らくだの道草                 主教 ステパノ 高地 敬

 このごろ失敗が多くて、眼鏡は失くすし、鍵は落とす。このお正月、出したはずの年賀状が返ってきて、見たら宛先を全く書かずに出しておりました。だれ宛のものだったのかも分かりません。どなたか届いていない人がいらっしゃったら、この場を勝手にお借りしてお詫びいたします。書いたものを一回見直すだけの慎重さも私には無いようです。
 ヨーロッパのジョークにこんなものがあります。 「D人は考えてから走る。E人は考えながら走る。I人は走ってから考える。」どれほど慎重か、それぞれの国民性を示していて面白いのですが、私はどのタイプでしょうか。「考えもしないし、走りもしない」?
 先日、電車が濃い霧のためゆっくり走ったので、約束の時間にかなり遅刻してしまいました。「いつも通り速く走ってくれ」と願いながらも、周りを見ると本当に濃い霧で、20メートル先が全く見えません。これでは仕方がない。前がよく見えないときはゆっくり走らなければなりません。でも、前がよく見えなくても、I人のように突っ走ってしまうことが私たちにはしばしばあります。あせればあせるほど失敗が多くなり、気持ちが休まる時も少なくなります。
 旧約聖書の出エジプトの旅では、迂回しても千キロほどの距離を40年もかけて進みました。人々が不信仰だったり慎重だったと言うよりは、神様がブレーキをかけて一日平均70メートルという亀のようなスピードで徐行させられたのではないでしょうか。
 車だったら一日で済むところを神様は、「思い上がらないできちんと40年かけなさい」と私たちに言われます。そして、一日がんばっても10メートルほどの日や、後戻りする日も神様はちゃんと用意してくださっておりました。

(教区主教)