2022年10月30日     聖霊降臨後第21主日(C年)

 

司祭 サムエル 小林宏治

「人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。」
【ルカによる福音書第19章10節】

 今回は聖霊降臨後第21主日(C年特定26)の福音書の聖書個所からお話をします。福音書の小見出しは「徴税人ザアカイ」です。
 エリコの町にザアカイという人がいました。ザアカイは徴税人の頭で、金持ちでした。ザアカイは金持ちでしたが、幸せとは言えない生活をしていました。その原因はザアカイの職業にありました。ザアカイは徴税人でした。徴税人とは税を集める仕事です。当時の徴税人はローマ帝国に支配されていたユダヤの中で、ローマ帝国に税を納める働きをしていました。同胞から敵国のための税を集めていました。また、所定の金額以上に税を取り立て、私腹を肥やす人もいました。そのため、徴税人たち、とくにその頭であったザアカイは、同胞からいやな目で見られていました。
 そのようなザアカイに転機が訪れました。エリコの町にイエス様が来られたのです。ザアカイはぜひ会いたいと思いました。背が低かったザアカイはイエス様を見るために先回りして、いちじく桑の木に登りました。そこを通り過ぎようとされていたからでした。イエス様はその場所に来ると、上を見上げて言われました。「ザアカイ、急いで下りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエス様を迎えました。人々は皆つぶやきました。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった。」しかし、ザアカイは立ち上がって、主に言いました。「主よ、わたしの財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。」
 イエス様は言われました。「今日、救いがこの家を訪れた。この人もアブラハムの子なのだから。人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。」
 ザアカイはイエス様に出会って、自分のようなものを受け入れてくれる友を得ました。その喜びはザアカイの心に変化をもたらせました。そして、財産を貧しい人と分かち合いたいと思いました。
 わたしたちは、ザアカイがイエス様に受け入れられたように、ありのままを受けいれてくれる方を必要とします。神様はまさにそのような方なのです。
 イエス様はザアカイを捜され、救いを与えられました。このことはザアカイだけに限りません。神様は失われたものをそのままにしておかれないということです。神様から離れてしまったものを、神様の方から愛をもって捜し、救いを与えようとされるのです。この方がいつもわたしたちをみ守ってくださるのです。