らくだの揉み手       主教 ステパノ 高地 敬

  

 もうずいぶん前のこと、教会の保育園の保護者の方が、「教会では手を合わせるのはこうですか、それともこうですか」と言って手を組む(指を組む)形と手を合わせる(手のひらを合わせる)形をして質問されました。「決まりはありません。人によってもいろいろです」とお答えしたと思います。それを聞いてその方はちょっと不満そうでした。もっとはっきりした答えが聞きたかったのでしょう。
 さて、冬場には私は手が荒れるのでハンドクリームを塗るのですが、先日両手の甲をこすり合わせていたら、「黒い服着てて、ハエみたい」と相方に言われ、そんなにはっきり言わなくてもいいのにと、とてもがっかりしました。「ハエ」は「取るに足りないもの」という意味かも知れませんから、そういうものに見てもらって感謝すべきだとは思うのですが、もう少しいいものに見えるのではないか思うのです。たとえば礼服を着てパーティー会場に到着したけど、手が冷たいのでこすり合わせている白ヤギとか、何かを洗っているアライグマとか。
 それと、手をこすり合わせているのですからお祈りしているようにも見えないでしょうか。手のひらではなく手の甲だから少し無理かもしれませんが。
 「やれうつな/はえが手をする/足をする(一茶)」
 (仏様を拝むように、ハエが命乞いをしている。手だけでなく足まですり合わせている。だから、たたかないでおいてやろうや。)
 今度だれかに「取るに足りない者なのですが命だけは助けてやってくださいと、揉み手をして嘆願しているハエのようだ」と言われたら、「ブーン、ブーン、いつもそうやって一所懸命お祈りしてるんですよ」と応じられるようになるため、自分をハエのように磨きたいと思います。

(教区主教)