「らくだ半人前!」                 主教 ステパノ 高地 敬


 W市のWラーメンは全国的に有名です。前にWラーメンの店に行ったとき、立って待っている人が何人かいて、店員さんが「御注文、先に伺います」と言うので、「Wラーメンとおすし」と頼みましたら、店員さんはけげんそうな顔をしました。「おすし」は、ちゃんと壁に書いてあったのですが、一緒に行った方から、「Wではそんな注文の仕方をすると恥ずかしい」と言われました。何でだろうと思いながらテーブルに着くと、各テーブルの上には一口大のお寿司やゆで卵が置いてあって、それを勝手に食べて、あとで自己申告して支払うのだそうです。そんな説明はどこにも書いてありませんし、よそ者には分かりにくいシステムでした。
 確かに「あっ、よそ者だ」という目で見られて少し恥かしいのかも知れないけど、そんなことするのはWだけだろう。Wのシステムの方が珍しいんじゃないのかと思いましたが、そこはぐっとこらえておりました。
 その中でだけ通用するやり方があって、その中の人には便利で当たり前だけれど、「よそ者」には分かりにくいし、なんとなく恥ずかしい。こんなことはWだけでなく、どこにでもあることなのでしょう。特に教会にはこんなことがたくさんあるようです。
 聖餐式の奉献の後、会衆がひざまずくところで、気が付かないで立ったままの人がいます。気が付いた時は恥ずかしいのだと思います。でも、「会衆はひざまずく」という文字は私のような老眼では読めないし、「ひざまずくんですよ」とだれも教えてくれないし、「間違ってるよ」と教えることにも勇気がいるのでしょう。
 イエス様のように、誰か、飛び切りの優しい笑顔で、私の間違いをそっと教えてくれないでしょうか。


(教区主教)