2022年5月29日     復活節第7主日(昇天後主日)(C年)

 

司祭 アンナ 三木メイ

「父よ、あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。彼らもわたしたちの内にいるようにしてください。」【ヨハネ福音書17:21】

 5月29日、復活節第7主日は、昇天後主日でもあります。主イエス・キリストが天に昇られたことを記念する「昇天日」は、イースターから40日目と定められており、今年の「昇天日」は5月26日です。そして、イースターから50日目が「聖霊降臨日」で、今年は6月5日。ですから今日は、「昇天日」と「聖霊降臨日」の中間の主日となります。
 使徒言行録1章には、キリストの復活と昇天について書いてあります。復活の主イエス・キリストは、生きていることを多くの証拠をもって使徒たちに示し、40日間にわたって彼らに現れて、神の国について話され、彼らと食事を共にし、聖霊の洗礼(バプテスマ)を授ける約束をします。そして、使徒たちが見ているうちに、イエス・キリストは天に上げられ、雲に覆われて彼らの目から見えなくなったが、彼らは天を見つめていた、と記されています。
 主イエスは、昇天により弟子たちの目には見えない存在になりました。それは弟子たちにとって、みなしごとなったような不安や寂しさや恐れをもたらすことであったかもしれません。しかし、イエスは、神の愛を信じる信仰によって、「いつもわたしはあなた方と共にいる」と約束してくださいました。その永遠の絆を信じる信仰をとおして、神さまは福音宣教を行っていく力を弟子たちにお与えになるのです。
 「復活」、「昇天」、「聖霊降臨」、この三つはキリスト教会にとって、語り継いでいくべき重要な出来事です。これらの出来事は、キリスト教会が誕生したプロセスを、よく物語っています。それは信仰における真実の物語であり、また信仰共同体における出来事です。
 しかしこれら三つの出来事は、キリスト教信仰をもたない、あるいは、キリスト教や聖書にあまり親しみのない人々にとっては、最も理解しがたい「出来事」だと言えるでしょう。肉体の死によって、この世のすべてのものや人との関わりが終わっていくのは、実際的な「死」の現実です。この三つの出来事は、それを否定するために書かれたのではありません。肉体的な「死」を越えて、神の愛と神とのつながりは続いていくこと、目には見えなくても共にいてくださるということ、「共にある」ことによって残された者が新たに生きる力を与えられること、それを主イエス・キリストの死を通して、神は私たちに示してくださったのだ、という信仰が、この3つの出来事の物語の中に表現されているのです。
 神は、この世の人々に愛を伝えるために、イエス・キリストをお遣わしになりました。主イエスは神の愛を伝えるために、十字架の上で死なれました。そのキリストの愛が、父なる神の愛と一つであることがわたしたちに知らされています。その愛を知り、愛を信じて、心の内にしっかりともち続けることによって、わたしたちと、キリストと、父なる神が一つとされ、「永遠の生命」に至る絆となります。ヨハネによる福音書17章のイエスの父なる神への最後の祈りには、そのことが記されているのです。
 わたしたちは現代社会において、さまざまな不安や悩みを抱えて生活しています。しかし、わたしたちは、キリストを通して神の愛を知らされ、その御姿が目に見えなくても、イエスに従って歩むことができる力を与えられています。永遠に続く神との愛の絆に感謝し、喜びをもって、主なる神の御名を讃美し、主の栄光を現す者として歩み続けましょう。