2010年8月1日  聖霊降臨後第10主日 (C年)


司祭 アグネス 三浦恵子

 「80歳でも入れる保険」のコマーシャルの声が気になるようになりました。私自身の年齢が、病気や入院のリスクが高い年齢に達したということかもしれません。そして、それに伴う治療費が気になっているのかもしれません。そんな不安な気持ちに、コマーシャルに登場する男性は「ずっとあなたと」「かわらぬあんしん」を笑顔で繰り返すので、そのキャッチフレーズは私の心に届きます。少し若い年齢の頃の出来事を思い出しました。あるご高齢の方が、「老後のために」と、贅沢をせずお金を貯金していることを知った時です。その時の私から見ると、すでにその方はかなりご高齢に見えたので、もうそろそろ好きな物を食べるとか、楽しまないと人生が終わっちゃうのではという思いにさせられたのです。慎ましい生活に感心させられたけれど、我慢の生活をなさっているのではと、若い私には見えたのです。
 今日の福音書【ルカによる福音書第12章13−21節】の箇所にありますように、イエスさまのもとへ来て、「先生、わたしにも遺産を分けてくれるように兄弟に言ってください」とお願いした人も、金銭や物質によって「あんしん」を手に入れたかったのかもしれません。イエスさまは、たとえで諭されました。自分のために富を積まずに、神の前に豊になるようにと。金銭や物質では手に入らないものがあります。「孤独、寂しさからの解放」「あんしん」などです。大きな家と多くの財産を手中に収めても、「孤独感からの解放、あんしん」などを得ることは約束されていません。イエスさまはきっと、それぞれの持ち物を人と分け合うという行為によって、人に愛が伝わり「孤独感からの解放、あんしん」が生まれるということを教えられているのだと思います。分け合うものは、食べ物かもしれませんし人への思いやりかも知れません。それを捧げる人も受けた人も、きっと自分に与えられているものの豊かさに感謝することができ、自分の出来ることを新たに見出すことができるのでしょう。
 ことに、人生に疲れ困窮した時、心が氷つくような体験をすることもあるでしょう。そんな時、人の温かな言葉によって氷ついた心が解けるような思いになることがあります。それは人の愛によって神さまを身近に感じる体験です。今日の福音書の箇所は、物質的な豊かさに心を奪われていると神さまを遠ざけることになるということを教えられているようです。物質的なものから自分を解放し、心を神さまに向けると、自分に与えられている持ち物を人のために使う喜びを得ることになるという教えです。それは、神さまが「孤独、寂しさからの解放」「あんしん」という豊さで私たちの心を包んでくださるからです。