2010年11月14日  聖霊降臨後第25主日 (C年)


司祭 ヨブ 加納嘉人

恐れからの解放【ルカ21:5−19】

今日の聖書は、最初のところで、イエスさまが神殿の崩壊を予告しておられます。神殿は当時ユダヤの人々の信仰のよりどころでありました。「神様の住んでおられる家・宮殿」とされ、見事な石と奉納物で飾られていました。神の偉大さ、権威を現し、揺るがないものであると信じられていたようです。それがすっかり崩れ去ってしまうと言われるのです。その言葉は人々を動揺させます。大きな不安がたくさんの疑問をわき起こさせ、人々はそれをイエスさまにぶつけます。「それはいつ起こるのですか?」「それが起こるという時にはどんなしるしがありますか?」神殿が崩壊する、ということは、世界の終末、世の終わりが連想されるほどの大事件と考えられたのでしょう。イエスさまはしかし、人々に対して「惑わされないように気をつけなさい。…おびえてはならない。…(さまざまなことが起こるが)世の終わりはすぐには来ないから」と言ってくださいます。
しかし続けて、「にせキリスト、戦争や暴動、地震や飢饉や疫病が起こり、恐ろしい現象や著しいしるしが現れる」とおっしゃいます。気の弱い私はそれを聞いただけで気を失いそうになります。恐れにとりつかれてしまうのです。このうちのどれか一つが起こっただけでも恐ろしいのに、それがいっぺんにやってきたとしたら…。イエスさまは「おびえてはならない」とおっしゃるけれど…。恐れつつ聖書を読んでいると、イエス様はたたみかけるように、「これらのことがすべて起こる前に、人々はあなたがたに手を下して迫害し、会堂や牢に引き渡し、わたしの名のために王や総督の前に引っ張っていく」。ええっ!そんなことまで起こるんですか?…はて?…どこかで聞いたことがあるようです…。それは、ルカによる福音書において、イエスさまがこのすぐ(数頁)後で経験されることになる出来事です。イエスさまのご受難です。それは、あるいは、この福音書を書いたルカの教会の信徒たちの現実をも表しているのかもしれません。
その後でルカによる福音書は「それはあなたがたにとって証しをする機会となる。だから、前もって弁明の準備をするまいと心に決めなさい」と記しています。これによって私たちは、イエスさまのご受難を黙想することができます。「言葉と知恵を、わたしがあなたがたに授ける」。イエスさまが約束してくださっています。私たちを励ましてくださいます。私たちを恐れから立ち上がらせてくださるみ言葉をご一緒に聞きましょう。「しかし、あなたがたの髪の毛の一本も決してなくならない。忍耐によってあなたがたは命をかち取りなさい」。イエス様は、忍耐する力をみ言葉によって与えてくださいます。私たちはこのみ言葉によって、恐れから解放され、主のご復活の命、永遠の命につなげられるのです。
                                                        主に感謝