2010年2月7日  顕現後第5主日 (C年)


執事 アグネス 三浦恵子

 イエスさまが、ガリラヤ湖畔に立っておられると、神さまの言葉を聞こうとして多くの群集がイエスさまの元に押し寄せて来ています。神さまの言葉を聞きたいとイエスさまの元へ来た一人一人は、困難や苦悩を抱えているため、神さまに救いを求めて来た人たちでしょう。
 一方群集が押し寄せている同じガリラヤ湖畔で、漁師たちが夜通し舟を出しても収穫がなく、疲労感だけが残り網を洗い漁の片付けをしている漁師たちがいます。イエスさまは、漁の片付けをしているシモンの舟に乗り、群集に教え始められました。イエスさまが語られた神さまの話とはどんな話だったのでしょう。イエスさまはきっと、神さまの慈しみと愛を語られ、それによって多くの群集の疲れた心に力を与え、励ましと安心感を与えたのではないでしょうか。
 イエスさまは、シモンの舟に乗り、シモンに沖へ漕ぎ出し網を降ろし漁をするようにと命じられました。漁の経験が豊なシモンは、夜通し何も獲れず諦めた時でしたし、日の高くなった今ごろ、なおさら魚一匹捕れる訳がないと思ったことでしょう。でも「お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」と言いながら網を降ろしました。すると大漁となりシモン・ペテロは驚きました。それを見ていた漁師たちも群集も驚きました。シモン・ペテロは、日頃の漁の経験から、網を降ろしても無駄だと思いながら「お言葉ですから」と、イエスさまのご命令に応えたのです。このイエスさまとペテロとのやりとりの中に、教会の宣教の原点を見るような気がいたします。神さまは、ペテロをお選びになり、ペテロの降ろした網によって、群集も漁師たちも、二そうの舟が沈みそうなほどの大漁を見ることができました。大漁は、漁師たちだけではなくガリラヤ湖畔に住む人々の命の糧でもあります。驚きと同時に喜びも与えられたことでしょう。
 神さまの言葉を聞き、神さまの言葉に応えたペテロによって、漁師たちも神さまの不思議なみ業を見ることができ、イエスさまに従う人となったのです。このイエスさまに従う弟子たちによって、キリスト教の教会ができました。私たちは、弟子たちの降ろす網によって捉えられ、教会で神さまの福音を聞く恵に与る者となることがでたのです。神さまの言葉によって癒され、喜びを頂いた人は、更に多くの人へその体験を伝える働きに召されています。でも、私たちは、夜通し働いても結果も出せず疲れ果て、心が折れてしまう時があります。「もう無理だ」「私にはふさわしくない」と諦めてしまう時があります。そのような時、神さまは、私たちに語りかけてくださっています。そして、私たちが「お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」という時を待っていて下さいます。