り多い研究集会であった。




■南アフリカ聖公会・ハイベルド教区から (2005年5月)

  ─ AIDS撲滅への取り組み ─

 南アフリカ聖公会(The Church of the Province of Southern Africa)は南アフリカ共和国、レソト(Lesotho)、スワジランド(Swaziland)、ナミビア(Namibia)、アンゴラ(Angola)、モザンビーク(Mozambique)の6カ国で形成され、25教区がある。ハイベルド(Highveld)教区はその内の一つである。

 南アフリカ共和国の人口は約4,483万人(80%がキリスト教信者)で、その内560万人がHIV陽性であり、AIDSに感染している人口は世界最多と思われる。毎日1,700人が感染し、2004年には25万人の子どもや成人がAIDSが原因で死亡した。残念ながらこの数は2007年には50万人に増加すると予測される。孤児や危険にさらされている子どもの数は限りなく増加している。

 ハイベルド教区は首都ヨハネスバーグの東に位置し、人口は約350万人、面積の80%は農村地域である。HIV/AIDS、高い失業率(ある地域では全人口の80%)、貧困、教育、住宅事情、保健衛生等が改善すべき問題である。ある地域ではHIV/AIDSの感染率は56%と非常に高い。

 ハイベルド教区は過去13年間にわたりAIDS撲滅のための活動をしている。大きな観点でこの問題を解決する事を試みており、問題提起、病気に対する教育や予防、在宅治療、孤児や感染の確率の高い子どもたちとプロジェクト管理。治療に従事する人のためのケアー、健康保持のための助言や支援などに取り組んでいる。

 プログラムを開始以降16,500人にHIV/AIDSや文化・道徳・宗教との関連の教育をした。具体的には性教育・人間の性の問題・死と生殖等について教育をした。教育の方法は教区内の聖職者、信徒、若年層、他の関連団体の人々を対象に教区主催の問題提起のためのワークショップやセミナーである。教区が主催する教育活動の他に各個教会が主催する教育活動があり、教育を受けた人の数は上記の数以上である。

 発病し死亡する人の数の増加と比例して、病院や保健所の負担が増加し、対応出来なくなってしまう。このために在宅医療に力を入れ出した。病院や保健所と連携しながら、HIV/AIDSの教育や家族のケアーなどを行なう在宅ケアーの専門家の養成がとても重要である。

 ハイベルド教区は今までにこのような在宅ケアー専門の人材を1,100人育成した。また、26個所の在宅ケアーセンターを立ち上げたが大半が農村地域にあり、地域密着型である。各ケアーセンターは独立して運営されているが(ほとんどがNPO法人)、教区の役割は、センターの運営はその地域に任せて、センターが満足に機能を果たしていることを確認する事である。また、在宅ケアーに従事している人材の管理・監督、継続した教育などに重点を置いている。牧会に関してはケアーを提供する人たちのために毎月聖餐式を共にする。ケアーを提供する人たちが集まって経験を共有したり、直面する困難な立場を語り合う事によって、更に各人の能力が改善される事が多い。

 2005年4月に、ある地域で教区主催のワークショップが行なわれた。この地域には350人の患者がいる。また、81名の孤児の世話もしている。どの地域でもこの状況と同様である。ケアー提供者の再教育にも教区としては力を入れており、2005年5月に1週間の期間で、ある地域の60名のケアー提供者の再教育を行なった。同じ様な計画は、全員のケアー提供者が再教育を受け終わるまで継続する予定である。

 教区は保育所や託児所4箇所を設立するための支援を始めた。HIV/AIDSに感染している両親の家庭で充分世話を受けていない子どもたちを地域で活動しているケアー提供者がみつけ、施設を紹介する。このような状況に置かれた子どもたちの80%がHIVに感染している事がわかっている。この活動のために幾つかの教会が人材や資金を提供し支援している。教区はこのように子どもの世話を重点的に行なう中心的な人材の育成に力を入れたいと考えている。彼らは教育・訓練を受けた後には子ども向けのプロジェクトを立ち上げたり、運営の管理責任を持ち、地域の人々と責任を分かち合う事が出来る。教区はこのような人たちを毎年60名程度育成する計画である。このようにして出来るだけ多くの教会が地域に密着しながらHIV/AIDS撲滅の働きに加わることを希望している。


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 上記のように、ハイベルド教区は多くの活動を行ってきたし、更にもっと多くの事に関らなければならない。HIV/AIDS撲滅活動を支援するために、心温まる支援を頂いている日本聖公会には心より感謝します。そのおかげで教区が多くのHIV/AIDSの影響を受けている地域住民に必要な支援をする事が出来ました。日本聖公会の人々と同じ思いで、この活動を共に推進できる事を誇りに思います。本当に有難うございます。

司祭 Lynne Coull,
HIV/AIDS コーディネーター

■日本聖公会では、重債務国開発援助活動の一部として、ハイベルド教区が取り組んでいるHIV/AIDS撲滅対策のために、2003年より5年間をめどに、年間1万ドル献金をしております。


管区事務所だより Jun. 01

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