2011年3月13日   大斎節第1主日(A年)

 

執事 ヨハネ 荒木太一

「空腹を覚えられた」【マタイによる福音書4:2】

 3月は自殺が多い。決算期や病気の悪化にあって「もうこれ以上やっていけない、楽になりたい」と自殺する人の苦しみは大きい。
 しかし一番の誤解は「強い人が強い意志で自殺を選ぶ」というものです。実際は様々な要因で心も体も限界に弱められ、自分でもぼんやりとした意識の中、命を落としてしまうのだと私は思います。
 40日断食したイエスもまた空腹に襲われ、体力気力も衰え、意志もなえ果てていたはずです。弱わった中への誘惑は非常に強い。神に愛された存在である自分を忘れ、神への忠誠を裏切らせるのです。しかしイエスは、弱さの中でかろうじて神に頼りました。
 イエスは十字架上でも弱く弱くされ、「なぜ見捨てられたのか」と絶望するような弱さのなか、一本の糸のような弱まった意志で神と繋がり続けられた。だからこそ新しい命に復活したのです。イエスに一致する私達も、最も弱い状態の中で、また死に逝く苦しみの中でこそ、誘惑する者を相手にせず神に忠誠を尽くせますように。イエスの従順により頼みましょう。彼の忠誠こそ私達の希望です。