羊のらくだ      主教 ステパノ 高地 敬

 

 随分前に食事の時、ある主教様のお連れ合いが同じテーブルにいらっしゃって、さあ食べようという時に、「山羊さんですか」と言われました。何のことだろうと思っていたら、今度は「メーメーで?」と言われ、「銘々」で食前の感謝の祈りをするのかどうか確認されたのだとようやく分かりました。
 最近、やはり同じことを言う方がおられたので、知らないのは私だけだったかと反省するのですが、でも、「メーメーは羊と違うか?『♪メーメー森のヒツジ森のヒツジ』ていうやろ?」、「森にいるのは山羊やろ」、「あー、『♪メーメー森の子ヤギ』か。」前にテレビでヒツジは何と鳴くかやっていました。あまり鳴かないようですが、やっぱり「メーメー」と聞こえます。
 童謡「めえめえ児山羊」の元はドイツの民謡だそうで、「小ひつじが森で走っていて小石につまずいた」となっています。やっぱり羊じゃないかと思うのですが、日本で童謡の歌詞が作られた時に何でこれが山羊になったのか。その頃、日本では羊より山羊の方が圧倒的に多かったので、少しは身近だったからでしょうか。
 羊は臆病で、川を渡る時など動けなくなってしまうので、群れの中に山羊を混ぜておくことがあるようです。そうすると、山羊が先に川を渡り、それにつられて羊が渡るそうです。聖書には、「羊を右に、山羊を左に置かれる」と書いてあって、羊の方が身近で有用だったから「右」のようですが、必要以上に強がったりしない、弱いことを隠そうともしない羊のようなものを神様は大切に思ってくださるからかも知れません。
 羊と山羊がよく似ているのと同じように、人間も外見ではよく分かりません。「一人では生きていけない弱虫の人、こっちに集まれ」と、神様がめいめいに右手を差しておられます。

(教区主教)