らくだのラッキーセブン       主教 ステパノ 高地 敬

  

 プロ野球の落合元監督が、「長嶋さんは、その日だけしか観戦できないファンのために毎回の試合で全力を出し切っていた」とテレビで話していました。長嶋監督は毎回総力戦をしたが、自分は優勝することを最優先にして戦ったというのです。
 毎回全力を出すと、次の日のピッチャーがいなくなったりして長続きしませんし、優勝からは遠のいてしまいます。けれどもファンあってのプロ野球。ファンのためには、毎回見ごたえのある試合をする。先のことは考えないというより、今をとても大事にする。負けが濃厚になってきても力の出し惜しみをせず、最後まで逆転を狙う。一方で、ファンは優勝を心から願っている。勝つ見込みがなくなってきたら切り札の投手は使わず、長続きする戦い方をして是が非でも優勝する。このどちらもサービス精神一杯なのですが、どのようにサービスするかについての考え方が全く違っています。
 長嶋監督か落合監督か、人によって生き方のタイプがずいぶん違います。皆さんはいかがでしょうか。今日はいいところは全然なかったけれども、人生全体で見れば、まずまず満足のできる結果になるようにするのか、それとも、気持ちのこもったいい日を一日一日過ごすのか。
 イエス様はどんなタイプの方だったでしょうか。当時の偉い人々を怒らせたり、命知らずでエルサレムに行ったりして、先のことを考えない無鉄砲さがあります。後にも先にもたった一回だけの試合を総力戦で負けてしまって、全く見ごたえのない試合だった。ただこの試合は、世の中の負けを全部イエス様ご自身が引き受けるためでありました。どのような人の期待もはるかに超える試合で、それを知った人が決定的に負けることが決してないためという、神様のお恵み、サービスがこれでありました。

(教区主教)